漁獲量の周期性
夜になると、東北角の海岸からは漁火が見える。光に集まるイカの習性を利用した漁が行なわれているのだ。
廖正信さんによると、1960年から現在までの漁業統計を見ると、イカの年間漁獲量は15~20年周期で増減を繰り返しているが、漁獲量が少ない時期がしだいに長くなっているという。
1997~2003年の間、漁獲量が激減した原因の一つは1997~1998年のスーパーエルニーニョ現象だ。東太平洋の海水温が平年より大幅に高くなったのである。その後、続いてラニーニャ現象が起き、3~4年にわたって地球規模で海洋の異常現象が見られた。本来は異常な現象が、現在では頻発するようになったのである。
もう一つの原因は、中国の経済成長だ。これによって中国漁船が東シナ海で大量にイカを捕るようになり、それが台湾の漁獲量に影響をおよぼしている。中国では2003年、集魚灯を使った敷き網漁船は2隻しかなかったが、2007年にはそれが130余隻まで増加した。
2018年には、台湾のイカの漁獲量は5000トン未満まで落ち込んだ。そこで、サクラエビのように漁獲量のクオータ制限をしてはどうかという提案も出てきた。
しかし、廖正信さんはこれについては意見を保留している。その話によると、イカやタコなどの頭足類が人類と違うのは、イカは生まれてからずっとひたすら餌を食べ続け、どんどん長く大きくなっていくことだという。人間は一定の段階まで成長するとそれ以上背が伸びないのとは違うのだという。
「このような資源を利用しなければ、彼らは死んでしまうだけです」と話す廖正信さんは、それよりも産卵場を保護する方が根本的な解決策になると考えている。
漁業署は2019年に「イカ棒受網漁業管理弁法」を公布した。イカの産卵期である春と秋に、台湾の北方三島(基隆の北方沖の3つの島)で各1ヶ月の禁漁期を設けるというものだ。その後のデータを見ると、禁漁を実施した後の2019年には漁獲量は下げ止まり、そこからやや回復していることがわかる。

生まれて初めて魚を釣り上げた時に、誰もが最初にするのは記念撮影だ。