アレルギー反応は皮膚や目、鼻、のど、気管などに起こるが、その症状や部位は、一生のいつ頃起こるかで、それぞれアトピー性皮膚炎やアレルギー性鼻炎、喘息、アレルギー性結膜炎、蕁麻疹などに分かれる。
幸運な人ならそのうち1〜2種に罹るだけですむが、運の悪い場合は成長とともに一つ一つ経験していくことになる。いずれにせようまく制御するには、それらをよく理解することが大切だ。
アトピー性皮膚炎
アトピー性皮膚炎は、一生のうち最も早い時期になるアレルギーで、生後1〜2ヶ月で症状が出る。
皮膚が乾燥して非常にかゆく、かさぶたになったり、赤い斑点が出るのが症状だ。乳児期には顔や、肘や膝の関節の外側に出やすく、成長とともに関節の内側に移る。ところが成人になると再び外側に移り、時には両手や背中、目の周りなどにも出る。
ではアトピー性皮膚炎と一般の皮膚炎はどう異なるのだろう。
台湾大学病院皮膚科の戴仰霞医師によれば、アトピー性皮膚炎の条件には次の四つがある。・かゆい。・典型的な苔癬化(象の皮膚のようになる)という症状がある。・慢性的に繰り返し起こる。・家族の中にアレルギー患者がいる。
上の四つのうち三つ以上に当てはまれば、アレルギー体質によるアトピー性皮膚炎ということになる。乳児によく見られるオムツかぶれなどはアレルギーではない。研究によれば、乳児期のアトピーは牛乳や卵白などにアレルギーを起こしやすいので、母乳を与えることが望まれる。
もしアトピー性皮膚炎をうまく制御できれば、2歳頃までには症状が好転する。ただし、かゆみを我慢できず、傷になるほどかいたりすると、黄色ブドウ球菌や黴菌、ダニなどが傷口から入り、それが新たなアレルゲンとなって、汚れた空気にもアレルギーを起こすようになる。このような悪循環に陥ると、アトピーに一生つきまとわれることになりかねない。
アトピー患者の皮膚は、保水性が損なわれ、皮膚の防御機構が損なわれており、ますます乾燥してかゆくなる。入浴後はワセリンなどの保湿剤を塗ることが勧められる。
治療には抗ヒスタミン剤や副腎皮質ホルモン軟膏などが用いられる。近年になって非副腎皮質ホルモン外用薬も開発されたが、中重度の患者に対しては効果に限りがある。
アレルギー性鼻炎
3〜4歳になると、アレルギー性鼻炎が登場する。台湾は気温が高く湿潤で、大気汚染も深刻なことから、アレルギー性鼻炎の発生率は30〜40%にも及ぶ。
早朝の冷たい空気や絨毯のほこり、ぬいぐるみの毛といったアレルゲンを吸い込むと、患者は鼻がかゆくなり、くしゃみや鼻水、鼻づまりなどの症状が出る。
アレルギー性鼻炎の症状は風邪に似ており、時には見分けが難しい。だが一般に風邪は目や鼻がかゆくなることはなく、のどの痛みなどに始まり、一定の過程を経て治るのが普通だ。一方、アレルギー性鼻炎の場合は、アレルゲンから離れたり、薬で制御できさえすれば、症状は直ちに改善する。
喘息
調査によれば、台北市の学童における喘息の発生率は1974年に1.3%だったのが、20年後には10.79%に増加し、2年前の調査では19.8%にまで達している。
喘息患者の8〜9割はアレルギー性鼻炎も併発する。典型的症状は、慢性の咳、喘鳴、呼吸困難、胸のしめつけなどだ。
喘ぎ、苦しみながら息をするのが喘息だと考えられがちだが、そうとは限らない。喘息には次の三大症状がある。・夜の咳。たいていは夜半や明け方に咳で目覚める。・風邪の後、咳が治らない。・運動をすると咳込んだり喘いだりする。子供に上のような症状が見られたら決して軽んじてはいけない。
調査によれば、風邪の後、アレルゲンに接触すると、喘息を誘発しやすいことがわかっている。成人の喘息患者の60%、小児喘息では85%が風邪など鼻やのどの感染で発作を起こす。喘息患者は風邪に注意が必要だ。
気管支を拡張しやすくする薬剤が、喘息治療の新たな趨勢となっている。患者は毎日、呼気の流速を測定するピークフローメーターで病状を把握し、不安定だと感じたら、発作の起こる前に薬を服用する。これで喘息発作の回数を大幅に減少できる。
発作が起こって気管拡張剤を一回吸入しても効果がなければ30分後にもう一度吸入する。それでも効果がなければ、すぐに病院に行くべきだ。なぜなら気管がある程度まで収縮すると薬剤が中まで届かず、そうなるとすぐ薬剤を注射しないと手遅れになることもあるからだ。気管拡張剤の頻繁な吸入は、動悸や不整脈などを招くことがある。
アレルギー性結膜炎
鼻と涙管はつながっているので、アレルギー性鼻炎の人の多くは目にも症状が出る。そのため「アレルギー性鼻・結膜炎」と呼ばれることも多い。
冬の終りから春の初め、そして夏といった開花期や季節の変わり目に起こりやすい。目が赤くなり、かゆみや涙、灼熱感を伴い、分泌物もある。
急性の発作に見舞われた時は、目をこすったり、熱いシャワーを浴びたりしない。症状を悪化させるからである。副腎皮質ホルモンの入った目薬をさせば、すぐに症状は収まる。ただし症状が消えれば直ちに薬の使用をやめる。長期使用は目の抵抗力を弱め、時には眼圧が上昇したり、緑内障や視神経萎縮など取り返しのつかない結果を招く。
蕁麻疹
蕁麻疹に見舞われるのは主に成人である。蕁麻疹は体内で起こる免疫反応とも関係あり、原因はやや複雑だ。食物や薬に対するアレルギーもあれば、神経的な、例えば気候の変化などで起こる場合もあるし、ストレスなど心的要因が関係することもある。
台湾大学病院の戴医師によれば、アレルギー体質かどうかに関わらず、人が一生のうちに蕁麻疹にかかる確率は20%だという。原因が複雑なため、アレルゲンの特定も難しく、患者の60%のアレルゲンが不明だ。
蕁麻疹は急性と慢性に分かれる。急性蕁麻疹は、皮膚に起こる一般的なもの以外に、ひどくなるとまぶたや唇、耳や顔がはれたり、時には気管支の粘膜がはれて呼吸困難に陥る。内服薬と軟膏を合わせて用いると急性蕁麻疹はたいてい1〜2週間で治癒する。だが慢性蕁麻疹は1〜2年も続くことがある。
アレルギー患者の天敵
アレルゲンは普通、呼吸や飲食、皮膚接触などにより体内に入る。呼吸によるアレルゲンとしては、ほこり、ダニ、花粉、動物の毛やフケがある。口から入るものには、食べ物(卵や魚介類、牛乳)、薬(抗生物質やアスピリン)、アルコール類がある。皮膚接触によるアレルゲンには、化粧品や洗剤、銅を含むアクセサリー、昆虫などがある。
生活環境からアレルゲンを取り除く方法として、医師は以下のことを勧める。
・エアコンや除湿機を使い、室内を適度な温度や湿度に保つ。
・ほこりやダニを退治し、寝具を頻繁に洗うなど、環境を清潔に保つ。
・家具は原木やプラスチック製を使い、分厚いカーテンやじゅうたん、マット、ぬいぐるみなどを使わない。
・ペットを飼わない。
・部屋の風通しを良くする。
・タバコや蚊取り線香、香水、殺虫剤といった刺激物に接触しない。
最も大切なのは、原因と症状を把握することであり、ひどい症状にいらだったりしないことである。アレルギーとは過度の生理的反応なので、平静な心で立ち向かうことが何より肝心だからである。