豆腐は良質なタンパク質を多く含み、炭水化物の含有量は少なく、カロリーも低いため、ダイエットにぴったりの食品である。
具入りのお粥や汁ビーフンには厚揚げが合う。滷肉飯(ルーローファン)や鶏肉飯にはピータン豆腐や煮込んだ厚揚げを合わせ、滷味(ルーウェイ、醤油ベースの煮込み)やフライドチキンには豆干(水分を抜いた板状の豆腐)や湯葉を添えたい。台湾には多種多様な大豆製品があり、高級料理から簡単なおかずまで、どんな豆腐料理も実においしい。
豆腐を扱う店も無数にある。株式上場しているような大手豆腐メーカーもあれば、豆腐や豆干のおいしさ打ち出した町やフェスティバルもある。さらに豆腐のチェーン店や高級豆腐店、人気の映えスポットまである。あなたは、これら台湾の大豆食品を食べたことがあるだろうか。
台湾には大豆製品が非常に多い。輔仁大学食品科学学科の高彩華教授によると、豆乳や豆腐を食用するという記載は漢の時代からあり、東洋の食文化を代表するこの食品には2000年余りの歴史があることがわかる。
東洋と西洋とでは大豆の利用方法も異なる。有機豆腐メーカー「豆之味」の林国禎・総経理によると、アメリカなどで大豆が栽培されているのは主に油の原料にするためで、大豆タンパクの部分は家畜の飼料にされる。一方、東洋では大豆から直接豆腐などの製品を作って食用する。
高彩華さんによると、東洋の人々は大豆の味に慣れているだけでなく、その栄養価の高さから大豆を「畑の肉」と呼び、栄養価は肉類に引けを取らない。
大豆食品は極めて日常的な食材であり、台湾では市場やスーパーなど、どこででも簡単に手に入る。また「大渓豆干」や「深坑豆腐」は、それぞれの地域を代表する特産品で、職人の技術や地域の歴史文化を象徴している。また、若い世代に受け入れられつつあるベジミートのハンバーガーや、牛乳ではなく豆乳を使ったアイスクリーム、それに筋トレ後の栄養補給に飲むソイプロテインなど、まったく新しい形の大豆製品もあり、それらが伝統的な大豆食品と共存している。
今回「台湾光華雑誌」は、全台湾で生産量トップに名を連ねる湯葉メーカーと有機豆腐メーカーを訪れ、大豆食品作りを見ていく。
まず訪れたのは、雲林県の莿桐と崙背にある久代食品加工廠(以下、久代食品)だ。
不織布の靴カバーとキャップをつけ、完全に密閉された湯葉工場に入ると、熱気が襲ってくる。70~80℃の蒸気管の熱によって豆乳の表面に薄い膜が張り、ファン付きのジャケットを着た作業員が、10分おきに慣れた手つきで竹箸を使って薄い湯葉を引き上げていく。これをさらに正方形に折りたためば「豆包」になる。

豆皮と豆包
豆皮(湯葉)と豆包はどう違うのだろう。久代食品の李東璟総経理によると、豆包というのは正方形にたたんだ湯葉で、しっとりとしてなめらかな生豆包と、低温の油で揚げた揚げ豆包がある。
引き上げて乾かした湯葉を油で揚げたものは、さらに「小油皮」と「大油皮」に分けられる。前者は厚みがあり、後者は薄くパリパリしていて、いずれも炒め物や煮物に使える。切り分けた湯葉を揚げたものは「角螺」と呼ばれ、歯ごたえが良いため、鍋物の具材に用いられる。なぜ湯葉を揚げるのだろうか。李東璟さんの分析では、揚げると香ばしく、またスープをよく吸うため、しだいに鍋料理の具として普及したと考えられる。
湯葉を作る豆乳は、豆包を作る豆乳より濃い。豆乳の濃度は糖度計で計る。久代食品の場合、豆包を作る豆乳の濃度は約9%、豆皮を作る場合は13~14%だ。李東璟さんによると、スーパーなどで売っている豆乳の糖度は3~4%ほどだ。
湯葉を引き上げた後、3本の長い箸を使って巻いたものが「腐竹」である。また、湯葉をプレスして焼いたものは「千張豆腐皮」と言い、具を包んで食べることができる。巻いた湯葉を揚げたものは「豆皮捲」「響鈴巻」などと呼ばれ、これも鍋や煮込みの具にするとおいしい。
これらの他に、彰化から台南までの一帯には特殊な大豆食品「豆箕(台湾語でtāu-ki)」があり、これは煮物や野菜炒めに入れる。食品問屋「達成号」を経営する王義正さんによると、お粥や弁当の付け合わせにする「豆棗」や赤い「豆枝」と違い、大豆粉を搾り出して油で揚げた豆箕は、食べ慣れた人が少なくなり、これを作る工場は減っているという。

湯葉の故郷
久代食品がある雲林県には湯葉工場が43軒もあり、全台湾64軒の7割近くがここに集中している。特に雲林県の莿桐郷は「湯葉の故郷」と呼ばれている。
李東璟さんが、この理由を探ってみたところ、一説には濁水渓の水が石灰質を多く含んでいて、それを豆乳に加えると湯葉を作りやすいということだった。
しかし、西螺や彰化県の大城なども同じ濁水渓の流域なのに、なぜ莿桐ばかりに湯葉工場が集中しているのかという疑問が残った。後に分かったのは、莿桐で湯葉工場を経営している人の姓は陳、林、廖の三つに集中しており、互いに遠縁にあたることだった。話によると、その中の祖父の世代の人が桃園に豆干作りを学びに行き、帰郷してから湯葉を作るようになったということだ。湯葉は保存がきかないので、油で揚げるようになった。農業の時代、湯葉の収入で家計が改善された家もあり、その作り方が親族に広まり、この地域が湯葉の主要産地となったのだという。
李東璟さんは8年前に莿桐に移り住み、妻の父である陳炎竹さんの湯葉工場を手伝い始めた。陳という姓からも湯葉作りの一族であることがわかる。その話によると、莿桐で湯葉が生産されるようになったのは数十年前からということだ。

豆輪は実は大豆ではなく、小麦粉の加工食品だ。
バーコードで事業拡大
李東璟さんは、成功大学の電機学博士の学位を持つ。義父の工場で働き始めて1年目の冬が終わった時、義父は従業員を4名解雇しなければならないと言った。
「工場は冬は大忙しですが、夏になると4人が失業するのです。この時、湯葉工場はどこも同じ状況だと知りました。夏は鍋料理を食べる人が少ないので、湯葉が売れなくなり、従業員は失業してしまうのです」と言う。李東璟さんは、この状況を何とかしなければならないと考えた。そうした中、営業で鍋の素のメーカーを訪問した時に、この会社では夏になっても湯葉の注文量が減少していないことを知った。彼らは夏になると南半球のオーストラリアやニュージーランドへ輸出していたのである。
さすがに博士だけのことはある。彼はオーストラリアで販売されている湯葉のバーコードから代理店を見つけ、彼らがオーストラリアの中華系スーパーに供給していることを知った。さらに、他の代理店が久代食品のバーコードから連絡をしてきて、久代はアメリカとカナダの市場に進出することができたのである。

豆箕。
安心安全な食で市場を開拓
こうして大きな市場が開け、夏も従業員を解雇する必要はなくなった。また、彼は川上の半製品の品質が安定しないことに気付いて崙背工場を開設し、自ら湯葉のベルトコンベアーを開発、原料から包装までの一貫した製造工程を確立し、地元の雇用機会も創出した。
こうして久代食品はISO22000やHACCPなど食品関連の認証を次々と取得し、食の安全を重視する台湾鉄路(鉄道)局の駅弁部門やセブン-イレブン、それに林聡明沙鍋魚頭や王品などの有名レストランからも注文を受けることとなる。
こうして義父の湯葉工場を引き継いで8年、義父の時代には従業員7~8人だった小さな湯葉工場は、現在は4工場、従業員160人の規模にまで成長した。最近は、「螺螄粉」や「酸菜魚」といった料理が台湾でも流行し、夏でも冷房を効かせて鍋物を食べる人が増え、腐竹や湯葉の消費が増えてきた。鍋物などの飲食業においては、湯葉はやはり人気の具材なのである。

豆珍。
有機農業の推進
暑い夏の日、私たちは新竹湖口の古い町並みにある「豆之味」の店舗を訪れ、オーガニックの豆花と豆乳をいただいた。この店がオーガニックを強調しているのは、消費者にヘルシーな食品を提供するとともに、環境面で農家と大地に貢献したいからだという。
「豆之味」の林国禎総経理は、サステナビリティの角度から有機大豆食品の倫理を語る。「豆乳は動物のミルクに比べて二酸化炭素排出量と環境負荷が少ないのです。また大豆栽培は環境を破壊しないだけでなく、大豆の根は空気中の窒素を取り込んで土壌の窒素肥料へと変えます。そのため祖先たちは長年にわたって輪作という知恵を持ち、二期作の水稲の間で大豆を栽培していたのです」と言う。
「豆之味」は、有機農業を支持したいという思いで創業された。創業者の黄学緯さんは20数年前、有機農業の推進や検証の仕事をしていたが、推進は非常に困難だった。オーガニックの理念がまだ普及していなかったのである。そんな中、日本を訪れた時、有機大豆を栽培している人は、それを使って大豆食品を作る人がいるから栽培を続けられるのだと知り、彼も自ら起業して豆腐を作ることをを思い立ったのだという。
彼は新竹北埔の職人から豆腐作りを学び、7年にわたる赤字経営に耐え続けた。その後、福智文教基金会の創設者・日常老和尚が設立したオーガニック食品チェーン「里仁有機」の支持を得て、「豆之味」は台湾の三大有機大豆食品工場の一つに数えられるようになったのである。

環境にやさしい食品
「豆之花」の工場では、朝の6時から作業が始まる。一晩水に浸けておいた大豆を挽いて豆乳にし、凝固剤を加えて「おぼろ豆腐」にする。
続いて、おぼろ豆腐を崩して型に入れていく。最初の水切りが終わったら、再びおぼろ豆腐を型に加え、圧搾成型工程に入る。圧搾の時間が短く、水分が多く保たれているものが嫩豆腐、圧搾の時間が長く、歯ごたえが出たものは板豆腐や豆干である。その豆腐を油で揚げれば厚揚げとなる。豆干を醤油ベースのタレで煮込めば、しっかりした歯応えの滷豆干となり、豆腐を切って冷凍したものが凍豆腐となる。
林国禎さんは、大豆から、これほどバラエティに富んだ食品が作れることが不思議だと語る。
毎年、清明節から端午節までが「豆腐乳(豆腐を麹や塩で発酵させた塩辛い食品)」のシーズだ。豆之味では豆干ほどの硬さのある「豆腐乳胚」を作って豆腐乳メーカーに供給している。塩辛くて良い香りがする豆腐乳はお粥に欠かせない付け合わせだ。

湯葉(豆皮)は、熱した豆乳の表面に張った薄い膜を引き上げたものである。
美味を引き継ぐ
「天然の食材、特に種子の場合、収穫した年や季節によって特性が異なります。私たちの職人は、豆によって異なる吸水性などを見て微調整し、風味豊かな豆腐を作っているのです」
林国禎さんは、可能な限り大豆の自然な香りを味わえる豆腐を作り、ヘルシーであっさりした食を求める消費者のニーズに応えたいと考えている。醤油やスパイスで濃い味付けの料理にする必要はなく、軽く蒸して少し醤油をかけるだけで大豆の香りが楽しめるものを目指している。
大豆食品は栄養価が高いだけではない。何ごとにも環境への配慮が求められ、ベジタリアン人口が増える現代社会において、台湾の大豆食品加工技術は進歩し、大豆製品はますます多様化している。作家の郝広才が詩に書いている通りだ。「豆腐が発明されて二千年、千年にわたり無数の人の糧となる。無数の美味は温もりを伝え、豆腐は人の心を暖める」と。大豆食品は私たちの食文化を一層豊かなものにしてくれるのだ。

野菜を燻製湯葉(豆包)で包んだ料理。

慣れた手つきで湯葉を引き上げる作業員。

揚げた湯葉は鍋料理には欠かせない具材である。

引き上げた湯葉を乾燥させ、油で揚げる。

圧搾の時間が長ければ、歯ごたえのある板豆腐や豆干になる。

醤油だれで煮込んだ豆干は、お馴染みのおかずだ。

濾過した水とともに豆腐をパック詰めすれば、水分が抜けることはない。

乳糖不耐症が多い東洋人や、動物保護を訴える人々など、牛乳が飲めない人には豆乳が最良の代替品となる。

豆腐の「天婦羅」は、つぶした豆腐を成形して油で揚げたものだ。

「豆之味」の林国禎総経理は、有機大豆は栄養価の高い健康食品であり、環境面でも農家や大地に貢献できると語る。

新竹県湖口のレトロな町並みに店を構える「豆之味」。