グローバル化の衝撃
政府青年輔導委員会の鄭麗君・前主任委員によると、台湾の民主化過程に参画した60年代生まれは「学生運動世代」「民主化世代」と呼ばれるが、80年代生まれの若者は「グローバル化世代」と呼べる。グローバル化によって世界中の若者が厳しい就職競争にさらされている。
資本や技術が世界を移動するようになり、就職競争もグローバルになった。就職するためには、国内のライバルだけでなく、中国や東南アジアやインドの若者とも競争しなければならない。さらに「給与は低い方に足並みをそろえる」。企業がベトナムで低賃金の人材を見つければ、同様の能力の人材をその何倍もの待遇で採用しようとは思わないであろう。
そのため、この世代の先進国の若者は、国内産業の転換の歩みについていかなければならない。優秀な人材は待遇が良くて前途のある仕事に就けるかも知れないが、学歴や能力がやや劣る人は、まず待遇の低い仕事や派遣・アルバイトなどで働きながらチャンスを待つか、方向を転換する必要がある。
グローバル化は世代間の不平等ももたらした。欧米や日本の場合、高度成長を経験したベビーブーマーとその親の世代は、退職後も少なからぬ年金が得られ、また医療の進歩で寿命も延びている。しかし、こうした高齢者のための財政負担は、人口が少なく所得も低い若者が支えることとなる。
結婚せず、子供も産まない
こうした世代間に生じる相対的剥奪感は、年金や高齢者福祉があまり充実していない台湾では顕著ではないが、労働者保険や健康保険の破綻という不安が重くのしかかり、社会に出たばかりの若者にとって、将来の不透明感は一層強まっている。
就職難の他に、「結婚せず、子供も産まない」若者が増えているのも事実だ。
内政部の資料によると、2007年の我が国の平均初婚年齢は男性が31.0歳、女性は28.1歳で、実際の結婚組数は13万1000組余り、1997年の16万8000組に比べて22%も少なくなっている。
出生率の低下と出産年齢の上昇にも驚かされる。統計を見ると、我が国の女性の初出産平均年齢は97年の26.3歳から2007年には28.5歳に上昇、30歳以上の初出産の割合は97年の26.2%から42.6%に上昇した。出生率を見ると97年の1.77から今は1.1まで下り、日本の1.32を下回って世界一低い数字となった。
また、多くの若者が成人しても親との同居を続け、いわゆる「パラサイトシングル」となる。自分で家を買って独立する年齢も上昇している。
内政部営建署の統計では、今年第1四半期、全国の住宅購入平均年齢は37.7歳、台北市は39.2歳で、行政院が計画中の「青年安心住宅購入ローン」の申請上限である39歳をすでに超えている。
イチゴか、ドリアンか?
「結婚せず、子供を産まず、家を買わない」というのは経済的に仕方のない選択かも知れない。しかし、若者の個人主義と権利重視から来る行為は、上の世代から見ると、情けなく感じるものでもある。
現在の若者は「イチゴ族」と呼ばれている。見た目は良く、学歴も申し分ないが、挫折やプレッシャーに弱く、イチゴのように簡単につぶれてしまうからだ。求人・求職サイトの1111ジョブ・バンクの今年5月の調査によると、大学以上の卒業生の42%が求めるのは、総務や秘書や電話受付などの楽な仕事だ。給与も職位も低く、成功の機会も少ないが、定時に退社でき、自分の時間が持てればいいと考えているのである。
1111ジョブ・バンク最高執行責任者の呉睿;穎;さんは、この世代を「ドリアン族」と形容する。ドリアンは栄養価が非常に高いが、棘のある硬い殻に覆われ、異臭を放つ。今の若者は高い教育を受け、専門能力もあるのだが「職場では常に怒ったような顔をして、自分の殻にこもり、自分のことしか考えていない」からだと言う。
時代遅れの考え
こうした社会や企業からのマイナス評価に対して、同じ30代の台湾大学社会学科李明璁;准教授は、その原因を個人に帰するのはフェアではないと言う。
李明璁;准教授は、台湾では最近「消費美学」が強調されるようになったと指摘する。成功や肩書で人を評価するのではなく、どんな服を着てどんな車に乗り、どんな携帯電話やパソコンを使い、どこで食事をして誰と付き合い、年に何回海外旅行をするかなど、ライフスタイルや遊び方で人の価値を評価するようになったという。
「こうした雰囲気の中、若者は自由でセンスの良い生活をしたいと思うようになり、収入は気にしなくなったのです」と李准教授は分析する。彼らは仕事のために自分の時間と空間を犠牲しようと思わない。そして「ごく一握りの人しか成功しないなら、自分が努力しても仕方ない」と思うのである。
李准教授は「若者には夢を見る権利があり、彼らの想像を制限すべきではない」と強調する。世間は「三十にして立つ」、30歳で家と仕事を持って自立することを求めるが、これは性別や階級などの伝統的な観念を背景とした「時代遅れの考え方」で、打破しなければならないと李准教授は指摘する。
板ばさみの青年政策
親や社会や産官学各界、それに若者自身、それぞれ将来に対する見方や期待は異なり、青年に関する課題の難しさと複雑さを示している。良かれと思って立てた政策も、多面性や社会面の考慮が欠けていれば、大きな論争を引き起こす。
2006年にフランス政府が打ち出した「初期雇用契約」もそうした事例だ。これは、企業が26歳以下の青年を雇用する際、試用期間を2年とし、この期間中は理由を明示せずに解雇できるとするものだ。
これは、25%に達する若年失業率を下げるため、企業による若年者採用を促そうという意図で立法化された制度だが、学生や労組の強い反発を招き、数百万人のデモに発展した。このデモに反対するデモも行なわれ、フランスでは1968年以来最大の社会運動となった。
台湾でも「無給の育児休暇」に6ヶ月の補助金を支給するという政策が2009年に実施される予定だったが、大きな論争を巻き起こした。本来の狙いは補助金を出すことで働く女性の出産・育児を促すというものだったが、産業界から強い反対の声があがった。女性団体も、雇用環境が厳しい中で充分な周辺措置がなければ「たとえ法律があっても誰も育児休暇など申請できない」と批判した。
選択を尊重し、支援する
青年は国の最も重要な資産である。国家や民族の存続という角度から見ると、若者が家庭も仕事も持たず、子供も産もうとしなくなればば、世代間にミッシング・リンクが生じてしまい、それは将来の社会に重大な影響をおよぼす。
仕事や家庭に縛られたくないと考える若い人々に対して、社会は個人の選択を尊重すると同時に「30年後の自分がどうなっていたいのかをよく考えて、それから選択した方がよい」と注意を促すべきだろう。一方、家庭を持ち、懸命に働くという困難な道を選んだ若者に対しては、国が充分な支援を提供し、その夢がかなえられるようにしなければならない。
青年の夢だけでなく、一人ひとりの夢とその実践方法はそれぞれ異なるが、しっかりと青写真を描き、着実に歩んでいってこそ、振り返った時に後悔せずに済むのだろう。
我が国の初婚年齢と出生率の変化(1977-2007)
| 年 |
初婚年齢 |
女性の初出産年齢 |
出生率 |
| 男 |
女 |
| 1977 |
27.4 |
23.6 |
23.1 |
2.70 |
| 1987 |
28.8 |
25.4 |
24.8 |
1.70 |
| 1997 |
30.4 |
28.1 |
26.3 |
1.77 |
| 2007 |
31.0 |
28.1 |
28.5 |
1.10 |
資料:内政部統計処