シルバー世代の増加が続き、3年後には台湾も高齢社会に突入する。人口構成の高齢化の趨勢は止められない。高齢者が幸せに暮らせる環境創りは、台湾社会にとって真剣に取り組まねばならない課題である。
国家発展委員会が10月に発表した将来の人口推計によると、わが国は2018年に「高齢社会」に突入し65歳以上人口の割合が14%を超える。2025年には「超高齢社会」になり、100人に20人以上が65歳以上の高齢者になる。

身体は健康で気持ちは明るく、社会とのつながりを失わないことこそ円満な老後と言えるだろう。
人は誰でも年をとる。だが誰でも幸せな老後を送れるとは限らない。健康であることに加え、尊厳をもって老いること、そんな老年こそロハスな老後といえよう。
言うのは簡単だが、「衣食住行育楽」様々な生活の場面で、高齢者は「気の向くまま」と「分相応」の間で妥協を迫られる。自動車の運転が一例である。
先日、老いに屈せず、車を運転して出かけるのが好きな台中の85歳の男性が報道された。交通ルールは熟知しているが、視力と手足がいうことを聞かず、3ヶ月で5回事故を起こしていた。バンパーとボンネットがへこみ、見るだに恐ろしい。家族は年齢を考え、大事故になったら大変と、廃車にして運転をやめるよう願った。ところが老人は、運転の楽しみを奪うなら死ぬと脅し、キーと免許を渡さないのである。
わが国では昨年7月から、一般の運転免許所持者は、生涯にわたって免許を更新する必要がなくなり、高齢ドライバー対策のメカニズムが一つ少なくなった。老人の家族は、口を酸っぱくして説得するほかにどうしようもないのである。

積極的にグループ活動に参加することで、高齢者も楽しい時間を過ごすことができる。
社会で高齢者の人権が重視されるようになり、高齢ドライバーに関する議論では、個人の自由と公共の安全の間でバランスをいかにとるかが論点になってきた。世界中の高齢社会で避けられない課題である。
老化は病気ではなく、また免許所持イコール運転でもない。だが各国とも、高齢者が心身の状況を自己判断して、運転に適さないと思ったら無理をしないよう希望している。
英国の事例を見てみよう。王立自動車クラブ(Royal Automobile Club、RAC)が昨年9月に発表した報告によると、同国では70歳以上のドライバーが初めて400万人を突破した。全英3,600万人の運転免許所持者の11.1%を占める。
RACが「高齢」を70歳に設定するのは、英国の法律で70歳以上の運転免許所持者に3年ごとの更新を規定しているからである。更新時には身体検査や実技検定はないが、心身状態が運転継続に適しているか自己判断が求められる。
しかし「高齢」ドライバーに世界共通の年齢基準はない。わが国交通部の統計によると、全国1270万人余りの免許所持者のうち60歳以上が190万人以上、約15%を占める。
台湾老年学及び老年医学会理事、台湾大学医学部附属病院家庭医学部主任の黄国晋は、医学と公衆衛生の統計では65歳を分水嶺としているが、高齢者が運転に適しているかどうかは、ドライバーの身体の「機能性」を考えなければ適切な判定はできないという。

台北ではスマート・バス・ストップのデザインコンペを行なった。将来、高齢者や身体の不自由な人は停留所で登録すれば、バスの運転手は行動の不便な人がバスを待っていることを先に知り、フレンドリーなサービスの準備をすることができる。
簡単にいうと、一般に身体器官の機能は三、四十歳から下り坂に入る。よくある症状に老眼、白内障、骨粗しょう症、筋力低下等がある。個人差は大きいものの、一般に年をとるほど状況は悪化する。
運転の安全性の観点では、理想的なドライバーの条件は、感覚系、運動神経、中枢神経など複数の系統の統合に関わると黄国晋はいう。普通、年配者は視力・聴力・身体協調性が劣り、反射も遅い。また、高齢者は慢性病を患っている人も多く、薬の作用も安全運転を脅かす。
内政部警政署が行った交通事故統計によると、2002年以降、65歳以上の高齢者が15~24歳の血気盛んな若者を超えて、A1類道路交通事故(24時間以内に死亡)の2位になっており、24~64歳グループに続いた。昨年、65歳以上は555人が交通事故で死亡し、全体の28.7%を占めた。
この統計には、運転、乗車、歩行時など、交通事故全ての死者が含まれ、高齢ドライバー単独の統計ではない。だが事故を起こしたか巻き込まれたかに関わらず、高齢になるほど交通事故で死傷する割合も高くなる。
医者としての立場から、黄国晋はドライバーが一定の年齢に達したら心身状態の評価を受けることに賛同する。だが、運転が複雑な生理・心理・社会的要素に関わり、個人差が大きいことは黄も認めている。したがって、何歳から評価を始め、どのように評価を実施するのかは、医学、ソーシャルワーク、心理学など分野をまたいで専門家が共通認識にいたる必要がある。また、高齢者蔑視につながってはならないため、その前にまず教育宣伝から始めなければならない。

人生は70歳からと言い、元気な高齢者は多いが、自動車を運転するとなると視力は衰え、反応も遅くなっているので、交通安全上はリスクが高い。
運転適性評価は多くの国で実施されている。公路総局監理組副組長・李輝宏は、英国と日本を例に挙げる。両国とも免許の更新が必要で、70歳以上のドライバーには3年ごとに検査が求められる。わが国では一般免許所持者は更新不要なので、現在行っている措置は、高齢で運転に適さない人に免許返納を呼びかけることである。
昨年から公路監理(道路交通管理)機関と警察と地方行政とが共同で、70歳以上の高齢ドライバーに向けた宣伝キャンペーンを540回実施し、6600件を超える運転免許証の返納を受け付けた。今年の反響は更に大きく、1~8月で6300件以上が返納された。
また、李輝宏によると、中・重度認知症の確定診断を受けた免許所持者に関しては、監理機関が衛生福利部の注記通知を受けた後、「道路交通安全規則」第76条の体格と身体機能変化の規定に基づき、免許返納を請求し、返納しないときは監理機関が抹消するとしている。
しかし、免許抹消を強調するより先に、高齢者にフレンドリーな生活環境を構築すべきだと黄国晋は提案する。高齢者の交通手段を奪う話をする前に、こうした議論をするのが高齢社会にふさわしいやり方であり、本末転倒であってはならないという。よく老いることは、病気にならず心身の機能を良好に保つだけではない。積極的に社会活動に参加し、生命の価値を示してほしいと願うからである。
つまり、高齢者が幸せに生きるには、孤立させず、自ら孤立すべきでもない。高齢者に運転をやめてほしければ、代わりの「足」を提供しなければならない。
黄国晋は米国の例を挙げて説明する。高齢者に運転をやめてもらうための対策措置には、便数の多いコミュニティバス、タクシー相乗り奨励、電動車いす専用車道の開設などを含む。ほかにも道路の夜間照明を明るくし、道を平坦にし、道路標識をわかりやすくし、青信号の時間を長くするなど、どれも高齢者が安心して歩行者になるよう説得できるフレンドリーな環境である。

スマート・サービス・ベルを使えば、飲食店でもバリアフリーの便利なサービスが受けられる。
世界中の都市が急速に発達するに従い、人口はさらに都市に集中していく。WHO(世界保健機関)の推計では、2030年までに人口の5分の3が市街区域に集中して居住するようになる。都市の機能に、市民生活の需要を満たす任務が課せられることとなる。
その需要は、住居、医療から交通まで、大部分が高齢社会と密接な関係にある。
WHOの推計によると、世界の60歳以上人口は、2006年の11%から2050年には倍の22%に増える。世界の都市人口が全面的に高齢化する将来に向けて、WHOは計画を立てている。2007年に『高齢者にやさしい世界の都市ガイド』を出版して、高齢者にやさしい都市や地域づくりを提唱したのは、高齢化の趨勢への最も効果的な基礎対策だからである。
『ガイド』は高齢者にやさしい都市を以下の側面から見ている。野外スペースと建物、交通輸送、住居、社会参加、尊敬と社会包摂、市民参加と雇用、コミュニケーションと情報、地域社会の支援と保健サービス、以上の8領域である。
わが国はWHOの提唱に応え、衛生福利部国民健康署が2010年に嘉義市で8領域を試行推進し、2012年には全国22県市が100%このプロジェクトに加わり、台湾は高齢者にやさしい都市推進のカバー率が最も高い国になった。
各地方は工夫と地元色を活かし、異なる高齢者フレンドリープロジェクトを立ち上げている。宜蘭県は祖父母と孫の共学を提唱し、新竹市はシルバークラウドヘルスケアを発展させている。2016年のワールド・デザイン・キャピタルの開催が決まっている台北市は、ユニバーサルデザインとソーシャルデザインのコンセプトを都市ガバナンスに取り入れ、デザインで高齢者のロハス・バリアフリー都市を目指す。最もファッショナブルな手法である。
フレンドリーシティはデザインから台北はデザイナーが社会的責任を果たす基地になっている。フレンドリーで安全な公共交通利用環境の構築が、高齢者に運転をやめてもらうには一番である。そこから生まれた「スマート・バス・ストップ」がこの秋、試験運用を始める。
デザインを請け負った肆意設計(ndd)の陳希聖ディレクターは、スマート・バス・ストップは二大グループの需要を満たすという。バスを待つ高齢者、妊婦、幼児、身障者など行動が不自由な人と、フレンドリー乗車サービスを提供するバスの運転手である。
スマート・バス・ストップではバスの到着時刻を表示できるほか、バスを待つ人の身分登録機能を備えた。高齢者なら、敬老悠遊カードをバス停のバス路線のセンサに読み取らせると、高齢者が待っているという信号が近づいてくるバスの計器盤に表示され、運転手に準備を促す。バス停に入る前に速度を落としたり、乗客に席を譲るよう伝えたりすることができる。
都市に暮らす高齢者のバスへの依存はMRTに劣らない。陳希聖の90歳を超える父親は病院に行くたびにバス3本とMRTを乗り継ぐ。陳希聖は、スマート・バス・ストップはバスをよりフレンドリーにするが、冷たい人工知能が人間のふれあいに取って代わるべきではないという。そこで彼は、スマート・バス・ストップの機能を複雑にしすぎず、バスの運転手と乗客とのフレンドリーな対話環境を作った。
スマート・バス・ストップは高齢者が安心してバスを待ち乗車できる環境を作る。「スマート・サービス・ベル」は飲食店と高齢者のコミュニケーションを橋渡しする。ほかにも視力・聴力障害者、身体障害者、妊婦など、行動が不便な人が一人で飲食店に行くケースを対象にしている。
デザインした伍志翔は高齢者を例に説明する。食事時には飲食店は人手が足りず、一人で食事する高齢者がキョロキョロしていても、両手を大きく振っても、店員はなかなか来ない。テーブルにサービスベルがあったとしても、ベルを聞いて店員がすぐに行けるとは限らず、事情を知らない高齢者は不安になる。また、恥ずかしがりやの高齢者は店員を大声で呼べず、ベルを押して注目を浴びるのも恐れ、ベルも鳴らさずにずっと待っている。これでは外食が苦行になってしまう。
伍志翔は、スマート・サービス・ベルは双方向のコミュニケーションの機能があるという。ベルを押すとベルのライトが光り、店員が信号をキャッチしてクラウドを通じてサービスベルのライトを消したら「すぐ行きます」の意味である。サービスベルのライトが緑色に変わったら、少しお待ちください、店員は手が空いたら来ますという意味である。
高齢者にやさしい食事環境は飲食店が参加して作る。伍志翔は、スマート・サービス・ベルはレストランKikiとモーベンピックで試験を行うという。店もスマート・サービス・ベルでサービスの質がよりきめ細かくなり、高齢者等、特別な需要のある顧客が満足できるよう期待している。
3年後、台湾は高齢国家に仲間入りし、高齢者が台湾社会の主要メンバーになる。フレンドリーな環境は高齢者ロハスの先決条件である。「老年学」は誰にとっても重要な必修単位である。単位を落とすことは許されない。