若い世代による刷新
1990年代後半には製造業の海外移転により、鶯歌の景気も悪化、さらに起こったアジア通貨危機も追い打ちをかけ、陶磁器業者は何とかしなければと策を講じ始める。それが、在庫を売りさばくために、主に輸出していた製品を内需市場へと方向転換することだった。彼らが協力して駅前で開催した「鶯歌陶磁器カーニバル」は大きな反響を呼び、これより鶯歌は観光へと大きく舵を切っていく。
そして1997年には経済部(経済省)の後押しで尖山埔路が歩行者天国になり、1999年には古い商店街が新たなショッピング街へと生まれ変わった。
だがそれでも産業衰退の波を食い止めるのは容易ではなく、現在、鶯歌に残る工場や工房は100に満たない。親から受け継いだ家業をいかにして存続・回復させるかは、後継者たちの大きな課題となっている。
2019年、経済部と台湾設計研究院が共同で推進した産地活性化プロジェクト「T22設計振興地方産業計画」は、現状を打破する契機となった。同プロジェクトは異業種連携を通じ、メーカーそれぞれの強みを結びつけるものだ。例えば、6社が連携して3チームを作り、それぞれが有名レストランの食器をデザインしたほか、新旺集瓷は日本の中川政七商店と提携し、新たなブランド「許家陶器品(Koga)」を共同で立ち上げた。
「まるでぬるま湯につかって徐々に茹でられていくカエルのように、もしこのまま何もしなければ、遅かれ早かれこの産業は消えてしまう」というのが、後継者たちの長年の懸念だった。そこで2023年、「新旺集瓷」「台華窯」「安達窯」「陶聚」「傑作陶芸」「新太源」の後継者が集まり、「陶次瓦代代合作会(陶芸次世代協力会)」の結成を発表した。
例えば彼らは、日本の「燕三条 工場の祭典」(ものづくりの現場を見学・体験できるよう、地元の工場を一斉に開放するイベント)を手本に、伝統工芸と観光を組み合わせたイベント「鶯歌産地開放日」を開催している。そこでは陶磁器市が開かれるほか、訪れた人が工場見学したり、「鶯歌宴席」の客として招かれるなど、ほかとはひと味違った体験ができるイベントになっている。
陶磁器産業は比較的保守的な伝統産業だと言える。200年前を振り返ると、製陶技術は特定の一族だけが握るものだった。現在でも年配の製陶業者の中には、「同業者を自分の職場には入れない」という考え方が根強い。「だから、今やっている工場の開放というのは、まさに『大変革』なのですよ」「頭が固くなって、人の言うことに耳を貸しませんから」と、2~4代目である彼らは自嘲気味に語る。
しかし、鶯歌の盛衰や苦労を目の当たりにしてきた継承者たちが望むのは、ともに歩める未来という前提の下で、突破口を見出し、故郷のために持続可能な発展の道を見つけることだ。互いに手を携えることで、これまで200年続いてきた鶯歌の陶磁器が、世代から世代へと受け継がれていくようにと。
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鶯歌陶磁博物館の常設展「今までの歩みを振り返る」と「陶器の町」では、地元の陶磁器文化がわかりやすく展示されている。
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創業100年、すでに4代目となる許家が開設した博物館では、昔の製陶機具や復刻された「丹青碗」が展示されている。
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転写絵付けを得意とする「新太源」は、印刷技術によって図柄を転写する。工場開放日に行けば、珍しい機械類のほか、独自の技術で図柄をタイルに印刷し、それらをつなげて大きな装飾品にするといった優れた職人技が見られる。
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「鶯歌の故宮」と称される「台華窯」は、絵付けと彫金技術を組合わせ、伝統的な形の器にきらびやかさを加えた。工場開放日には、職人の卓越した絵付けの技が見学できる。(林格立撮影)
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陶磁器産業は比較的保守的な伝統産業だが、時代の変化とともに新たな姿を見せ始めている。写真は陶芸工具専門店「釉薬堂」。陶芸家の呂景輝さんと蔡美如さん夫妻が始めたこの店は、まるで美術用品店のように、台湾製の様々な陶芸工具を販売する。配合成分を明示した釉薬試作品も陳列されており、これは一種のオープンデータと言えよう。
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工場開放日の「鶯歌宴席」は席についた客順に食事をして帰る方式で、料理長によるメニューの数々が、「安達窯」の青磁、「新旺集瓷」の陰陽碗、「楽陶陶」の書の文字があしらわれた食器、「新太源」の転写絵付け食器などを用いてふるまわれ、優雅な台湾文化を体験できる。(社団法人新北市陶次瓦代代合作会提供)
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鶯歌の工場開放日に、200年にわたる台湾陶磁器の歴史を探訪する。(社団法人新北市陶次瓦代代合作会提供)
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鶯歌陶磁産業の後継者たちは「陶次瓦代代合作会」を結成したことで、業界の相互協力と次世代への継承を願う。左から、「釉薬堂」創業者の蔡美如と呂景輝、「新太源」2代目の王升、「台華窯」COOの呂家瑋、「傑作陶芸」董事長特別補佐の許恕維(敬称略)。