多様なサークル活動
知識の解放、社会の改造はコミュニティ・カレッジの創立精神を反映したものだ。カレッジ提唱者黄武雄さんの考えでは地域関連コースの目的は学生に地域への関心を持たせることにあった。公的な活動への参加を通じ社会問題に取り組むことで、社会への関心を喚起し、学生が考え話し合うための具体的な材料を提供したいと考えたのだ。そこでいかにして忙しいビジネスマンや公共の行事に参加したがらない人々を引き込むかがカレッジの課題となった。
多くのコミュニティ・カレッジは、経費や学生数の不足から地域関連のコースを積極的には開講しない。だが公的な色合いの濃いカレッジは、サークル活動が実に盛んだ。
黄武雄さんの創設した永和コミュニティ・カレッジは、手本を示すため特に工夫を凝らし、部活動の対象は実に多様だ。特別アシスタントの周聖心さんは、当初は参加者が何人かわからないまま15〜16のサークルを作り、それぞれ5単位、学費免除、さまざまな援助などを用意した。また地域活動への参加を奨励するため、学校では計画作成を手伝い、関係機関に経費を申請した。
5年の努力を経て、永和コミュニティ・カレッジのサークルは大きく発展した。中庭にある建物の壁には、フェミニズム研究部、教育問題研究部、労働者研究部、家庭内暴力防止部、地域計画部、地方文化部、南洋姉妹部、自然環境部などさまざまなポスターが貼ってあり、台湾の主な社会問題を網羅して自分の足元から考えているのがわかる。
昨年発足した自然環境部は、有志が提供した2ヘクタールほどの河川の湿地を管理している。観察区の植物は花、薬草、野菜、ハーブの4つのエリアからなり、さらに深さの違う4つの池で絶滅に瀕した水生植物の保護をしている。
「台湾の原生植物を中心に集めています」部長の王福財さんは、最初は顧問からいろいろ教えてもらったが、長くやるうちに学生たちも1人で山の中に入っていったり休日には農場で作業をしたりするようになったと話す。「みんなこの自然農場が好きで、永和のカレッジを知り、授業を受けるようになったのです」周聖心さんは、人口密度の高いこの地域に緑地があることがうれしいと言う。
現在、ここはカレッジの11の自然や動物に関するコースの用地であるだけでなく、対外的にも開放しており、中和や永和から小中学生などが自然観察に訪れる。カレッジではこのためボランティアの解説員を養成し、見学に訪れる人々からのリクエストに応えている。
昨年、コミュニティ・カレッジのコミュニティ部門に入賞した「教育問題研究部」は、永和のもう1つの看板サークルだ。発足4年で中心メンバーが育ち、長期的に地域発展を考えていくかまえだ。
夏休み前、彼らは毎週月曜日に「数学キャンプ」を開き、中和や永和地域の親と幼稚園や小学校の教師50〜60人を集めてクリエイティブな数学教育の概念を伝えた。
「私たちは教育部のシンポジウムを聞きに行き、非常に勉強になりました。これを地元の人に伝えたいと思ったのです」古参のメンバー楊春貴さんによると、研修で数学と生活との関連づけ、考える数学、新教材の活用法などを話したそうだ。
こうした活動のほか、このサークルは偏った教育価値観を変えるために、熱心な親たちの声をまとめたいと考えている。公的な話し合いの場ではあまり反応がなかったため、その後PTAの会に出席したり読書会などをして人脈を広げ、地域により深く入り込むようにしている。
楊春貴さんは、カレッジに来る前は、他の人と同じく自分の将来と子供の教育のことしか考えていなかったという。だがカレッジに入ってからは、教育には構造的な問題があり、教材の編纂や校長選抜制度の問題などが教育に関わってくることを知った。またカレッジのディスカッションの雰囲気に影響を受け、さまざまな角度から問題を見られるようになった。また教育がひとりではできないことを実感し、公共の事務に熱心に参加するようになった。彼女は、視野が広がり大学生の子供たちとも話せるようになったという。

日本時代の校長宿舎は台北市文山カレッジの働きかけで取り壊される運命を免れ、文山公民会館として再利用されることになった。