男女それぞれの役割
パイワンの伝統では、女性シャーマンは女巫、男性シャーマンは男覡と呼ばれるが、女巫の方が神霊との交信の力が強く、霊力も高いとされる。だが、これは上下の差ではなく、男女が分業して互いの不足を補い合う関係だ。
包恵玲によると、男覡は簡単な呪文を一、二句学ぶだけでよく、五年祭でも山神の儀式でしか役割はない。だが、「女巫が彼らに指示することはできず、上下の別もありません。一番上に立つのは頭目で、それ以外は皆家臣ということで同じなのです」という。
例えば、パイワンの伝統では事故で亡くなった人は悪霊になるとされ、事故現場で死者の霊を呼ぶ時には男性の助けが必要になる。
包恵玲によると、女巫は「人と霊との媒介」だが、儀式の現場には良い霊と悪い霊が多数いることもある。女巫が悪霊に取りつかれると大変なことになるため、男性の助けが必要なのである。
「男性の方が強健で抑制力があるので、儀式にでは女巫を保護する力になります」と話す包恵玲は、パイワンには「陰陽(男女)が互いを補う」という観念があるのかも知れないと考える。これは男女のどちらが上という考えではない。
五年祭では男女の分業がよく分かる。竹刺抛球の儀式には首狩りの意味が込められており、この儀式は男性だけが執り行う。
神霊の下での男女平等
祭儀がない時は、シャーマンの生活は一般の人と変わらない。
包恵玲は、パイワンの伝統文化には男女平等の知恵があると言う。例えば、頭目は世襲制だが、男であれ女であれ、最初に生まれた者が将来は頭目になるという点でも男女は平等だ。
包家には7人の兄弟姉妹がいて、頭目の後継者は長兄だ。末娘の包恵玲の能力と見識は長兄に劣らないと称賛されるが、包恵玲は不満を抱くことなどなく、天命に従っている。
「私はパイワンの伝統文化の中で育ちましたので、集落全体における自分のポジションがわかっています」と包恵玲は言う。「努力して自分に与えられた任務を果たし、霊力向上に精進し、兄を助けていきます」
シャーマンとしての修業は修身でもあり、伝統的規範を守ることだと包恵玲は言う。「地位を奪おうなどと考えれば、神霊も許してくださらないでしょう」
集落における男女の仕事の分担が不平等だと感じることはないのだろうか。この土坂集落で最も学歴の高い女性シャーマンは、「誰も手を抜くことなどありません。神霊が見ていらっしゃるのですから」と言葉を締めくくった。