100歳になっても夜市へ
自分では台北の夜市を全て制覇したと思っていたが、3年前に初めて南機場夜市を訪れ、なぜここを知らなかったのかと感じた。「ここは観光客は少なく、ほぼ地元住民ばかり。長く屋台を出している店が多くて味にハズレがありません」
日本と台湾の懸け橋になりたいという大久保さんは、日本から友人が来れば必ず夜市に案内する。台湾人の温かさを知ってほしいと思うからだ。店の主人や客たちが愛想よく美味しい物を推薦してくれるし、傘を忘れてきた大久保さんを見て「これをさして行きなさい」と熱心に自分の傘を勧めてくれる人もいる。そして大久保さんは、日本人に台湾の食べ物を紹介する際のテクニックを教えてくれた。例えばアヒルの血は「黒い豆腐」、豚などの腎臓は「動物の内臓」とまずはぼかしておき、友人が美味しいと言った後で実は何かを説明するのだと。また、自身が台湾で好きになったタロイモのスイーツも必ず友人に薦めるという。日本ではタロイモを食べられないし、「松重豊さんも逢甲夜市で食べて好きになった」のだからと自信たっぷりに説明した。
夫とともに台湾中の夜市を巡る大久保さんは、週に1日しか開かないようなローカルな夜市にも足を運ぶ。例えば宜蘭の員山夜市では、搾りたてのトウモロコシジュースが飲めるし、濃厚なスープのヤギ肉煮込みも大盛りが出てくるなど、最初は夫婦してまるで新大陸を発見したかのように興奮したという。台湾の夜市は各地でそれぞれ異なるけれども人の温かさは変わらないと感じている。それぞれが見事で、撮影し尽くすにはあと30年はかかるだろうから、「100歳になっても夜市を歩いていますね」と二人は笑った。

60年の歴史がある南機場夜市ではリーズナブルな価格で各種の美味しい物が味わえる。左から車輪餅(今川焼き)、臭豆腐、蒸し焼き肉まん。

最愛のタロイモ‧スイーツを食べながら、大久保さん夫婦は「台湾の夜市には100歳になっても来たい」と笑う。