伸びる法律の手
結婚に比べて束縛の少ない同棲は結婚の代替品となったり、相手を理解する試験結婚と見られたりする。しかし、よく観察してみると、同棲は別れる結果に終わることが多い。アメリカの大規模な統計によると、同棲した人の8割が結婚に至らず別れ、しかも驚いたことに、同棲を経てその相手と結婚すると、結婚の満足度がかえって下がるという。
一方では、結婚に比べて法的拘束がないのが同棲を選択する理由でもあるのに、同棲者の権益保障のために、法律の手が少しずつ伸びている。
イギリスでは450万人の同棲者のために、相続や慰謝料、遺棄の賠償など結婚に認められた保護を要求する民間団体が数十もある。Living Togetherという団体は、パートナーと同棲あるいは資産購入する前に、別れたり死亡した時のことを考えて、契約を結ぶことを勧めている。
同じくフランスでは、同棲満3年と認定されると結婚と同じ身分保障が得られる。同棲が一般的なスウェーデンでは、政府機関が同棲証書を発行し、権利義務を詳細に規定している。
台湾でも法律と政策が僅かずつ変化し、家庭内暴力について同棲者とその子女に保護が及び、同棲者も法的措置を申請できるようになった。2004年、長年にわたる保守的方針に風穴が開き、公務員の養育補助を婚外子にも認めると改正された。さらに人工受精の法律草案でも、同棲者の人工受精を議案に入れる見通しである。法務部では、民法の親族編を改正すべきかという討論が行われ、最終的には単純な同棲関係に一定の法的効力を与える必要はないとの結論に達したものの、伝統的な儀式婚の登記婚への変更検討が盛り込まれ、さらに「事実上の夫婦」など同棲関係への適用が継続的な検討事項とされた。
そうなると「法律と契約で、同棲が結婚と同じ束縛だらけになるんじゃないか」と大尭は笑う。
同棲が結婚に近くなり、区別がつかなくなると心配するのはまだいいが、続いて起こる状況は笑ってはいられなくなる。イギリスの予測によると、2020年にはイギリスの未婚男女同居人口が結婚人口を超え、男女関係の普通のあり方になるというのである。
同棲は結婚に取って代わるのだろうか。そうなったら、社会はどう対応するのだろう。
モラルは助けにならない
同棲を受け入れている家族や友人も「将来の計画は?結婚準備は?」と聞いてくる。「結婚を前提に同棲したわけではないと何回話しても、いつも聞かれるし、子供を作るのか、などとも聞かれます」と、同棲で一生を過ごすつもりだった朱さんは、周りの圧力に押されて、2003年に彼女と結婚した。
結婚は一枚の紙と言うが、そこに含まれるものは奥深い。しかし心の奥底に潜む悩みは、それよりもさらに答えが難しい。
親に内緒で同棲を始めた小倩は、愛情は自由で責任とは無関係だと主張していたが、親に内緒という後ろめたさが心の奥底にいつもわだかまっていた。
「損をするのは女の子の方だからと、父は大学で彼氏を作ってはいけないと言っていたんですが」と小倩は呟く。
老大と小卉は早く頭金を貯めるために、老大の両親の家に移り住むことにした。「もう結婚して籍を入れたのと同じことだけど、私の両親は知らないの」と小卉は言う。彼女の父は、人の家のものになってしまってから結婚の条件を交渉してももう遅いからと、常々娘に話していたのである。
「同棲を選択したからといって結婚の価値を否定したわけではありません。子供を生まないのは、子供の将来の競争がかわいそうだからというのに似ています。結婚の神聖さは尊重しているので、100%確実と思えなければ、結婚はしたくありません」と小倩は言葉を続ける。
何だか詭弁に聞こえはしないだろうか。「結婚するには経済的に成熟し、相手に尽くす態度が必要です。いま同棲して貯金しているのは、そのための準備じゃないですか」と老大は言う。
結婚が流行らなくなってきて、非婚率と離婚率が上り、出生率はますます下がっていく。問題の先送りをしてきた台湾社会だが、これ以上避けては通れない時に来ているのではないだろうか。