原因は停止後の冷却トラブル
長年にわたり原子力に関する知識の普及に努めてきた清華大学原子力工学科教授の李敏によると、原発の最大の脅威は、圧力容器内の大量の放射性物質にあり、それが外部に漏出しないよう、ペレットや燃料棒被覆管、冷却水系統、格納容器や建屋などで多重に防護してある。
原子炉内では絶えず核分裂反応が起きており、強い放射能を帯びた核分裂生成物が生じるが、不安定な生成物は「崩壊」によって安定した「原子核」に変わっていく。その時に生じる崩壊熱を冷却しないと、高温で炉心溶融が起きてしまう。
原子力発電所は、地震や飛行機墜落など、あらゆる非常事態において安全に停止するよう設計されており、同時に崩壊熱を継続的に冷却するために多重の冷却装置が設けられている。
放射性物質漏出が生じる原因は二つ。一つは核分裂連鎖反応が制御できず、圧力容器が解体してしまう事態だ。これはチェルノブイリ事故の原因だが、台湾と大多数の西洋の原発はチェルノブイリの「黒鉛減速沸騰軽水圧力管型原子炉」ではないため、原子炉が瞬時に解体するという事故は起こらない。
放射性物質漏出の第二の原因は、核分裂停止後(地震による自動停止など)、放射性物質の崩壊熱放出が継続し、それを冷却できずに炉心が溶融し、多重防護が機能しなくなる事態で、福島原発事故はこれに当る。
原子炉が停止したら安全システムが働き、注水と冷却が行なわれるが、これには動力が必要だ。そのため交流電源と蒸気駆動の動力源が設置されている。停止時、発電所は停電している可能性があり、原子炉各基に2台ずつジーゼル発電の交流電源が備えられ、また蒸気タービン駆動の注水システムがあるが、こちらは直流電源(バッテリー)が必要となる。
これらはすべて国際規格の基礎配備だが、台湾ではさらに2台ずつガスタービン発電機と、5台目のジーゼル発電機を設置している。