医薬が発達して人工的延命も可能な時代、長い人生を、いかに健康に美しく生きるかが現代人の目標となり、抗酸化、アンチエイジング、ガン予防、血脂低下などの効果を謳うさまざまな「健康食品」が売られている。
すでに現代人の必需品となったかのような「健康食品」は本当に効果があるのだろうか。落とし穴や誤解はないだろうか。
1974年生まれ、長庚生技公司で働く陳静雯;さんは、仕事が忙しくて食事に気を使えないので「保健食品」に頼っている。会社のデスクには、月見草油、CoQ10、カテキン、冬虫夏草、霊芝、スピルリナなどのサプリメントが一列に並び、毎日順番に飲んでいる。「肌もきれいになったし、元気になったような気がします」と話す彼女は、月に3000元ほどで健康が買えるなら安いものだと言う。
40代、スポーツもせず、食事にも気をつけていない李さんの家の冷蔵庫を空けると、各種のビタミン剤、グレープシード、カテキン、霊芝などの他に、名前も効能も忘れてしまったサプリメントが詰まっている。大金を投じて買い集めた「健康の願い」は、彼女がしばしば口にするダイエットと同様、継続したことはなく、数日飲んでは忘れてしまい、後は冷蔵庫にしまわれたままである。「ちゃんと続けて飲まないんですが、ついついまた買っちゃうんです」と恥ずかしそうに言う。

薬で補うより食で補う方がいい。現代の「健康食品」は伝統の「医食同源」を具現化したものとも言える。
健康ブーム
「ワインは心臓にいい、チョコレートは大脳の働きを助ける、コーヒーで心血管の病気を予防できる」など、飲食に関わる一面的な誤った情報が氾濫している。これらの説は、見方や立場を変えれば違う言い方になるし、今日発表された医学報告が明日は覆されることもあり、何を信じていいのかわからなくなる。
例えば、昔から「水をたくさん飲むのは身体に良い」と言われてきた。しかし、そうではないと言う人もいる。
「暇があったら水を飲め、というのは間違った考えです」と話すのは台湾大学食品科学技術研究所の江文章教授だ。水を飲みすぎれば心臓と腎臓の負担が増し、むくみが生じると言う。「体重60キロで普通の運動量の人に必要な水分は1日約2000cc、日常の食事にも水分が含まれているので、300ccのマグカップに8杯というのは多すぎます」と言う。
健康な食生活に関する説はさまざまだが「現代の食事はバランスが悪く十分に多様な栄養が摂れないため、身体の機能が退化し、健康状態が悪化する」という認識は一致している。このような状況で特定栄養素の含有と効果を標榜する保健食品が売れ、その需要はますます高まっている。
ドラッグストアの陳列やテレビの通販番組を見れば、今どのようなサプリメントが流行しているのかすぐに分かる。
ナットウキナーゼ、霊芝、サメ軟骨、スピルリナ、レシチン、グレープシード、プロバイオティクス、ニンニクエキス、イワベンケイ、コエンザイムQ10など、数え切れないほどの商品があり、メーカーは次々と新商品を打ち出して消費を刺激する。
「台湾は華人市場の窓です」と話すのは中華民国健康食品協会の楊燿銘理事長だ。台湾は人口も国民平均所得も十分なので、健康食品の良好な試験市場とされている。また台湾人は新しいものが好きなので自ら実験台になる。そこで外国で新しい健康食品が発売されると、企業はすぐにそれを導入して市場の反応を見る。楊燿銘さんによると、その商品が世界の華人市場でヒットするかどうかは、台湾で半年間テストすれば分かるそうだ。
いま最も良く売れているナットウキナーゼもその一例だ。
ナットウキナーゼは納豆の糸に含まれる酵素で、山芋のネバネバと同様に血栓を溶かす作用がある。日本でこの抽出に成功して商品化されると、台湾はすぐに輸入し、テレビの通販番組やネット、ドラッグストア、新聞雑誌などで盛んに紹介された。ここ2年ほど最も多くの人に知られる健康食品で、1粒10数元と高い価格で売られている。
もう一つ最近注目されているのはプレラリア・ミリフィカだ。これはタイで昔から食べられている食材で、最近日本と台湾で注目されている。乳腺の発育を促進すると言われ、60錠入りの1瓶が1000元近くと高価だが、売行きは悪くない。
一般の消費者はあまり知らないが、実は上述の各種食品は、台湾の法令では「健康食品」とは呼べず、せいぜい「保健食品」と呼べる程度である。保健食品は政府の認証を受ける必要はないが、健康促進の効能を宣伝することはできず、一般の食品と同等に扱うしかない。言い換えれば、身体によいかどうかはまったく保証されていないのである。

保健効果と治療効果
では「健康食品」「保健食品」とは何なのだろう。
衛生署が1999年に定めた「健康食品管理法」では「健康食品」を「保健効果を有する食品」と定義している。保健効果とは健康増進や病気になるリスクの低減を意味し、しかも科学的証拠が示せるものでなければならないが、病気の治療や矯正といった医療効果に属するものではない。
保健効果はあるが、医療効果を持つものではないということだ。
こうして「健康食品」という言葉は法律用語となった。衛生署食品衛生処の審査に合格し、認証を受けた製品のみ「健康食品」と呼べ、そうでないものは「保健効果」を宣伝することはできない。審査を経ていない保健食品は保健効果を謳うことはできず、これに違反すると200万元の罰金が科せられる。
衛生署は、国民のために健康食品の安全性と有効性を審査しているが、立法から8年後の今日まで審査に合格したのは88件のみ、日本の600件、中国の3000余件と比べても少ない。
衛生署が認可した「健康食品」の一覧を見ると、驚いたことに7割がチキンエッセンス、ヨーグルト、茶飲料、オートミール、食用油など日常の食品で、一般にイメージする抽出エキスのサプリメントとは大きな開きがある。
健康食品協会の楊燿銘理事長の試算では、台湾市場に出回っている認証を受けていない保健食品は2000点を超える。公平取引委員会と工業研究院の試算では、台湾の保健食品の市場規模は250億台湾ドルに達し、業界の試算では400億近い。多くの人が高くても買う価値があると思っているこれらの保健食品の多くが認証を受けていないのである。

「健康食品」の認証マークがついた商品こそ、国が保証する健康促進効果のある健康食品である。
健康食品と保健食品
では、これらの「保健食品」はなぜ「健康食品」の認証を申請しないのだろうか。
「一般の業者はハードルが高すぎると感じるようです」と衛生署食品衛生処の謝定宏さんは言う。手続には半年ほどかかり、安全性や効果を審査するほか、健康食品の認証を受けたら広告表現にも規制があり、かえって制限を受けてしまうのである。
「主な要因は、メーカーが実験に経費をかけたがらない点にあります」と楊燿銘さんは言う。認証準備のためには1〜2年の時間と200〜400万元の費用をかけて実験しなければならないが、台湾の保健食品の流行寿命が2年ほどなのを考慮すると、これではビジネスにならない。
また、衛生署が申請を受理する「保健効果」項目も限られている。現在は消化器の健康、血脂調整、歯の保健、血糖値調節、老化抑制、肝臓保護、疲労回復などの11項目だけで、それ以外の効果のものは申請できない。多くの人がガンや心血管に不安を抱いているため、企業は腫瘍抑制や血栓予防などの健康食品を開発するが、これらの項目は申請できない。
謝定宏さんによると、申請項目が限られているのは、人体の機能が微妙で複雑に絡んでいるのに「健康」という一言が誤用・濫用されると、消費者を誤った方向へ導いてしまうからだという。
例えば「男性の性機能増進」の場合、性機能増進が人類の追求する「保健」の範疇に属するのかどうか定説がないので、この項目は受け付けない。また、ガン細胞抑制という項目がないのは、ガン細胞を抑制する成分はしばしば正常な細胞も傷つけるからで、動物や人体の試験を行なえない状況では認証はできない。需要の大きいダイエット効果についても、肥満の原因は人さまざまで一つの商品で全員が痩せられることはないというので、この項目も受け付けていない。

衛生署の審査に合格した健康食品の多くは日常の食品で、一般にイメージする高価なサプリメントとは違う。
知らなければ危険
保健効果を謳うことのできない「保健食品」だが、マルチ商法やテレビ通販、スーパー、ドラッグストア、ラジオなどのルートで盛大に露出しており、すでに各家庭に深く入り込んでいる。そこで消費者の参考のために、現在の保健食品が持ついくつかの落とし穴を挙げる。
落とし穴1:成分は有効でも商品が有効とは限らない
台湾大学食品科学技術研究所の江文章教授によると、市販の保健食品の中には有効成分が少なすぎるもの、成分と規格が一致しないもの、他の成分の影響で効果が期待できないものがあるという。
例えばニンニクエキスの場合、ニンニクの有効活性成分は、コレステロールを下げて心血管の病気を予防できるが、空気にさらされると酸化し、高温では作用しなくなるなど、抽出過程で破壊されることが多い。したがって、自分が飲んだニンニクエキスのカプセルに効果があるのかどうか、消費者にはわからないのである。
コレステロールを下げ、脳の機能を強化するとされるレシチンは、原料に大豆と卵の2種類あるが、大豆から抽出できる成分は少なくて効果が劣るのに対し、卵のレシチンは純度が高い。しかし卵油に包まれていて一緒に飲み込んでしまうため、コレステロールが下がるとは思われない。
和信がんセンター病院薬剤科の陳昭姿主任は「レシチンを薬にしても効果はありませんし、食品にするには高価すぎて、お金を出してカロリーを買っているようなものです」と言う。
落とし穴2:「天然のものが一番」?
多くの人は「天然のものが一番」と思っているので、天然食品と聞くと、無害で身体に吸収されやすいと思う人が多い。しかし、実際はそうとは限らない。
「私たちの身体には、天然のものと化学合成物を判別する能力はありません」と和信病院の陳昭姿主任は言う。保健食品を買う際に注意すべきなのは「純度」が十分かどうか、有害物質は含まれていないか、という点で、天然かどうかは二の次だ。昨年、消費者基金会が市販のアガリクスを検査したところ、カドミウムが含有されているものがあった。飲み続ければ中毒に至る可能性もある。
「こうした問題は業界がきちんとチェックし、原料を慎重に選ばなければなりません」と楊燿銘さんは言う。効果は別としても、少なくとも安全性は確保しなければならない。必要な成分は含まれ、あってはならない成分は含まれていないことが大切だ。健康食品協会は消費者を守る機能を発揮するために安全性の審査を行なっているが、成果は上がっていない。現在のところ、協会の審査を申請して合格した商品は10点に満たないのである。
落とし穴3:こちらを立てればあちらが立たない
一般に保健食品の特殊成分含有量はかなり低く抑えられており、大量に飲まなければ人体に重大な傷害をもたらすことはない。ただし、何かの利になるということは別の何かの不利になるということで、その利害は自分で判断しなければならない。
例えば深海魚油EPAは中性脂肪を減らし、血小板の凝集を抑えて卒中を予防する。しかしこれを大量に摂取すると、血液凝固に時間がかかり、事故に遭って出血した場合、血が止まらなく恐れもあると陳昭姿さんは指摘する。アメリカの心臓病学界では、医師の指示なくEPAを摂るべきではなく、服用者は定期的に検査を受けるべきだと提案している。
また、人によって身体の状態が異なるので、流行を追って無闇に服用するのも考えものだ。最近は、シジミエキスが流行しているが、これも誰にでも合うわけではない。シジミエキスには肝臓で代謝されて尿酸になる「プリン体」が多く含まれているので、痛風の傾向がある人は飲むと症状を悪化させることになる。
落とし穴4:指示にしたがって服用する
保健食品には特殊成分が含まれているので、一般の食品のように気の向くままに服用してはならない。例えば、緑茶のカテキンには抗酸化作用があり、身体の活性を高めるが、これは他の食品と分けて服用しなければならない。
「カテキンには酸化還元作用があるので、他の保健食品や薬品と一緒に服用すると、その効能を中和させてしまいます。漢方で、緑豆には薬効を中和させる働きがあるので薬と一緒に食べてはいけないというのと似ています」と長庚生物科技公司の高啓震ディレクターは説明する。
グレープシードは空腹時に飲んだ方がよい。食物中のタンパク質がグレープシードの吸収を悪くするので、食後に服用したのでは効果は期待できないのである。
落とし穴5:謳われる効能が変わる?
多くの保健食品は厳格な試験を経ずに慌しく発売され、問題が出たら違う売り方を考える。また、薬品としての厳格な審査に合格できないものが保健食品の名で販売されることもある。
例えば、サメにはガンがなく、軟骨には血管新生抑制作用があると言われ、以前「サメ軟骨」はガンを抑制すると謳って販売されていた。しかしその後の実験で効果が限られていることが分かり、最近は関節に良いという謳い文句で売られている。
腸内の脂肪と結合するという「カテキン」は、当初はダイエット効果やコレステロール低下、消化機能の改善などの効果があるとされていたが、その後、人体はそれほど多くのカテキンを処理できず、ダイエット効果はあまり期待できないことがわかり、今度は関節炎に効く「可能性」があると言うようになった。
一時期大流行した後、忘れられていくものもある。
例えば、「プロアントシアニジン」が豊富なグレープシードは老化防止効果を謳って流行したが、期待したほどの効果はないというので下火になった。「老化に逆行するなど、簡単なことではありません」と話す楊燿銘さんは、老化のスピードを抑えられるだけでも悪くないと言う。ここからも分かる通り「保健」は時間をかけるべきものだが、消費者は即効を求め、数ヶ月の服用で一生の効果を期待してしまう。

衛生署の審査に合格した健康食品の多くは日常の食品で、一般にイメージする高価なサプリメントとは違う。
医食同源
保健食品が注目され、買わなければ不老長寿のチャンスを放棄するかのようにさえ思われるが、台湾大学の江文章教授は「最も重要なのは食生活」と言う。バランスの取れた三食こそ健康の源なのである。いい加減な食事をしておいて、健康の希望を健康食品や保健食品に託すのでは本末転倒だ。
「健康食品は『医食同源』の実践です」と話す江教授は、保健食品の一部の効果は否定しない。ただ、消費者は闇雲に流行を追うのではなく、自分に何が不足しているのかを理解して、その不足部分を補う保健食品を選ぶべきだと注意を促す。「保健は自分の責任なのですから」と言う。
保健食品が効いたという経験談や伝説は多数あるが、結局のところ、厳格な試験を経た薬品ではないし、体質改善や症状緩和の効果が保証されているわけでもない。病気になったら、食品の効果に頼るのではなく、やはり病院で診てもらうことが大切だ。
大部分の現代人の健康状態は「黄信号」と言われる。保健食品を服用するかしないか、何を選び、どう飲むか、すべての判断は自分自身にかかっている。



ブラジルやペルーで採れるアガリクスは高分子多糖類を豊富に含むというので世界中で大流行しているが、生長時に土壌中の重金属を吸収しやすいため、消費者は慎重に選ばなければならない。



