「海の熱帯雨林」の再生
かつて潮境海洋センターの一部だったiOCEAN潮境智能海洋館(水族館)は、海洋科技博物館の中でも最も人気のある重要な施設である。
iOCEAN潮境智能海洋館のホールに入ると、巨大なモニターに潮境保育区の海中で撮影された映像が映し出され、海の中へと誘われる。
動線に沿って進んでいくと、人気のあるサメやエイ、クラゲ、チンアナゴ、クマノミ、ヒトデ、イソギンチャク、クモヒトデなどが次々と目の前に現われる。
1階に位置し、水槽に入った海の生物が並ぶ潮境海洋センターには、さらに珍しい品種が展示されている。22年以上にわたってここで飼育されてきたキイロハギや、非常に珍しいアルビノのアリゲーターガー、それにIUCNのレッドリストにおいて絶滅危惧種に分類されているスッポンモドキなどである。
海洋科技博物館では、サンゴの再生・保全のために民間部門とも協力しており、ここでは、陽明海運(ヤンミン・マリン)ととともにサンゴ再生を行なっている水槽を見ることができる。
サンゴ礁は海の熱帯雨林と呼ばれ、海洋生物の4分の1がサンゴ礁に依存して生きているため、海のサステナビリティにとって非常に重要な存在なのである。産学交流組研究員の蔡宇鴻さんによると、サンゴは環境の変化に非常に敏感で、水温や光線、栄養源などの変化が成長に影響する。それがテクノロジーの進歩により、サンゴを人の手で育てられるようになったのである。
階上へ移動すると、台達電子(デルタ電子)文教基金会が資金を出した100坪の面積のサンゴ保種センターがある。これも近年の異分野協力の重点である。
産学交流組の鄭佳泓さんによると、現在この保種センターでは地元である東北角海域の生態を模し、3000株ほどのサンゴの苗を育てている。葉状、塊状、枝状などさまざまな形の十数種のサンゴが基盤に着底した姿は、水中の苗畑のようで、基盤を覆うほどの大きさまで育ったら、ふさわしい時期に海底に移植されるという。
ゴミの山が素晴らしい博物館に生まれ変わり、海洋ゴミがたまっていた望海巷海湾が豊かな生態を誇る海洋保全エリアへと変身した。さらには博物館でも変えることのできないデメリットも、内外の学者や学生が見学できる特色へと生まれ変わったのである。
「ここへ来れば、私たちが置かれた環境と、それにいかに対応してきたかが分かります。生態系と環境のサステナビリティをどのように実現するかを知るための最高の体験ができるでしょう」と施彤煒さんは言う。劣悪な環境にいかに対応し、どのように共存して持続可能な開発を追求していくかは現代人にとって世界共通の課題である。この点で、第一線の海洋科技博物館はすでに一つの道を示していると言えるだろう。
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今年、動物行動学者のジェーン・グドール氏が再び台湾を訪れた際、飛行機を降りるとすぐに海洋科技博物館を訪問し、サンゴ保種センターではサンゴを1株植えた。(国立海洋科技博物館提供)
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ゴミ埋立地から出る水が環境に影響を及ぼしていないかどうか、国立海洋科技博物館は海水を汲み上げて海洋生物を飼育し、長期的にモニタリングしている。写真は潮境海洋センターの生物――22年にわたって飼育しているキイロハギ(下の写真の右)、クマノミ(右)、IUCNのレッドリストで絶滅危惧種に指定されているスッポンモドキ(上)。
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国立海洋科技博物館の設立準備から携わってきた産学交流組の施彤煒組長。
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海洋ゴミで作った楽器を演奏する人々。(国立海洋科技博物館提供)
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iOCEAN潮境智能海洋館で見学できるサメ、クラゲ、イソギンチャク、チンアナゴなどのスターたち。
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八斗子は海洋科技博物館の設立で生まれ変わり、基隆全体が魅力を増した。