「台湾は立ち上がった。これは理性の堅持と民主への自信を示している。
台湾は立ち上がった。これは国民の自信と国家の尊厳を表している。
台湾は立ち上がった。これは希望の追求と理想の実現を象徴している」
気候も穏やかな5月20日、総統府前には国旗がはためき、大勢の人々が見守る中で、中華民国第十代総統・副総統となった陳水扁氏と呂秀蓮氏が強い意志をもって全国民に宣誓して就任し、これによって新しい時代が始まった。新しい内閣のメンバーも、同じ日に、陳水扁氏が見守る中で宣誓して就任した。
だが、人々が歓呼し、期待を寄せている中で、新政府はすぐに厳しい試練に立ち向わなければならない。私たちの置かれた現状を見ると、台湾海峡の情勢は「特殊な国と国との関係」論以来、最悪の状態に陥っており、またWTOへの加盟は台湾の経済発展と両岸関係の今後にも大きく影響する。内政面では治安の悪化、黒金(暴力組織の政治介入や金権)の横行、環境保全と経済発展の矛盾、エネルギー開発の問題など、数々の課題があり、どれも新政府が一つ一つ解決していかなければならないものだ。
台湾で初めての政権交代が実現したが、民進党はどのような新しい思考で施政に取り組んでいくのだろう。台湾化した国民党の「李登輝路線」を引き継いでいくのだろうか。陳水扁氏の提唱する「新中間路線」は全国民の意志をまとめた未来を示すものだろうか。あるいは陳氏がかつて堅持していた政治的理想が変ってきたのだろうか。台湾は「全民政府、クリーンな政治」という主張によって、明るい未来へと歩んで行けるのだろうか。
5月20日、陳水扁氏が総統に就任した日、全国各地で行なわれた祝賀イベントに数十万人が参加した。台湾の人々は、まるで「カーニバル」のような気分で、この台湾政治史上初の政権交代の日を迎えたのである。
学生の頃から反政府運動に関わってきた王曼怡さんは、まさか自分が30歳になる前に、民進党が政権を取る日が来るとは思っていなかったという。
これは、台湾人にとって初めての「大番頭」の交替であり、すぐには慣れないこともある。しかし黒金問題は深刻化しており、まさに選挙前に中央研究院の李遠哲院長が「台湾は今、向上するか下降するかの分かれ目に立っている」と語った通りである。
向上するか下降するか。
陳水扁氏は「全民政府、クリーンな政治」という主張で李遠哲氏のこの指摘に応え、総統選挙で当選した。当選後、陳水扁氏は外部が抱いていた「反体制体質」という疑いに反し、謙虚かつソフトな姿勢で、かつて自らが厳しい言葉で批判した人々を次々と訪問し、和解していった。総統就任前には郝柏村氏を訪ねて過去に批判したことを公に謝罪し、忠烈祠に参詣し、国民党に所属する国軍将軍の唐飛氏に行政院長就任を依頼したのである。こうして陳水扁氏の声望は短期間のうちに上昇した。ギャロップ社の世論調査によると、81パーセントの有権者が陳水扁氏の言行に満足しており、今後に期待を寄せている。陳水扁氏は選挙では絶対多数の票を得ることはなかったが、選挙後に大部分の国民の心をつかんだと言えるだろう。
陳水扁氏就任後の最初の試練は、内外から注目されている両岸政策だ。
東呉大学政治学科の劉必栄教授は、中共の現在の気持ちを「憂鬱でくさくさする」という言葉で表現している。陳水扁氏が総統に就任して以来、台湾に対する批判も攻撃も対話も、どれもできないからだ。「今は武力行使に出る口実もなく、陳水扁氏は十分に善意を表しているので、厳しい言葉で批判することもできません。そのため副総統の呂秀蓮氏を批判して気を晴らしているのです」劉必栄教授は、選挙前からの雰囲気の影響で、今の両岸関係は春雷が落ちそうで落ちない「うっとうしい」状況にあり、両岸ともに「一歩退く」必要があると言う。
陳水扁総統の就任演説での両岸関係に関する内容には「一歩退く」効果があった。陳総統は「中共に武力行使する意図がない限り」台湾は「独立を宣言せず、国号を変更せず、二国論を憲法に盛り込まず、統一か独立かといった現状の変更に関わる住民投票も行わず、また国家統一綱領と国家統一委員会も廃止しない」とし、中共が望まない5項目について「五つのノー」を示した。中央研究院欧米研究所の林正義所長によると、これはアメリカの中共政策と同様のもので、これに対してクリントン大統領は、陳総統の主張は「現実的かつ建設的」だとし、両岸関係に新たな契機がおとずれることを期待すると語った。
だが、両岸に「全く新しい」スタートを期待するというのは楽観的すぎる。政府大陸委員会の蔡英文主任委員は、今後は二度と「特殊な国と国との関係」は持ち出さないとしているが、客観的情勢が変らない中、新政府の政策が過去の李登輝総統の政策と完全に「分断」される可能性は低いとしている。現在「全民政府」が両岸政策においてしなければならないのは、国内と対岸の双方でコンセンサスを得ることだ。蔡英文主任委員は、国内におけるコンセンサスを得るのは難しくないと言う。総統選挙の際に主要候補数人の両岸政策に大差はなかったからだ。今しなければならないのは、政策をより具体化させ、膠着した現状を打開することだ。この点で、アメリカに仲介役を求める期待が高まっている。
しかし、アメリカに介入を求めるのは容易なことではない。アメリカは、国共内戦やベトナム戦争など、アジアにおける仲介役としての失敗の経験があるため、その意欲は高くないのである。オルブライト国務長官も記者の質問に答え、アメリカは仲介者にはならないと明確に表明している。
ワシントン・ポストの報道によると、蔡英文氏は「我々には橋渡しに協力してくれる者が必要だ」と暗示し、アメリカがどのように協力すべきかという点については「創意が必要だ」と語ったという。新政府は両岸関係において新たな局面を打開することを望んでいる。蔡英文氏は、新政府の大陸政策は経済貿易を主軸としており、WTOに加盟すれば両岸関係は必然的に変化するため、将来的に戒急用忍政策(対大陸投資抑制策)は調整しなければならないと述べ、経済貿易面での大量の交流によって両岸間の良好なコミュニケーションと対話が促進されるだろうと述べている。
長年にわたり、両岸は政治や経済面での交流において、それぞれ異なる考え方をしてきた。中共は「経済を利用して統一を促す」ことを考えており、一方の台湾政府は、台湾企業の大陸進出が急速に進むことによって台湾経済の根が失われることを心配してきた。そのため三通(直接の通商・通航・通郵)を開放せず、戒急用忍政策や南向政策(南方への投資促進)などを打ち出し、台湾企業の大陸への投資を抑制してきた。両岸はともに経済を手段として、政治的目的を達成しようとしてきたのである。
中華経済研究院の研究員である馬凱氏は、これまで両岸は経済面で共に大きな間違いを犯してきたと言う。中共側の間違いは、政治と経済は不可分だという点を見逃してきたことである。中共は経済的には台湾企業を取り込みながら、政治面では台湾政府に圧力をかけてきた。しかし「北風と太陽」の物語のように、中共が政治的な手を緩めないと、台湾側はますます警戒心を抱いて慎重になり、経済面でも保護の外套を脱ごうとしなくなる。
一方の台湾側が犯してきた間違いはと言うと、馬凱氏は、自信が欠如している点だと言う。台湾企業が数十年にわたって蓄積してきた経験は貴重な資本と言え、台湾はかねてから日本のように経済的に外へと展開していく機会を追求してきており、今まさにその機会が訪れている。これまで「三通」に関しては、中共側が求め、台湾側は拒んできたが、今後両岸がWTOに加盟すれば、三通は必然的に実施しなければならなくなる。今、台湾企業の大陸投資を制限すれば、台湾経済が外へと発展していく機会そのものを制限することになってしまうのである。
陳水扁氏もこの点に着目し、総統就任前に閣僚が一同に会した「新首長聯誼会」の席で、昨年9月に台湾の美僑商会(アメリカ商工会議所)が発表した台湾年度リポートを引用し、台湾経済の最大の障害は政府自身にあり、その問題には治安、黒金、両岸関係などが含まれると指摘した。また陳水扁氏は総統就任式の翌日に金門島を視察し、国の安全が確保されるという前提の下で、新政府は市場の法則にしたがい、互恵と比例の原則にのっとって「三通」政策を検討すると語った。「三通」と、地域を限定しての「小三通」は現在行政院で緊急に検討されている。
新政府は経済貿易を将来の両岸政策の主軸としており、また両岸関係と密接に関わる外交政策の上では「人権外交」をアピールしている。
陳水扁総統は就任演説においても、かなりの時間を割いて人権擁護の決意を述べ、大きく注目された。
陳水扁氏は、中華民国は「世界人権宣言」「市民的および政治的権利に関する国際規約」、ウィーン国連世界人権会議で採択されたウィーン宣言・行動計画などを遵守すると述べた。また新政府は立法院に対して「国際人権規約」の批准を要請し、それを国内法化して、正式な「台湾人権規約」としていきたいと語った。国内にも国家人権委員会を設立し、国際的な非政府組織である「国際規約人権委員会」や「アムネスティ」などに、台湾で各項目の人権保護措置が実施できるよう協力を依頼したいと語った。
新政府が人権擁護を強調するのには理由がある。総統・副総統である陳水扁氏と呂秀蓮氏を含む民進党の中心人物の多くが、かつて投獄された経験があるからだ。陳水扁氏は就任前に、かつて政治犯として投獄されていた柏楊氏や物理学者の孫漢観氏らを訪ね、台湾では今後二度と政治犯や表現の自由への弾圧がないようにしたいと語った。だが残念なことに、外部の人々は、これは新政府の「人権外交」としてのみ解釈されている。
香港の「文匯報」紙は、中共外交部(外務省)官僚の談話を引用し、台湾は外交上「人権」をアピールすることで、中国大陸の人権の現状に意見のある西洋国家の支持を得ようとしていることを中共は見抜いていると報じた。
だが実際には、新政府の外交政策は人権を強調するだけのものではない。新任の外相である田弘茂氏は記者会見の席で、今後外交部の仕事は、人権外交の推進、第二のトラックを通しての対話、非政府国際組織への参与などを重点とし、継続して国連への加盟も推進していくと述べた。また正式な国交のある国との間では、陳水扁総統が各国を訪問するという形を通して、友好関係を維持していきたいと語った。
この「人権外交」に関して、中正大学政治学科の辛翠玲助教授は次のように分析する。国際的な人権外交は、冷戦後に西洋諸国がイデオロギー対立という外交方式に修正を加えて生じたもので、人の生存と尊厳を基礎とし、人道的関心と国家利益を技術的に一体化させたものである。
しかし辛助教授によると、人権外交は世界の現実においては一つの「道具」とされており、多くの国は、自国の利益を優先的に考慮して、人権外交を行なうかどうかを決めているという。そのため、新政府のこの新しい方法が国際社会からどれだけの支持を得られるかは、まだわからないと辛助教授は言う。
両岸と外交の問題の他に、新政府は内政上の問題にも取り組まなければならない。まず最初に解決しなければならないのは、経済発展と環境保全をどう両立させるか、つまり「第四原子力発電所」の建設を継続するか否かという課題である。
これまで民進党は環境保護運動と密接な関係を維持してきており、「第四原子力発電所建設反対」は党の綱領にも明記されている。この問題に関して、民進党主席の林義雄氏はかつて、新政府が第四原子力発電所建設に反対しなければ、党の規則に反することになるが、陳水扁氏は、党の綱領を改正するという方法で解決することは可能だと語った。
党の規則に反するという発言に関して、陳水扁氏と林義雄氏はそれぞれ善玉と悪玉を演じ分け、新政府の困難を解決しようとしているのではないかと言う人もいる。いずれにしても、初めて政権を取った民進党が「役割の変化」という大きな試練に直面していることがうかがえる。
台湾の反原発運動と民進党との結びつきは十数年にわたるもので、陳水扁氏の総統当選は、反原発団体の人々の士気を大いに高めた。5月13日、いくつもの環境保護団体の数千人が街頭に繰り出し、「台湾の子は反原発で台湾を救う」「台湾人は阿扁(陳水扁氏の愛称)とともに反原発側に立つべきだ」などのスローガンを掲げ、デモ行進は数百メートルにもおよんだ。
反原発派の人々は、陳水扁氏に選挙での公約を守るよう求めている。しかし第四原子力発電所の建設をストップさせると、台湾は電力不足という問題に直面することとなり、また民進党は「反企業」というイメージを抜け出せなくなる。新政府が、この問題において民意にかない、なおかつ台湾に利益となる決定をどう下すか、各界が注目している。
台湾で長年議論されてきた第四原子力発電所の問題について、馬凱氏は、これまでの原発問題の議論は「でたらめ」だったと指摘する。反対団体と台湾電力側がそれぞれ主張の根拠とする理由やデータには、まったく一致する点がなかったのである。そのため馬凱氏は、まず経済部(通産省に相当)が正確かつ透明な情報やデータを示す必要があると言う。各種発電方法の原価評価や電力需要、そして天災人災によるリスクの評価などを提示する必要がある。
経済部長(通産相)の林信義氏は、第四原子力発電所に関しては、まず資料を公開し、建設賛成派と反対派の主張をインターネットで公開し、相互の討論を通してコンセンサスを得ていきたいとしている。また最終的には住民投票という形で国民が決めることも可能だと述べた。
また林信義氏は、この原発問題を通して、経済部は国内産業とエネルギーの問題を全面的に検討し直すことができるとしている。エネルギーや水の消費量が多く、生産価値の低い産業を今後も拡大させ、あるいは維持していくべきかどうかという問題も合せて考えていくということだ。
一方「台湾反原発の父」と呼ばれる林俊義氏が新しく政府環境保護署の署長に就任し、環境保護団体は大きな期待を寄せていた。しかし林俊義氏は、第四原子力発電所建設問題に関して、やや曖昧な表現を用い、原発に関しては政治、経済、社会、文化などの「社会的コスト」を全体的に総合して考える必要があると述べた。そして環境保護団体の人々を驚かせたのは、林俊義氏が立法委員の質問に対して「過去の反原発は独裁に反対するためだった」と答えたことだ。現在すでに権威体制は崩壊したのだから反対の必要はない、と言うのであろうか。
陳水扁氏は、林信義経済部長が新たに評価し直すとしたことを支持し、3ヶ月以内に評価を終え、4ヶ月以内に立法院に報告するという期限を定めた。また陳水扁氏は台北市長在任中に新交通システム(MRT)の問題を処理した時の方法を例に挙げて次のように語った。陳氏の選挙期間中の政見はMRTに反対するというもので、その約束を守るためには建設中のMRTを取り壊さなければならなかった。しかし陳水扁氏はそうせず、内外の専門家にMRTの総点検を依頼し、最終的には補強して改善するという方法で問題を解決したのである。
だが民進党の大老である施明徳氏は、反原発は党の綱領でもあるのだから、新政府はそれを守るべきであり、新たに評価し直すというやり方は、すでに決意が揺らいでいることを示していると批判する。しかし、他の民進党立法委員の多くは、開放的なやり方を支持している。
立法委員の林濁水氏は、陳水扁氏の政府は少数派の政府なので今後も党の綱領と実際の考慮の間で矛盾が生じる可能性があるとして、問題解決の最良の方法は「住民投票」を行なうことだと提案している。住民投票については、この原発問題が最良の試金石になると言う。
しかし「住民投票」に関して、台湾にはまだ法的根拠がなく、実施するのは難しい。国民党の立法委員である李先仁氏は、新政府の第四原子力発電所問題処理の方法を悲観している。原発については過去にも公聴会などが開かれたが、公開討論の形では問題は解決できず、それを住民投票によって決めるのは良くないと李氏は言う。「住民投票の結果は一でなければ二というもので、今後、国の重大事項を全て住民投票に付するという可能性も出てきます。陳水扁氏は、統一か独立かの問題を住民投票に付すことはないと言っていますが、それを求める声は出てくると思われ、そうなると、両岸の平和に直接影響します」と言う。ましてや、原発にしろ住民投票にしろ、すべて立法院での可決が必要なのである。
新内閣のメンバーは専門性や人となり、性別のバランスなどの面で、各界から高く評価されているが、「クリーンな政治」を掲げる閣僚の多くは学者出身であるため、行政院では「先生」と呼ぶ声が絶えないのではないかと皮肉る声もある。読書人が政治に携わるとなると、妥協しない理想主義と行政経験の不足が施政上の問題になることはないだろうか。マスコミは「寄せ集めの部品で作った車」という表現で新内閣を形容しており、また新党の立法委員である郝龍斌氏は、新内閣は「肯定できるが、高い業績を上げるとは見られていない」と言う。
林濁水氏は、民進党の立法委員も唐飛内閣が政局安定のためだけの「過渡期の内閣」ではないことを望んでいると言う。立法院で多数を占めるのは国民党だが、国民党所属立法委員の立場も一致しているわけではない。また初めて政権の座についた民進党の立法委員も、党と政府との間での危機解消の方法に慣れていない。今回、行政院長の唐飛氏が病を押して立法院での質疑応答に立たなければならなかったことなども、氷山の一角に過ぎず、新内閣の前途がどうなるかはわからない。
国民党所属の立法委員である李先仁氏は、何事もあらかじめ立場を決めるべきではなく、立法院は議題によってそれぞれ処理していくべきだと言う。立法委員にはそれぞれ政見や公約があるので、重要な議題については立場を堅持するが、支持すべき法案は支持していくと言う。
立法院における新内閣への質疑は始まったばかりだ。党派や地方の利害など複雑な背景を持つ立法院が、新内閣をどのように監督していくかは、行政院の新人の施政や民意によって決まってくる。しかし、新首長聯誼会はすでに6項目の優先すべき社会的議題を決めている。それは「中央統括分配税金の分配比例の問題」「第四原子力発電所の後続建設案」「美濃ダム建設案」「浜南工業区開発案」「中正空港から台北への新交通システム建設計画案」「全民健康保険財物状況」の6項目で、これらに関しては立法院の支持を要請し、順調に法案を成立させたいとしている。
5月24日、行政院長の唐飛氏は新内閣初めての行政院会を開き、今後の施政の六大目標を発表した。それは、国の安全保障を確保して両岸関係を改善する、黒金を徹底的に一掃して国民の福祉を向上させる、大地震被災地の再建を加速して美しい島の姿を取り戻す、産業の基礎を固め再び経済の奇蹟を起す、教育改革を着実に実施し文化建設を強化する、行政改革を推進して行政効率を高める、というものだ。
これらの中でも最も切迫しているのは、両岸関係、黒金の一掃、被災地の再建である。実際、新旧政府の交代の時期にも、華隆グループ、台開信託、中興銀行などで次々と不正信用保証や不正融資、経営悪化などの問題が表面化し、金融体質の問題がすでに明らかになっているため、早急な検討が必要だ。政府経済建設委員会の陳博志主任委員は、金融体質の悪化の程度は人々の目に触れている状況より、ずっと深刻だと認めている。
金融体質の悪化にも原因はあるが、暴力団の横行や地方派閥の政治的力の介入などの影響が極めて大きい。黒金問題は、国民党が政権を失った原因の一つであり、同時に新政府にとっての最大の課題でもある。唐飛氏が行政院長に就任してまず最初に指示したのは、全力を挙げて黒金を一掃するというものだった。法務部(法務省に相当)も、内政部(内政省)と国防部(国防省)の関係部門を集めて、黒金一掃の計画に取り組んでいる。
新任の法務部長(法相)である陳定南氏は、将来的に「廉政署」と「黒金捜査行動センター」を設立するとしており、北部、中部、南部の三ヶ所に事務所を置いて、黒金の一掃に取り組むことにしている。また暴力団関係者が選挙に出て議員になることを防止するための法案作成も予定している。
陳定南氏は、暴金一掃のために最も重要なのは国民の観念だと言う。国民が公務員の汚職行為を認識できるように、法務部はボランティアを募ってコミュニティでの手がかり発見に取り組むことにしており、また「黒金反対カード」を発行するとしている。
しかし、前交通部長(運輸相に相当)の林豊正氏は、国民党も黒金一掃に努力しなかったわけではないと言う。ただ、これには制度面から着手する必要があり、そのために政党法、公職人員財産申告法、政治献金法などによって公職者と企業や暴力団との関係に規範を定めようとしてきた。国民党はこれら関連法案を提出してきたが、立法院で「座礁」したのである。したがって、黒金問題を解決するには、行政と立法とが手を取り合って努力しなければならない。
新しい時代はすでに到来した。台湾で実現した政権交代は、中華民国史上初めてのことであるだけでなく、世界の華人社会においても一里塚と言えるものだ。かつて厳重に警戒されていた総統府前の介寿路も、今はにぎやかなケタガラン大道となり、小作農家に生れた子供が国家元首となった。台湾の人々は、両岸関係、経済、黒金、環境保全、政治生態、マスメディア運営などの問題の早急な解決を待ち望んでいる。そして新しい政府の「クリーンな政治」の下で、十分な討論がなされ、皆がともに向上していけることを願っているのである。