神々に挨拶
廟の中は迷路のように複雑で、しかもあちこちに神の像が並んでいるので、あれもこれも質問したくなる。
大稲埕台北霞海城隍廟の広報主任であり外国語ガイドも務める呉孟寰が城隍廟の中を案内してくれた。「一般には、龍の方から入り、虎の方から出るとされています。中央は神の出入りする入口です」建物の装飾にもそれが示されており、「壁を見てください。龍の頭は中を、虎は外を向いています」と言う。
廟に入れば、当然まずその廟の主神を知るべきだろう。例えば、台北行天宮の主神は関聖帝君、龍山寺は観世音菩薩、大龍峒保安宮は保生大帝だ。「城隍廟の主神は城隍爺で、城隍爺はいわば市長のようなものです。英語で紹介する時はいつもCity Godだと説明しています」と呉孟寰は言う。外国人観光客がおもしろいと感じるのは、神によって担当が分かれていることらしい。縁結びは月下老人、勉学は文昌帝君、出産は註生娘娘の担当で、嫌な人を追い払いたい時は虎爺を拝めばいいとされている。
廟の主殿に安置された神の像がたった1体だけということはまずない。ではいったいどんな神々なのか。呉孟寰は「市の行政組織のようなものだと思ってください。城隍爺が中央に座り、その前には各部門の長や幹部が並びます。少し離れた位置に立つ牛頭馬面や七爺八爺は外界を回って任務を遂行します」と言う。
また、主殿にはたいてい城隍爺の像が少なくとも3体ある。「うちの主殿の城隍爺は外には出ません。だからそれぞれの城隍爺が異なる任務を担います。そのうち1体は巡回を担当し、別の1体は法会を司る、というように」その説明を聞いて思わず「分身の術みたいですね」と言うと、「その通りです」と答えが返ってきた。また入口にも城隍爺が座っているが、廟が閉まった後も皆の祈りを聞き届けるのだという。「あの城隍爺の仕事が最もきついです。コンビニのように24時間年中無休ですから」
主殿とは別の「偏殿」には、「頂下郊拚」(1853年に万華で起こった移民間の抗争事件)で犠牲になった人々や、城隍夫人なども祀られている。「あなたが友達の家に行って、友達の両親やほかの家族がいれば挨拶をするでしょう」呉孟寰は、だから廟のほかの神々もみな、いっしょに拝むものなのだと言う。
拝む順序は、まず天公を、それから主殿に入って城隍爺に挨拶する。まず「城隍爺、采配をお振るいください。月下老人、お助け下さい。神々よ、お守りください」などと唱え、次いで自分の名前や生年月日を告げてから願い事をする。「実は普通の会話と同じようなもので、難しいことはありません」
廟の行事については、「春と秋の祭典のほか、各廟の主神の生誕祭があります」と、李文還が一つ一つ挙げて説明してくれた。1月は天公と清水祖師爺、2月は土地公、3月は媽祖と保生大帝、6月は関聖帝君、7月は七娘媽の生誕を祝う。そのほかに王爺も数多いるので、外国人から見れば、台湾では毎月どこかの廟で祭りがあるように思える。「台湾は本当ににぎやかな島ですよね。だからこそおもしろいと言えます。神様が多いので、毎日どこかの廟で催しが行われています」と李文還は笑う。我々が友人の誕生日を祝うように、日頃我々を守ってくれる神々の誕生日を祝っているのだと。