針葉樹林の精霊:アメントタクサス
20世紀前半、イギリスのプラントハンター、アーネスト・ヘンリー・ウィルソンは科学誌において「フォルモサは名実ともに『東洋の真珠』である」と述べた。この栄誉は、険峻な山脈に根を張るクスノキ科やブナ科、それに針葉樹などの植物に向けられたものである。
中でもイチイ科の台湾固有種、アメントタクサス・フォルモサナ(台湾穂花杉)は、発見されてから正式に命名されるまで、常に針葉樹を愛する人々を驚かせてきた。この新種が発表された19世紀末、ヨーロッパの植物学者は東アジアで最も特殊な裸子植物の一つだと考えており、分類上も、長いあいだ結論が出なかった。
それは、アメントタクサス・フォルモサナがつける赤い種皮に覆われた核果状の果実が、球果をつけるマツやヒノキと比べて非常に珍しかったからだと思われる。
人里離れた土地に育つアメントタクサス・フォルモサナは、穂状の雄花をつけるため穂花杉と呼ばれ、針葉樹林の精霊とも称えられる。
そして1952年、中央研究院のアカデミー会員だった李惠林は、アメントタクサス・フォルモサナは台湾の固有種であり、氷河期の遺存種であるという研究成果を世界に発表した。
この植物は台湾中部の中央山脈の標高800~1400メートルの原生林に生育し、最南端は屏東里龍山に達する。ここはパイワン族の集落に隣接しており、数百年にわたってこの地に暮らすパイワンの人々を守ってきた。
ただ、その存続が危ぶまれたこともあり、1988年に「文化資産保存法」の保護対象リストに入れられた。「地球温暖化の危機の中、最初に絶滅の危険にさらされるのはアメントタクサス・フォルモサナかも知れません」と話すのは農業部林業試験所育林組の鍾振徳・組長だ。この植物は繁殖力が弱く、そこへ気候変動や遺伝子多様性の減少などといった要因が加わり、自然環境における数が激減していた。
そこで2004年、鍾振徳はまず挿し木などの無性生殖の方法で区域外の数を増やし、苗木の開花を誘導して性別を確認した。アメントタクサスは一つの株に雄花か雌花のどちらかしか持たないことが自然繁殖の大きな障害だったため、人工授粉を行なうことでこの問題を解決した。「花を咲かせて種子を発芽させるまでに4年の時間がかかりました」と鍾振徳は言う。だが、これはまだ保全活動の前段階に過ぎない。
研究の結果、受粉から種子が成熟するまでに15ヶ月かかることがわかった。この点は多くの針葉樹と似ているが、赤い果実が落ちた後も、果実に繁殖力を持たせる「胚」がまだ未熟であるため、層積埋蔵(種子を砂に埋め、低温の環境で数ヶ月置く)という方法を用いて休眠中の胚を発育させなければならなかった。
こうして2014年、鍾振徳はアメントタクサス・フォルモサナの人工繁殖の成果を対外的に発表した。この段階で有性生殖の課題を明らかにすることで新たな機会をもたらす可能性が開け、アメントタクサス・フォルモサナの保全に新たな一章を開いたのである。その後、彼はさらに苗木を台北植物園や宜蘭福山植物園などにも植え、異所性移植を通して台湾の貴重な自然遺産を残そうとしている。

赤い果実をつける点が、アメントタクサス・フォルモサナと他の針葉樹との最大の相違点である。(鍾振徳提供)