高齢化は世界的な現象で、第二次世界大戦後に生まれたベビーブーム世代が65歳を迎えつつある。人口構造の変化は社会に大きな衝撃をもたらす。
経済建設委員会の2011年の統計によると、台湾の高齢化レベルは、今は世界48位だが、22年後には日本を超えて世界トップになると見られる。
高齢者ケアの負担を低減するために、2002年、WHOは「アクティブ・エイジング」という概念を打ち出した。どのような考え方なのだろう。
87歳の平慶雲さんは8年前に夫を亡くし、30坪の家に一人で暮らしている。近くに住む息子がしばしば会いに来てくれるので孤独ではないと満足そうに話す。2010年には台北市から「模範母親賞」を授与された。小学校の教員だったため恩給があり、経済的な不安はなく、身体も健康で家事も問題ない。毎朝、近くの公園で体操をして健康を維持し、教会のボランティアもしている。近所に暮らす行動が不自由な一人暮らしのお年寄りのために、食品や日用品を買ってきて、おしゃべりの相手をする。
90歳の曹桂嵩さんは戦功のある退役軍人で、退職後は図書館で20余年ボランティアを務め「松鶴賞」も受賞した。最近は高血圧と心臓病があるが、妻とともに積極的に出かけて活発に暮らしている。

音楽やダンスは自分で楽しめ、人を楽しませることもでき、シニアライフに楽しみをもたらす。写真は新北市銀髪族協会の佈老楽団。下は新竹北埔の音楽イベント。
現在、台湾の65歳以上の人口は全体の11%だが、2017年には「高齢社会」とされる14%に達する。高齢化は想像を超えたスピードで進んでいる。
台湾の高齢者260万人のうち1割は生活に手助けが必要だが、9割は平慶雲さんや曹桂嵩さんのように健康で自分で行動できる。
これまで政府や民間の老人福祉機構は、支援を必要とする高齢者のケアに重点を置いてきたが、近年は健康な高齢者の病気予防が根本的な対策と考えられるようになってきた。この十年、欧米では高齢者政策の重点が変わり、高齢者の健康維持、社会参加、安心できる社会づくりに力を注いでいる。
台湾でもこれを導入し始めた。2009年、内政部は「高齢者に優しいサービスプラン」を打ち出し、年齢差別のない社会を目指すとしている。では、アクティブ・エイジングはどう実現するのか。
台湾大学ソーシャルワーク学科の林万億教授は、アクティブ・エイジングの三つの柱は社会参加と健康と安全だと説明する。EUで最も重視されているのは社会参加だ。雇用、ボランティア、健康促進、教育訓練など、健康で生産力を持つことがアクティブ・エイジングの核心的価値とされる。
2000年に世界一の高齢化社会となった日本の取り組みは参考になる。日本では1980年から各地に「シルバー人材センター」を設け、シニア世代が公園清掃や駐車場管理、翻訳、木工、受付などの仕事を請負えるようにした。これにより高齢者はポケットマネーが得られ、医療支出も減らすことができる。
老人福利連盟の呉玉琴によると、日本には1597のシルバー人材センターがあり、会員数は78万人、その平均年間医療費は22万円で、日本の高齢者平均医療費の年64万円を大きく下回っている。
だが、これを導入するには、まず台湾社会の固定観念を打破する必要がある。台湾では、お年寄りが働くことは不幸なこととされ、また若者の雇用を奪うと言われるのである。
内政部の2009年老人状況調査によると、我が国の65歳以上の就業率は11.17%、約20万人で、その51.3%は農林漁業に従事、サービス業が14.8%、非技術労働が11.2%となっている。65歳を過ぎても働くのは、生活のためが最も多く、続いて健康維持、老化防止、社会参加、仲間作りとなっている。
行政院の2012年の統計では65歳以上の就業率は8.1%で、近隣の韓国(30.6%)、日本(19.9%)、シンガポール(17.6%)よりはるかに低い。

孫と遊ぶもよし、のんびりと過ごすもよし。シニアライフはもう一つの新たな人生である。
高齢者は働き続けるべきなのか。これは個人の選択だけの問題ではない。人口構造の変化は企業経営や政府資源の分配にも大きな衝撃をもたらす。
台湾人の平均寿命は年々の伸び、現在は男性76歳、女性83歳だが、就労者は平均57歳で退職しており、退職後の20余年の生活維持と人材資源再活用は今後さらに重要な課題となる。
高齢者が増加する一方で若者人口は減少していく。95歳で亡くなったピーター・ドラッカーは、2002年の著書『ネクスト・ソサエティ』で、健康が許す限り、将来は75歳まで働くべきだと説いている。退職年齢を引き上げなければ、日増しに重くなる退職金の負担は支えられないからだ。
台湾でも高齢で働き続ける著名人は少なくない。TSMCの張忠謀は82歳の今もCEOとして経営に当り、一度事業に失敗した中小企業協会・元理事長の戴勝通は68歳で第二の事業を起こした。東海大学の元学長で95歳の梅可望は生涯を教育に注いだ後、1992年にシンクタンク「台湾発展研究院」を創設し、人材を集めて重大建設を研究し、今も理事長を務めている。健康の秘訣は楽しむことだという。
「楽しく寝て、楽しく目覚めること」と話すのは元立法委員の沈富雄だ。立法委員を退いてからしばらくの間、午前中は株を売買し、午後はテレビで時事を評論するという日々を送り、感情の起伏が激しかった。株価は上っても下がっても大きな刺激を受けるので、今は株を全部手放し、朝5時から9キロのウォーキングやジョギングをしている。運動によって脳の血液循環が良くなるという。
では、一般の労働者は退職後も働き続けられるだろうか。「アクティブ・エイジングは40~50代から始めるべきです」と林万億は指摘する。欧米の航空会社では客室乗務員にもシニア世代が多い。高齢になると、目や骨格、感覚などが衰えるため、職場環境にも相応の措置が必要である。高齢者の雇用は代替ではなく開発だと林万億は言う。労働の一部の工数や地域での仕事が可能である。
ドラッカーによれば、これまで労働者は生活のために働いてきたが、現在の知識労働者は仕事をライフスタイルとするべきだという。

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ボランティアという社会参加も可能である。
林万億の2008年の研究では、台湾のボランティアは40~50歳が最も多く、次は30~40歳、高齢者の割合は11.5%で、スウェーデンの30%や米国の24.8%よりかなり低い。弘道老人福利基金会は1998年からボランティアバンクの活動を開始したが、ボランティア1800人のうち高齢者は1割のみである。
高齢者が少ないことについて林万億は、交通や環境が高齢者の行動に不便で、意欲のある人も何をしたらいいのかわからないことを挙げる。
弘道基金会が2012年にシニア世代が最もよく利用する交通手段を調べたところ、バイクが30%、徒歩22%、自分で車を運転が10%、自転車が9%、公共交通機関はわずか8%だった。
同基金会の林依瑩・執行長は、便利な公共交通機関や安全な歩道の整備が必要だと指摘する。
「家の近くでボランティアの機会が得られることが重要」と話すのは政治大学社会学大学院の呂宝静教授だ。2005年から、内政部では地域で高齢者にボランティアの機会を提供する拠点の設置を奨励している。一人暮らしで行動の不自由な高齢者を見舞うといった、高齢者による高齢者サービスである。
学習に意欲を注ぐ高齢者も多い。
教育部はコミュニティ活動センターや民間団体、図書館などと協力し、楽齢学習センターを設けている。2012年には120万人余りが参加し、全国の楽齢大学の数は225まで増えた。
7月に卒業式が行なわれた新北市の松年大学は、すでに第15期を迎え、のべ11万人が参加してきた。今年の卒業生は9816人、最高齢は102歳の劉鵬華さんだ。劉さんは99歳の時に永和敬老護幼協会にある松年大学分校を知り、非常に楽しそうなのでオーラル・ヒストリー教室に参加した。そして、かつて政府とともに中国大陸から台湾へ渡ってきた経験を語り、多くの友人を得た。
アクティブ・エイジングの目標は、高齢者の心身の健康を維持し、要介護の期間を短縮することである。林依瑩によると、台湾の高齢者の要介護期間は男性が6.4年、女性は8.2年、平均7.3年で、この負担を低減するには健康を促進するほかない。

人生は他者に奉仕するためにある。病院や宗教活動、リサイクルセンターなどで、多くの高齢者がボランティアをしている。写真は慈済と行天宮のボランティア。
衛生福利部は早くから老人健康促進プランを打ち出してきた。衛生所と地域の病院が高齢者の飲食や口腔、心の健康、病気予防などを指導するというものだ。
だが林万億は、健康促進活動はより現実的で直接的であるべきだと考える。例えばフィンランドでは、転倒防止や心肺機能向上の技術、食事の見本など、実際的な内容を教えている。
設立18年の弘道基金会では、アクティブ・エイジングの精神にかなったイベントを行なっている。2007年には、平均年齢81歳のライダー17人を選び、バイクでの台湾一周に挑戦した。夢をかなえるイベントは4回を数え、大きな反響を読んでいる。「夢の追求は最良の健康促進です」と林依瑩は言う。
88歳で不老ライダーに参加した康さんは、もともと人づきあいが苦手だったが、台湾一周前の2ヶ月にわたる訓練を通して、生まれ変わったように明るく積極的になった。

音楽やダンスは自分で楽しめ、人を楽しませることもでき、シニアライフに楽しみをもたらす。写真は新北市銀髪族協会の佈老楽団。下は新竹北埔の音楽イベント。
安心して老後を送るには、心身の健康の他に経済面も重要な柱である。
2009年の内政部の調査によると、台湾では子供や親類と同居している高齢者は全体の29.83%、夫婦同居が18.7%、一人暮らしが9.1%である。2005年の同様の調査と比べると、子供との同居の割合は7.34ポイント上昇、一人暮らしは4.5ポイント減り、やはり家族との同居が好まれることがわかる。
しかし、少子化は避けられない趨勢だ。現在の高齢者では子供が3人以上いる割合が78.55%と最も高いが、現在の30代が高齢になった時、子供は1人しかおらず、将来は一人暮らしや夫婦二人のみの世帯が大幅に増えると考えられる。
「将来は一人暮らしが主流になります」と弘道基金会の林依瑩は言う。子供と同居していても、大部分の時間は一人で過ごすこととなり、だからこそ地域社会のネットワークが重要になる。現在、台湾には7835のコミュニティがあるが、高齢者用の拠点は1700ヶ所しかなく、各コミュニティに1拠点という目標からは程遠い。
高齢者の収入に関する内政部の調査では、子供からの仕送りが42%で最も多く、次が自分の退職金や貯蓄の28.73%、政府からの補助金が17.12%、仕事の所得が6.99%となっている。
日常の生活費は足りているかという問いには、63.5%がだいたい足りている、21.9%が足りない、13%がかなり余裕があると答えている。2005年の調査と比べると、かなり余裕があるとする人が4.6ポイント増加、まったく足りないという人が1.9ポイント増え、ここでも格差が広がっているようだ。
だが、多くの国民は自分の老後の生活を政府に頼ろうとは思っていない。中央研究院が2008年に行なった「台湾社会変遷基本調査」によると、高齢者の医療や生活のケアの責任について、一般の人は「半分は政府、半分は個人と家庭の責任」と考えていた。
では、どれだけの貯蓄があれば足りるのか。この問いには正解はない。だが、心の元手は誰でも蓄えることができる。

孫と遊ぶもよし、のんびりと過ごすもよし。シニアライフはもう一つの新たな人生である。
50歳の作家・簡媜は、今年『誰在銀閃閃的地方,等你』を発表したが、そのきっかけは2年の間に親しい人を何人も亡くして老いと病の苦痛を知り、少しずつ老いていく自分のために準備をしたいと考えたことだった。「健康であるかどうかが元手の厚みを決め、世話をしてくれる家族がいるかどうかで金銭流失の速度が決まる」と述べている。
簡媜は、これらの元手の他に「楽しみ」を持つことを提案する。高齢者は嘆いたりうらみごとを言ったりしがちだ。「楽しみは一本のローブのよう。それを腰に巻いておき、暗い気持に陥りそうになった時、そのロープを引っ張って自分で上っていく。老人も、自ら強くならなければならない」
高齢のライダーたちを記録したドキュメンタリーフィルム『不老騎士』が大きな反響を呼び、弘道基金会では続いて「老年準備」を提唱し、老いを恐れずに明るく迎えようと呼びかけていく。
顧客の心をつかむのがうまい日本の企業は、高齢者層を最上級の世代、「GG世代」と呼んでいる。スーパーは朝7時から営業を開始し、陳列棚の高さを下げ、ミニサイズの飲料を並べる。レコードショップには1960年代のCDが並ぶ。
スウェーデンのデパートでは、昼間の勤務時間中は高齢者向けの商品を陳列し、バスの運転手は通勤ラッシュが終わると、高齢者のために急ブレーキをかけない穏やかな女性運転手に交替する。
急速に高齢化が進む台湾でも世の中の雰囲気は変わりつつある。高齢化社会に向けて、私たちの根もより深く広く、強く張っていかなければならない。

孫と遊ぶもよし、のんびりと過ごすもよし。シニアライフはもう一つの新たな人生である。

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音楽やダンスは自分で楽しめ、人を楽しませることもでき、シニアライフに楽しみをもたらす。写真は新北市銀髪族協会の佈老楽団。下は新竹北埔の音楽イベント。

シニア世代の教育に力を注ぐ宜蘭県羅東の南陽義学協会。お年寄りも軽々とタブレットPCを扱う。

孫と遊ぶもよし、のんびりと過ごすもよし。シニアライフはもう一つの新たな人生である。


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年齢に関わらず、誰でも夢を追うことができ、それは健康促進にも大いに役立つ。写真は弘道基金会の「不老の夢」野球チーム。

人生は他者に奉仕するためにある。病院や宗教活動、リサイクルセンターなどで、多くの高齢者がボランティアをしている。写真は慈済と行天宮のボランティア。