嗚日号:観光列車の未来へと走る
嗚日号は、高級感のある黒光りする車体に、莒光号と自強号のオレンジのラインが入っており、また、先頭車にはディーゼルカー時代のV字マークと、特製の金属製のヘッドマークがついている。内装にはタイワンスギや花蓮の大理石、原住民族のトーテムなどが取り入れられ、高いデザイン性が感じられるものとなった。「嗚日号と名付けたのは『一嗚驚人』、つまり人々をあっと驚かせるという意味を込めたからで、明日への展望を示すものでもあります」と葉宇倩さんは言う。こうして嗚日号は人々の期待に応え、2020年には日本のグッドデザイン賞にも輝いた。
嗚日号のハード面が注目されるようになると、運営を任されていたライオントラベルは、さらに鉄道の旅に新たなイメージをもたらした。台湾鉄路に美の革命を起こした嗚日号は、その営業開始時点で新型コロナウイルスの感染拡大に遭った。コロナ禍で海外旅行が難しくなったため、各国は国内旅行に力を注ぎ始めたのである。これまで台湾の多くの観光列車の計画や設計に携わってきた王岳聡さんは、嗚日号は天の時と地の利、人の和に恵まれ、それまでになかった観光列車としての生命力を持つことになったと言う。
「私たちは、嗚日号を豪華客船の列車版ととらえ、贅沢な旅をテーマとしました」と王岳聡さんは言う。「贅沢な旅」をテーマとしたからには嗚日号はそれだけの価値のあるサービスを提供しなければならない。ちょうどコロナ禍のために、海外に駐在していた同社の社員が続々と帰国してきた。帰国中の彼らが台湾の各地で新たな事業パートナーを発掘し、外国人観光客にも対応できるようサービス向上にも協力したのである。
嗚日号は専門のプラットホームとラウンジを持ち、黒とオレンジ色の制服を着たサービススタッフが付き添うほか、パンフレットや記念品、シャトルバスなども同じ色にデザインした。旅行プランでは現地のパートナーを厳選している。沿線のブヌン族の集落を訪ね、花東縦谷を270度を見渡せる高台で原住民スタイルの高級ディナーを楽しみ、また卑南遺跡の近くにある閩南式と日本式を融合した建物でお茶を味わう。「これらの業者は、現地の特色を生かした事業に取り組んでいて、旅行者は嗚日号を通して新鮮な体験ができるのです」と王岳聡さんは言う。
その後に打ち出した嗚日号2.0――「嗚日厨房」では、ミシュラン三つ星レストランの料理を車内で味わえる。花が飾られたテーブル、グラスにはワインが注がれ、ゆっくりと流れる車窓の風景を眺めながら、現地の風土を取り入れた贅沢なコース料理を楽しむ。嗚日厨房は日本のグッドデザイン賞やドイツのiFデザイン賞、アメリカのIDEA賞インテリアデザイン賞に輝き、台湾の鉄道観光に新たな世界を開いた。

「山嵐号」では花蓮‧台東の食材を使った料理が提供され、見ただけで食欲がわいてくる。(台湾鉄路公司提供)