カラフルな衣を着た現代住宅
このような各地にある公寓の中でも、台北市松山区の民生社区は異なる様相を呈している。
林君安さんの案内で、巨大なビルが並ぶにぎやかな民生東路の大通りを歩いていくと、向こうに小さな公寓群が見えてくる。
ここの住宅街には、聯合新村、聯合二村、光武新村と名付けられた古い公寓が並んでいる。林君安さんは、建築家の眼から見ると特別に優れたところがあるわけではないが、選び抜かれた色合いの外壁のモザイクタイルや、汚れが目立たない洗い出し仕上げの壁があり、階段の踊り場には丸窓やレリーフ、装飾的な格子などがあり、それぞれの建物に表情があるという。
こうしたデザインは、公寓が量産された時代のモダニズムが主張する機能優先の原則には反する。「当時の西洋の集合住宅建築を見ると外壁はシンプルな灰色で、構造的機能を持つ赤レンガや色のついた窓枠があるだけです。それに比べると、台湾ではタイルを貼ってあり、モダニズムの構造にカラフルな衣を着せたかのような装飾性や折衷主義が見られ、思いのままに装飾が施されています。こうして見ると、当時これらの公寓が建てられたのは現代化(modernization)のためであって、モダニズムとは関係がなかったように思われます」と林君安さんは言う。
また、当時の台湾には法的な規制がなかったため、家主は各自のニーズや美意識によってベランダや窓、手すりなどに手を加えたり、新たにタイルを貼るなどしてあり、台湾人の自由な気質が現われている。「本当に自由ですよね!」と林君安さんは言う。
林君安さんは、この民生社区は米国に倣った数少ない事案だと言う。碁盤の目に整えられた通りに連続性のある歩道が設けられ、地域の中を大量の公園が貫き、緑の樹木が鬱蒼と生い茂っているが、これらは他の住宅地では見られない優れた点だという。
西洋と違うのはベランダの様相だ。西洋では屋外に面したベランダは遠くを眺めたり、お茶を飲んだり、景観を楽しんだりする場所である。しかし台湾は熱帯、亜熱帯に属するためか、台湾人はベランダでさまざまな鉢植えを育てる人が多い。1階の住人は小さな庭に大樹を植えることも多く、それが大きく育って上の階まで届くようになっても上の住人がそれを気にすることはなく、通り全体が緑に覆われることとなる。
この民生社区には近年、最先端のファッショナブルな店も進出するようになり、商業化が進んでいるが、道路がT字型に配置されていることから、大量の車両が通り抜けることはなく、昼間もやはり静かな住宅地の雰囲気を保っている。

観光客が多い台北の永康街。商店や有名レストランが軒を連ねているが、ノスタルジックな建物を観賞することもできる。