EU(欧州連合)が中華民国国民に対して、ノービザでの入国と滞在を認める措置を採り始めてから、今年1月で満4年を迎えた。これは我が国とEUの交流の重要なマイルストーンである。
ビザ免除措置が実施されて以来、我が国からの欧州旅行が便利になり、これにつれて、台湾と欧州の社会、経済、科学技術など各分野での交流も深まっている。EUが我が国をパートナーとして重視していることの表れである。
「EUによるビザ免除待遇は、対欧州業務において30年来の重要な突破でした」と我が国外交部の林永楽・部長(外相)は語る。我が国は2003年から積極的にビザ免除待遇の実施を働き掛け、長年の努力の末、2011年1月11日に正式に措置が実施されたことは、台湾とEUの交流における重要なマイルストーンである。
「EUが我が国国民にノービザでの入国を認めたのは、我が国と欧州との関係向上を意味しています」と林永楽部長は言う。双方の貿易額は毎年平均480億米ドル以上を維持しており、2011年の貿易額は500億米ドルを突破した。同年、我が国がEUのビザ免除措置という目標を達成したことは、EUが台湾経済の成功と国民の素養、社会文化を肯定していることを意味する。

ビザ申請の手続もいらなくなり、気軽にヨーロッパへ出かけられるようになった。
我が国とEUとの間には正式な外交関係はなく、こうした条件の下でビザ免除措置を勝ち取るのは容易なことではなかった。林永楽部長によると、パスポートの偽造防止などの安全面の他に、最も難しかったのは、EUの27の加盟国(2013年にクロアチアが加盟し、今は28カ国)のすべてを説得することだったという。
EUのビザ免除措置を働きかけていた期間中、我が国の駐EUおよび駐ベルギー代表処の副代表を務めていた外交部欧州司の張銘忠・司長によると、EU加盟国への働きかけの終盤では、我が国との往来が比較的少ないルーマニア、ブルガリア、キプロスの3カ国が、台湾との相互理解が不十分なこともあって、一度は態度を保留していたという。
この3カ国の同意を得るため、我が国は能動的に善意を示し、こちらが先に3カ国国民へのビザ免除措置をとることを決め、ついに3カ国の同意を取り付けることができた。そして、EUの行政部門と欧州議会による15段階のステップを経て、2010年末についにビザ免除が決まり、任務を達成できたのである。
それまでの間、我が国は積極的に欧州委員会や欧州議会、欧州連合理事会などに働きかけ続けたが、林永楽部長によると、2009年3月にイギリスが我が国国民に対するビザ免除を決めたことが大きく作用したという。当時、イギリスは我が国国民に対するビザ免除措置を決める前に2年余りをかけて評価作業を行なった。そのプロセスを、我が国に対するビザ免除措置を考慮している国々が参考にしたのである。
そしてイギリスとアイルランドが台湾に対するビザ免除措置を実施すると、同じ欧州に属するEUの加盟国は、ビザ免除によって観光やビジネスのための入国者数が急激に増加したのを目の当たりにし、これによって、台湾に同様の待遇を与えることに多くの国が同意したのである。
EUが我が国国民に対するビザ免除を決めると、同様の作用が欧州の他の国々へも広がっていった。バルカン半島の5カ国、フランス、オランダ、イギリスの26の海外領土、それにEUに属さないノルウェーやスイスなども、EUに続いて同様の措置をとることとなった。現在、台湾に対してビザ免除措置を実施している国は140ヶ国あるが、そのうち69ヶ国が欧州の国々である。林永楽部長は、欧州のすべての国が同様の措置をとることを目標としており、今はセルビア共和国への働きかけを進めている。
EUがビザ免除措置を決めると、各界からこれを評価する声が上がった。

台湾欧州商工会(ECCT)のフレディ・ホーグランドCEOとディレクターのデイヴァー・ラウ氏は、EUによるビザ免除措置実施を前向きに評価している。
820人の会員を擁し、台湾と欧州の交流において重要な役割を果たす台湾欧州商工会(ECCT)もEUの同措置を歓迎している。ECCTのCEO、フレディ・ホーグランド氏によると、現在、EUによる対台湾投資額は330億米ドルに達し、台湾にとって最大の投資地域となっている。これに対し、台湾からの対欧州投資額はわずか10~20億米ドルでその差は非常に大きい。ホーグランド氏は、EUの人口は5億人を超え、市場潜在力も大きいため、台湾企業には中国大陸や東南アジアだけでなく、EU市場にも目を向けてほしいと語る。
台湾と欧州の経済交流を促進するため、ECCTでも2006年から、EUによる中華民国国民へのビザ免除措置の実施を働きかけてきた。そして2011年にこれが実施されると、台湾からの欧州旅行や留学、ビジネス訪問の利便性は大いに高まり、2012年、欧州を訪れた台湾人は前年比で20~30%増加した。
ECCT観光旅行行委員会のデイヴァー・ラウ共同議長によると、ビザ免除措置によって台湾から欧州を訪れる旅行者が増え、台湾と欧州を結ぶ空の便も増加したという。KLMやエミレーツ航空が欧州への直行便を就航させたのに続き、今年からはトルコ航空もその列に加わる。「旅行者と航空便の増加は、ビザ免除措置による作用です」とラウ氏は言う。

欧州旅行にビザ申請が必要なくなり、旅行業界ではさまざまなツアーを打ち出して観光客をひきつけている。
プリント基板のODM生産を行なっている耀騰公司の游孟儒・営業主任によると、西欧市場は成熟していて競争が激しく、西欧の「工場」としてはロシアに近い東欧に潜在力があるという。そこで2010年、同社は成長著しい東南アジアとロシアと東欧の市場をターゲットに定め、以来、同社はチェコやポーランドなどの見本市に積極的に出展している。
その話によると、商談には効率とフレキシビリティが求められるため、ビザ申請などが遅れるとスケジュール全体に影響してしまい、ビジネスにも支障をきたす。特にロシアはビザ手続きが繁雑で、受け入れ側の招待状が求められ、資料の変更などがあると、申請し直さなければならず、商談にも影響してしまう。それに比べ、欧州の国々へはビザ申請の必要がなくなり、見本市出展なども非常に便利になったという。
旅行業界もビザ免除措置の恩恵を受けている。易遊網(ezTravel.com)の陸悦寧・マーケティングマネージャーによると、EUへのビザが不要になってから、欧州へ旅行する人は毎年安定的に5%増加しているという。台湾からは距離が遠く、ツアー料金も高くなる欧州は、台湾人にとって主要な旅行先ではないものの、アイスランドでのオーロラ観賞といった特色あるツアーなどは人気がある。
その話によると、以前は3~5日かかっていたビザ申請の手続が不要になったおかげで、ツアーに申し込んでいながらビザが出発に間に合わないという事例もなくなった。これに加え、最近はユーロも値下がりしているため、易遊網ではシニアを対象とするバスツアーや自由旅行なども打ち出している。
ウェブサイト「欧州自助旅行充電站」を運営する林鳳声は欧州旅行の経験が豊富だ。1992年に個人旅行に行って以来、欧州の文化や雰囲気に魅せられ、これまでに21カ国を旅してきた。2000年に欧州旅行の経験をシェアするために、ネットフォーラムやブログ、フェイスブックを立ち上げて旅行好きの人々と交流している。
その話によると、旅行会社が手続もすべて代行してくれるツアーに比べ、何もかも自分でやらなければならない個人旅行の方が、ビザ免除措置の恩恵は大きいという。「以前は、ビザ取得に早くて3~5日、長ければ1週間かかっていましたが、今は行きたい時にすぐに出発できます。ビザの期限などを考えながらスケジュールを調整する必要もなくなりました」と言う。
ビザが免除されたことで、これまでは訪れる人の少なかったバルカン半島などへ行く人も増えてきたという。林鳳声によると、一部の国には中華民国の代表事務所もなく、台湾のことが知られていないため、ビザ申請は困難だったという。2006年にクロアチアへのビザを申請した時は、まずオーストリアの友人にパスポートを郵送して申請を代行してもらい、さらに保証のために友人に宿泊証明まで出してもらわなければならず、手続に半月もかかったという。
ビザが不要になった今は、従来は旅行先として訪れる人の少なかった地域も注目されるようになり、ネット上でも話題になっているという。林鳳声もこの1~2年のうちに、バルト海に面したエストニアなどを訪れたいと考えている。
次の目標:欧州との経済協力協定EUによるビザ免除措置によって、台湾と欧州の間では教育や社会など各方面での交流も増えてきた。林永楽部長は、最終的にはEUとの経済協力協定(ECA)や二国間投資協定(BIA)などを結びたいと考えている。ECAやBIAの締結までにはまだ努力が必要で、現在は積み木を重ねるように段階的な任務を進めている。
外交部欧州司の張銘忠・司長によると、ビザ免除措置が実施された今、次の目標は、EUおよびその加盟国において、我が国をFTA交渉の対象国とするよう働きかけていくことだと語る。現在すでに、BIAを足掛かりにしていくことで合意が得られており、年内にEUとの第一ラウンドの交渉を開始したいと考えている。
台湾と欧州との間では、さまざまな面での交流が始まっている。ドイツ、イギリス、アイルランドなど欧州8ヶ国とはワーキングホリデーに関する協定が交わされ、ルクセンブルクやオーストリアとは二重課税回避に関する取り決めも交わされた。この他にも、科学技術や教育、クリーンエネルギーなどの分野で50項目近い公式の取り決めが交わされている。
EUによるビザ免除実施から4周年を迎え、社会や経済、文化などの領域で台湾と欧州の交流はますます盛んになっている。今後のさらなる発展に期待したい。