シルバーシティはバリアフリー
世界中の都市が急速に発達するに従い、人口はさらに都市に集中していく。WHO(世界保健機関)の推計では、2030年までに人口の5分の3が市街区域に集中して居住するようになる。都市の機能に、市民生活の需要を満たす任務が課せられることとなる。
その需要は、住居、医療から交通まで、大部分が高齢社会と密接な関係にある。
WHOの推計によると、世界の60歳以上人口は、2006年の11%から2050年には倍の22%に増える。世界の都市人口が全面的に高齢化する将来に向けて、WHOは計画を立てている。2007年に『高齢者にやさしい世界の都市ガイド』を出版して、高齢者にやさしい都市や地域づくりを提唱したのは、高齢化の趨勢への最も効果的な基礎対策だからである。
『ガイド』は高齢者にやさしい都市を以下の側面から見ている。野外スペースと建物、交通輸送、住居、社会参加、尊敬と社会包摂、市民参加と雇用、コミュニケーションと情報、地域社会の支援と保健サービス、以上の8領域である。
わが国はWHOの提唱に応え、衛生福利部国民健康署が2010年に嘉義市で8領域を試行推進し、2012年には全国22県市が100%このプロジェクトに加わり、台湾は高齢者にやさしい都市推進のカバー率が最も高い国になった。
各地方は工夫と地元色を活かし、異なる高齢者フレンドリープロジェクトを立ち上げている。宜蘭県は祖父母と孫の共学を提唱し、新竹市はシルバークラウドヘルスケアを発展させている。2016年のワールド・デザイン・キャピタルの開催が決まっている台北市は、ユニバーサルデザインとソーシャルデザインのコンセプトを都市ガバナンスに取り入れ、デザインで高齢者のロハス・バリアフリー都市を目指す。最もファッショナブルな手法である。
フレンドリーシティはデザインから
台北はデザイナーが社会的責任を果たす基地になっている。フレンドリーで安全な公共交通利用環境の構築が、高齢者に運転をやめてもらうには一番である。そこから生まれた「スマート・バス・ストップ」がこの秋、試験運用を始める。
デザインを請け負った肆意設計(ndd)の陳希聖ディレクターは、スマート・バス・ストップは二大グループの需要を満たすという。バスを待つ高齢者、妊婦、幼児、身障者など行動が不自由な人と、フレンドリー乗車サービスを提供するバスの運転手である。
スマート・バス・ストップではバスの到着時刻を表示できるほか、バスを待つ人の身分登録機能を備えた。高齢者なら、敬老悠遊カードをバス停のバス路線のセンサに読み取らせると、高齢者が待っているという信号が近づいてくるバスの計器盤に表示され、運転手に準備を促す。バス停に入る前に速度を落としたり、乗客に席を譲るよう伝えたりすることができる。
都市に暮らす高齢者のバスへの依存はMRTに劣らない。陳希聖の90歳を超える父親は病院に行くたびにバス3本とMRTを乗り継ぐ。陳希聖は、スマート・バス・ストップはバスをよりフレンドリーにするが、冷たい人工知能が人間のふれあいに取って代わるべきではないという。そこで彼は、スマート・バス・ストップの機能を複雑にしすぎず、バスの運転手と乗客とのフレンドリーな対話環境を作った。
スマート・バス・ストップは高齢者が安心してバスを待ち乗車できる環境を作る。「スマート・サービス・ベル」は飲食店と高齢者のコミュニケーションを橋渡しする。ほかにも視力・聴力障害者、身体障害者、妊婦など、行動が不便な人が一人で飲食店に行くケースを対象にしている。
デザインした伍志翔は高齢者を例に説明する。食事時には飲食店は人手が足りず、一人で食事する高齢者がキョロキョロしていても、両手を大きく振っても、店員はなかなか来ない。テーブルにサービスベルがあったとしても、ベルを聞いて店員がすぐに行けるとは限らず、事情を知らない高齢者は不安になる。また、恥ずかしがりやの高齢者は店員を大声で呼べず、ベルを押して注目を浴びるのも恐れ、ベルも鳴らさずにずっと待っている。これでは外食が苦行になってしまう。
伍志翔は、スマート・サービス・ベルは双方向のコミュニケーションの機能があるという。ベルを押すとベルのライトが光り、店員が信号をキャッチしてクラウドを通じてサービスベルのライトを消したら「すぐ行きます」の意味である。サービスベルのライトが緑色に変わったら、少しお待ちください、店員は手が空いたら来ますという意味である。
高齢者にやさしい食事環境は飲食店が参加して作る。伍志翔は、スマート・サービス・ベルはレストランKikiとモーベンピックで試験を行うという。店もスマート・サービス・ベルでサービスの質がよりきめ細かくなり、高齢者等、特別な需要のある顧客が満足できるよう期待している。
3年後、台湾は高齢国家に仲間入りし、高齢者が台湾社会の主要メンバーになる。フレンドリーな環境は高齢者ロハスの先決条件である。「老年学」は誰にとっても重要な必修単位である。単位を落とすことは許されない。