時代の潮流とともに
民間信仰も社会の変化とともにある。最も有名なのは、前世紀末から盛んになった月下老人(月老)への信仰だろう。
台湾では1980年代になると、社会の変容によって人と人との関係にも変化が生じた。例えば晩婚化が年々進み、出会いを求める男女のためのイベントなども盛んに行われるようになった。そして神にすがる独身者たちも増えたことから、縁結びの神である月下老人が人気を集めるようになったのだ。
台北の大稲埕霞海城隍廟の月下老人は、台湾全土で最も人気の高い月老だと言え、廟内では月老に参拝に来た人をよく見かける。月老参拝では、定番の「飴、鉛のお金、赤い糸」をお供えし、心の中で月老に自己紹介してから良縁に恵まれるようお願いをする。インターネット上では「誠心誠意お願いすれば、3カ月以内に良縁に恵まれる」と伝わっているほどだ。
廟側によれば、毎年6000組に上るカップルが結婚祝いの菓子折りを持ってお礼参りに訪れるという。また、そんなご利益にあずかろうと、わざわざやって来る外国人も多い。そのほか、もし不倫や悪縁を断ち切りたい場合は、家庭の幸せや夫婦円満を守ってくれる神、城隍夫人を拝めばいいという。
ご存知だろうか。「愛は何も区別しない」という考えから、台湾は2019年にアジアで初めて同性婚を合法化した国となり、そして霞海城隍廟の月下老人も同性カップルを受け入れる守護神になったことを。心を込めて良縁をお願いさえすれば、月老は誰に対しても庇護や祝福を与えてくれるのだ。
台湾の神々の世界は一見複雑なものに感じられるが、それはまさに社会の多層性を映し出していると言える。
自然から生まれた神もいれば、歴史的人物が神になった例もあり、郷土を守ってくれる地方の神もいる。また時代の変化によって生まれる新たな信仰もある。廟に入ると、神々の中で最高位の玉皇大帝と、庶民の生活に寄り添う土地公が、並んで座している光景を見かけるだろう。まるで台湾社会そのもののように、神の世界は包容力があり、平等で多様性に富んでいる。
線香の煙がゆらゆらと立ち昇る中、試験合格への願い、恋愛への期待、暮らしの平安への祈りなど、ここではあらゆる種類の祈願を受け止めてもらえるのだ。
次に台湾を訪れたなら、ぜひ廟に立ち寄ってみてはいかがだろう。そして気づくだろう。ここは信仰の場というだけでなく、人々のさまざまな物語が交錯する場所であるということに。

媽祖は台湾で、あらゆることを守護してくれる神になった。

観世音菩薩はインドに起源をもつ神だが、時代と場所を変えるうちに風貌も現地化している。

市街地の土地公は手に元宝(昔のお金)を持っており、これは富を象徴する。

土地公廟には扉のないことが多い。信者がいつでも気軽に参拝できるようにするためで、この神の「民に近い」という特質の表れだ。

台北艋舺(現在の万華)にある青山宮は霊安尊王を主神として祀り、福建恵安出身の人々の信仰の中心となってきた。

台北で最も有名な寺である龍山寺は観世音菩薩を祀る。台北を訪れる外国人観光客にとって必見の名勝だ。

神農大帝の神像は手に穀物か稲穂を持っていることが多い。

三太子は有名な子供の神で、容貌にまだ幼さを残す。足で風火輪(乗り物)を踏んでいるため、トラックやタクシーの運転手に職業の守護神として祀られる。

赤ら顔と長いひげが関公の特徴だ。座して『春秋』を読む姿の像をよく見かける。

縁結びの神である月下老人に対する信仰は、社会の変化とともに盛んになった。台北の大稲埕霞海城隍廟の月下老人は台湾全土で最も人気のある月下老人であり、同性カップルも受け入れてくれる。

月下老人参拝には飴、鉛のお金、赤い糸をお供えし、自己紹介してからお願いをする。心から願えば必ず良縁がもたらされる。