辰新病院で中医師として働く黄宗瀚さんは、ベビーフェースで婦人科専門なので女性患者に人気がある。
2002年、上海中医師試験に合格した黄宗瀚さんは、上海市衛生局に医師として登録、台湾人専用の辰新病院に勤務し、台湾人として初めて上海で働く中医師となった。
今年初めに台湾野党の連戦主席が中国を訪問して以来、中共当局は台湾人学生の大陸での就職に有利なさまざまな措置を発表した。10月から中国企業は台湾人を自主的に採用でき、社会保障制度も受けられるようになり、留学生は現地で就職できるようになった。
中国医学を学んだ者も上海で現地の医師資格が取れるが、開業することはできず、病院に勤務しなければならない。しかも病院による採用が決まらなければ医師登録はできない。
では黄宗瀚さんは特に幸運だったのだろうか。
38歳の黄宗瀚さんは、台中の中台医事技術学院を出た後、台北の中心診所の放射線科で働いていた。実家は漢方薬局をしており、幼い頃から漢方薬の中で育った。働き始めてから、多くの患者が手術をいやがって中医の治療を求めることを知り、この古い学問に注目し始めた。
95年、彼は上海中医薬大学に留学、一般課程から学び始め、5年後に首席で卒業、修士課程へ進む奨学金を得た。彼は台湾へ戻って中医の環境を調べた。台湾で中医として開業するには、中医師検定試験と国家試験を受け、さらに1年余り実習しなければならない。
「私の目的は中医をマスターすることでした」と黄さんは言う。台湾で中医の資格を得るには少なくとも2年を費やさなければならないが、同じ時間で大陸なら修士課程を修了することができる。彼は学業を選び、両親と奥さんの支持も得て上海へ行き、その後、さらに博士課程まで進んだ。
中国で中医を学ぶメリットについて黄さんは「中国の中医臨床基礎は台湾より10年進んでいます。学科は新陳代謝科や免疫科などに細分化され、一般の病院も西洋医学と中国医学を合わせて治療しているので、働く場はたくさんあります」と言う。
ただ、台湾の中医国家試験は2011年に廃止が決まっているので、先に受けておいた方がいい。
現在、台湾で中医資格を得る方法は二つある。一つは中医学科卒業後に国家試験を受ける道、もう一つは中医検定試験を受けてから国家試験を受ける道だ。検定試験と国家試験は中医学科出身でない人のための道で、受験者の多くは「独学」や「伝統的徒弟」という背景を持つ。だが中医教育を学術化するために台湾政府は検定試験の廃止を決め、中国で中医を学ぶ人々は不安を抱いている。5年以内に台湾の資格を取らなければ、中国の病院に採用されない限り、中国でも台湾でも働けないからだ。
こうした中で、台湾の病院が大陸に進出し、留学生にも道が開けかに見えるが、台湾との合弁病院に中医の需要がどれだけあるか、中医人材が豊富な中国で台湾人留学生にどれだけの機会が与えられるかは分らない。
黄さんも、もともと中国に残ろうとは考えていなかった。北米では鍼灸に人気があり、ドイツ、オランダ、ベルギーにも中医学院があり、彼はドイツ語も学んできた。が、思いがけないことに辰新病院が中医科を設けることになり、ここに残ったのである。
黄宗瀚さんは、なぜ中国へ中医を学びに来たのか、初心を忘れないよう呼びかける。さもなければ、苦労して勉強しても、台湾ほどの収入は得られない。10年の時間をかけた黄宗瀚さんは、能力が発揮できる場が得られたことに感謝しているという。

今も上海中医薬大学の博士課程に在籍する黄宗瀚さんは、2年前に上海の中医師資格を取り、台湾の医療チームが経営する上海辰新病院に採用された。彼は上海で初めての台湾人中医師として、病院の中医部門の運営を任されている。