型にはまらないスコーン作り
「悄悄好食」の創業者、王欣瑜さんは35歳だ。11年前に店を立ち上げた当時はアメリカの就労ビザ発給を待っていた時で、渡米までのつもりで路地裏に店を出しスコーンを作り始めた。
趣味の延長だったのが、いつしか本格的な店舗運営へと移行する。作業スペースを借り、杭州南路により広い店舗を構えたものの、SNS上で「正統ではない」と指摘する声が上がった。
これに対し、王さんはミレニアル世代らしく柔軟で自分らしいスタンスを示す。イギリス人からすれば本格的ではないかもしれないが、曰く「最初から線引きはしていないんです。タロイモスコーンなんて、そもそも本格的ではありませんよね。それに私がスコーンを作り始めたのはアメリカででしたし、アメリカ人のスコーンとイギリス人のスコーンだって違いますから。枠を設けず、作りたいものを作っているんです」とのこと。
王さんの話によると、アメリカのとある有名ベーカリーは、マーケットで台湾風刈包(グワバオ:蒸しパンの間に豚肉、ピーナッツ粉、高菜漬け、香菜などを挟んだもの)を販売しているという。その刈包は、肉がメキシコ風のプルドポーク、漬物もメキシコ風ピクルスで、唯一台湾らしいのは白いバンズだけ。台湾人一行で食べに行った時は「なんじゃこりゃ」と驚いたが、現地では大人気で、それこそが現地化だと感じたという。

王欣瑜さんはフランス菓子の技法を取り入れ、ミルフィーユ風スコーンなどの商品を開発している。