救援最前線
いわば「台湾の屋根」からなら、いったいどこまで遠く見渡せるのだろう。
360度の展望が開ける中、最も近くに見えるのが玉山主峰と東峰だ。「玉山主峰はおおよそ南投県の県境付近に位置しており、天気が良ければ、はるか北には雪山(苗栗県と台中市の境にある)の頂上が、南に目をやれば北大武山(屏東県と台東県の境にある)の頂上も見えますが一部は遮られます。高雄の85ビルや、テーマパーク『義大遊楽世界』の大観覧車も肉眼で捉えられます。東は太平洋に浮かぶ船が見え、数年前には小琉球の島上の灯りも撮影しました」と言う。これはまさに、ネット上で「玉山から本当にそこまで見えるか」と長らく議論されてきたことの回答だ。
台湾の最高地点にある玉山気象台は、高空での捜索に必要な第一線の情報を提供できる。謝さんによれば、現在では各気象台に自動測量報告システムがあって気温や風向‧風速などのデータを提供できるとはいえ、玉山気象台の重要性は言うまでもない。「台湾で5番目に高い南湖大山に空中勤務総隊が出動する際には、まず必ず玉山気象台に高山の天候状況を問い合わせてきます」と言う。基本データのほかにも、山上の風景を撮影し、山頂と視界状況の注意書きを付けて知らせる。数値だけよりも理解しやすく、飛行の安全がより確保しやすくなるからだ。
嘉義空港から空軍救護隊「海鴎部隊」のヘリコプターや空中勤務総隊が高高度訓練を行う際にも、前日に天候の問い合わせがある。それによって当時の訓練内容を調整するためだ。このように山上と平地とは長年にわたって密接な交流があり、そうした友情から、時にはパイロットたちが割れやすい卵や重いスイカなど、栄養があって美味しいものを届けてくれるという。
山での遭難救助にも、玉山気象台はタイムリーに支援を提供する。例えば数年前、玉山国家公園内のキャンプ場で12日間に70ヘクタールを焼失する森林火災が起こった際も、救援に駆け付けた各機関に山上の第一線の天候データを提供したのは玉山気象台だった。複数の機関から同時に問い合わせがあった場合、謝さんはライブストリーミングを行い、情報を共有していた。

氷に閉ざされた世界は静謐で息をのむほど美しい。とはいえ風雪にさらされる生活は苦労が多い。