データ保存が可能でMP3もラジオも聞ける小型メモリを首から下げ、手にはカラーモニターのカメラ付き携帯、ワイアレスでインターネット接続可能なノートパソコンを使っていたら、ハイテク好きだと思われるだろう。さらにハイテク機器にこだわるなら、居間に薄型の液晶テレビかプラズマテレビがほしい。それでこそ流行に敏感だと言える。
ハイテク製品は日常生活に深く浸透しているが、そこには大きな格差がある。古い製品さえ使えない人もいれば、社会の一歩先を行く人もいる。次々と登場する新製品に振り回されず楽しむにはどうすべきなのだろうか。
6月の初め、世界第2位の規模の台北国際コンピュータフェアが開催された。会場には3000ものブースが設置され、5日間の入場者は延べ十万人、世界各国のバイヤーと消費者が押し寄せた。ここは未来の生活と次の人気商品を知るのに格好の場所だ。目先のきくユーザーはここで市場の情報を仕入れ、最もホットな商品にまず触れてみるのだ。
台湾のデジタル機器大手BenQは、巨大なサッカーの看板で注目を集めた。会場では、重さ1.9キロ、14.1インチで閲覧範囲を25%広げた新型パソコン、16倍速のDVDレコーダー、タッチパネル式のデジカメなどを発表した。

グラフィックカード(左上)からCPU(左下)やデジタルカメラまで、メーカーは次々と新商品を打ち出し、美しいモデルを使って消費者の購買欲をかきたてる。
BenQのデジタルメディア事業群製品部の林樹淳マネージャーは、入場者に新しいスポーツタイプの小型メモリーを説明する。「これは使用状況に合わせてデザインしたもので録音時間は最長3000分、こちらは流行のメタリックなネックレス風で、アクセサリーとして使えます」
多くの人が足を止めたのは、7月発売予定でヒットが期待される4バンドの携帯電話だ。これはネット接続や映像放映など小型パソコン並みの機能を持っている。
どの企業の新製品も完全なスペックや機能、デザインの美しさで消費者をひきつけようとする。会場を一回りすると「デジタルファミリー」がハイテク製品の新ブームだと気付くだろう。
6月に台湾での地上波デジタル放送が開始、6月中旬にはサッカー欧州選手権、8月にはアテネオリンピックが始まる。家電メーカーはデジタルテレビの買い替えブームを予測し、続々と大型テレビを発表、市場に送り込んでいる。
大手電機メーカーの大同は、液晶テレビは17〜47インチ、プラズマテレビは42、46、50インチを発表した。画質の比較のためにスポーツなど動きのある画面を見ると、プラズマテレビの明るさ、コントラスト、鮮やかさが際立つ。
昨年、19万9000元という低価格で台湾初の40インチ液晶テレビを売り出し市場を驚かせた東元も、すぐさま47インチの液晶テレビを発売した。当初、高価な大型テレビの購入者は少数にとどまると見られていたが、東元電機の王俞潔マネージャーは、会場で47インチが意外に人気があることを知った。消費者の家のぜいたくなソファに合わせ、この液晶テレビは流線型を使ったデザイン、鮮やかなブルーの縁取り、内蔵型の薄型スピーカーなど、見た目にもスマートだ。
統計によると、昨年台湾での液晶テレビの販売台数は約3万7000台で、今年は8万台に増加、成長率116%が予測されている。
30インチの液晶テレビも、台湾メーカーの奇美、友達、華映などの液晶パネル使用でコスト削減を果たした。売り場では30インチの液晶テレビが目玉商品で、日系のシャープやソニー(17〜20万元の間)が台湾製(7万元程度)の3倍以上することから割安感が強い。だが、日本のブランドと画質に憧れて価格を気にしない消費者も少なくない。
液晶テレビやプラズマテレビは消費者の買いたい商品のトップだが、従来のブラウン管テレビと比べると、価格は10倍以上(7万元と7000元)で、高い買い物であることに変わりはない。30インチの液晶テレビの場合、3万元以下になれば爆発的に売れる可能性があるが、あと2〜3年はかかるだろう。

テクノロジーはヒューマニティから来たものなのだから、ハイテク中毒になってはならない。
消費を刺激する販売手法に加え、技術の急速な発展で、ムーアの経験則によると、チップの価格はそのままで18ヶ月ごとに性能が倍増しているという。現在、デジタル関連商品はより小さく、より速く、より安くを追求している。
ハイテク商品市場の法則は、商品の成熟期には急速に値崩れし、消費層もそれと共に拡大することだ。新製品の発売当初、高価格時は、ユーザー間の差がまた発生する。
たとえば、小型メモリーは99年には発売され、カメラ付き携帯電話は2000年に日本のシャープが、2002年10月に台湾でも発売となった。だがこれらの商品が広く受け入れられたのは去年になってからである。
技術革新の伝播理論のモデルでは、あるハイテク新製品発売から普及までにはイノベーターから拒絶者まで5段階があるとされる(図を参照)。歴史的に見れば、イノベーターは発明者で、例えば電話やパソコンの発明者など当然その製品の最初のユーザーになる人だ。次に仕事での必要性やハイテク好きな層がいる。ハイテクプレイヤーと呼ばれる彼らは、技術や製品の仕組みに詳しい。
彼らの使用行為は普通と異なり、技術が未熟で不便で高価格でもよしとする。例えば、彼らは車の中で解析度の低いPDAの画面を見続けても気にしないのだ。新製品が人々に受け入れられず、市場から消えるリスクも気にしない。
一般消費者が液晶テレビとプラズマテレビ、プロジェクションテレビの違いも知らない頃、ハイテク好きの人々はもう先を行っている。ここ数年、工業研究院と東元電機はカーボンナノチューブを使ったFED(電界放出ディスプレイ)の開発に取り組んでいる。これは、カーボンナノチューブの低消費電力、高電界放出密度、高安定性などの特性を生かし、画像の質を保ちつつ節電と体積の減少を追求し、新しいフラットディスプレイとなるだろう。

6月にはサッカー欧州選手権、8月にはアテネ五輪があり、家電メーカーは次々と大画面のテレビを発売している。プラズマテレビは軽くて薄く画質が良いが、1台20万前後という価格はまだ贅沢品である。
PCホームの発行人詹宏志さんは社会を観察し、一歩進んだユーザーを「デジタルリーダー」と「デジタルスタイリスト」に分ける。共通点は新しい製品が好きなことだが、前者は機能、スペック、用途にこだわり、スピード、奇抜で多様な機能などにも好奇心を持ち、高価でも購入する。人に商品を紹介し、アフターケアもする。だが「デジタルスタイリスト」は、製品の外観、素材、美しさにこだわり、値段は気にしないが品質にはうるさい。奇抜でもいいが、スタイリッシュでなければならない。人にアドバイスはせず、人と同じ物は持ちたくないタイプだ。
こうした熱心な人々がいなければ新製品はなかなか社会に浸透しないし、ハイテク製品も多様化しなかっただろう。また現在は宣伝の戦略が威力を発揮し、例えば電話は発明から100年かかって普及したが、携帯は20年もたたないうちに同じ普及率に達した。
10年で台湾の携帯電話の普及率は109%に達し、2台以上持っている人が多い。企業はユーザーの購買欲を刺激するため、低価格競争を繰り広げ、市場が飽和すると、今度は画面をカラーにしたり、撮影機能を加えたりしてブームを作ってきた。
2002年末ある調査会社が台湾で行ったハイテク製品の使用行動調査では、冒険型(ハイテク好きな20〜39歳の高学歴高収入の男性)、エンジョイ型(使いやすさを重視)、ネット型(ネットに入り浸り)、情報型(携帯での情報に依頼)、流行後追い型(簡単な機能だけを使用)、憂慮型(ハイテクに懐疑的)、無関心型に分けている。
昨年末発表された類似の調査は5タイプに分け、無関心型が38%から15.3%に減少、ネット型がエンジョイ型か冒険型になり、冒険型は5.8%から23.5%に増加している。この現象は、デジタルブームと世界的な競争で多くの人が遅れをとることを恐れ、新製品を求めて自分を「武装」しようとしているためだという。
詹宏志さんは、台湾では情報製品の使用態度での差は小さく、どのタイプでも携帯所有率はほぼ100%だと言う。差が大きいのはインターネット使用の状況で、冒険型が93.7%なのに対し、無関心型は1.5%に過ぎない。インターネットの使用はハイテクライフの分かれ目で、設備や技術がひとつのネックとなる。それはただ買えばいいというものではないからだ。

デジタル商品は生活に深く浸透している。大勢のファンがスターにデジカメを向ける光景は奇観と言えるだろう。
統計によると、台湾の1年の携帯電話販売台数は600万台で、このうち100万台がカメラ付きだ。これとデジタルカメラが若者に人気なのは、彼らの自己顕示欲を満足させられるからに他ならない。
PCホーム・オンラインの「2004年デジタルカメラ消費および使用行動調査」からは、4万人近くのネットユーザーのうち、55%がデジカメ所有で、未所有者の96%が購入を希望、所有者の22%が2台以上所有しているとしている。消費行動では、今後500万画素以上を購入したい人が4割以上を占め、高品質の物を求めていることがわかる。
しかしハイテク製品のライフサイクルは、開発の加速で短くなっている。新機能も増え、機能自体も向上、価格は下がり続け、購入のタイミングがつかめない人もいる。
デジタルカメラの場合、新技術とチップの開発で去年より格段に進歩し安くなっている。だが、その選択肢の多さで悩む人も多く、新技術を理解しているユーザーは少ない。
ブラウン管テレビがお茶の間に入って半世紀、プロジェクション、液晶、プラズマなどが続々と登場、消費者の選択肢は増えたが、かえって面倒でもある。テレビを見るという機能は同じだが、今までのテレビについての知識は役に立たなくなり、消費者はまた複雑な技術と専門用語を覚えなければならないのだ。

技術革新の伝播過程(資料:デジタル・ウォール)
ハイテク産業が莫大な時間とコストに関わらず新製品を出すのに必死なのは、それなりの理由がある。新製品がないのは停滞を意味し、技術革新の継続こそが、ユーザーに安定した印象を与えるからだ。
さらに、例えば液晶テレビのような技術は、情報産業と家電産業という別々の産業を交差させ、新たな競争を生み出した。声宝や大同など落ち込んでいたメーカーも開発に力を入れ、産業に活力を生んだのだ。
フリップ型携帯電話は、1980年代生まれの若者たちにおなじみのモデルだ。長年トップのノキアは、外観を変えず操作の簡単な画面を貫いてきたが、ソニーエリクソン、サムソン、シーメンスなどの厳しい追い上げで市場占有率を落とし、市場に追随せざるを得なくなった。
今年の第1四半期、ノキア7200が登場、従来のフリップ型をやめ、さらに第2四半期は100万画素のカメラ付きを出すと発表した。4倍ズーム、セルフポートレート機能があり、ユーザーは撮影画像をパソコンやCD-ROMに保存し、音楽、文字、アニメを加えることもできる。
実際、カメラ付き携帯電話は単にカメラと携帯を合わせただけで、新しい技術ではない。だが、これが競争のポイントとなるかもしれないのだ。新製品で、人々の消費欲もずっと引き付けることができ、流行に乗り遅れないため、ハイテク好きなら3ヶ月から半年に1度携帯を買い替える。デジタルカメラの開発も速く、消費者がまだ300万画素のカメラに慣れないうちに、800万画素の新機種が出る。そこでまた1台買い、家の中は使われなくなったハイテク製品であふれるのだ。

空港や喫茶店など、多くの場所にワイアレスでネット接続できるモバイル・サービス・ラウンジが設けられ、ノートパソコンさえあれば、どこでも仕事ができるようになった。写真は台北市信義区のショッピングエリア。
デル社アジア地域の前GMで現在マキシマ管理顧問会社社長の方国健さんはコンピュータフェアの「コードレス新時代を迎えて」というシンポジウムで、ハイテクによって「リサイクル産業とダイエット産業」も台頭すると冗談まじりに話した。方さんは、新製品開発の速さが多くのごみを生み出し、リサイクル業は大市場になるという。また今後はテレビ、ステレオ、コンピュータ、冷蔵庫などどの家電もリモコン操作できるようになり、人々はソファに寝転び、映画の中の宇宙人のように太る可能性があるというのだ。
「他の会社はわかりませんが、私の会社には24時間の専用ネットがあり、従業員にはパソコンとメールボックスがあります。家にはデスクトップとノートパソコン、プリンター、スキャナー、ダイヤルアップ回線があって、退社前にまだ終わっていない仕事を家にメールで送って、帰宅後も仕事を続けます。寝る前にまた会社にその仕事を送って、翌日会社で続きをするのです」広告代理店のコピーライター王淑美さんは、一日中「仕事」をしていると語る。
ステレオ、スピーカー、ビデオ、ゲーム機などのサウンドは生活に刺激を与えるが、家族との距離は大きくなる。仕事をしなくても、家にはそれぞれ自分の部屋に自分のパソコンやテレビがある。多くの人はデジタルカメラを買っても、家族や子供を連れては出かけられず、多機能の高価な機種を買っても、それは気休めや見せびらかしにしかならず、ほとんど使わない。テレビのAV端末や、携帯メール、メッセージなどもわからず使えない人もいる。

グラフィックカード(左上)からCPU(左下)やデジタルカメラまで、メーカーは次々と新商品を打ち出し、美しいモデルを使って消費者の購買欲をかきたてる。
ハイテクに永遠という思想はない。ハイテクの便利さを楽しむには、それに振り回されないことが大切だ。
アメリカの作家ジョン・ネズビッツはその著『ハイテクハイタッチ』で、ハイテクへの崇拝と恐怖は両極であり、ウォークマンや携帯、ノートパソコンを持って海辺で休暇を過ごし、海の音すら感じようとしない人は、すでに「ハイテク中毒」の恐れがあり、よくない生活態度だとしている。ハイテクが「ヒューマニティ」から来たものである以上、生活のニーズに合ったハイテクこそがよいハイテクなのである。

グラフィックカード(左上)からCPU(左下)やデジタルカメラまで、メーカーは次々と新商品を打ち出し、美しいモデルを使って消費者の購買欲をかきたてる。

グラフィックカード(左上)からCPU(左下)やデジタルカメラまで、メーカーは次々と新商品を打ち出し、美しいモデルを使って消費者の購買欲をかきたてる。