重量を超えることの意味
パワーリフティングの中でも、バーベルを肩と首の間にかついで、しゃがんだ状態から立ち上がるスクワットでは太ももの筋力が試される。「祖霊の太もも」を持つと言われる楊森は、生まれながらにして優れた肉体を持ち、祖先のご加護もある。日頃のトレーニングでは、テクニカルな力の伝達と連動、安定感に重きを置き、さらに細部を改善していくことで、より体形に合った一連の動きが可能になった。
許小莉さんがさらに説明してくれる。これほどの重量を担いでいる時は、力んだ箇所が全身の力の連動と少しでもずれていると、重量が体感的に5~10キロも重く感じられ、悪くするとバランスを崩したり、負傷したりする。
選手が体得しなければならないのは、力任せにバーベルを挙げることではなく、いかに筋力を運用するかなのである。
許小莉さんは、一人でいる楊森さんの背中を見て、胸が痛くなることがあるという。「勇者は孤独」なのである。
現在、楊森は体重120キロ級のスクワット種目における世界記録保持者で、これからも大会に参加し続けると語っている。彼が持ちあげるのは、450キロという重量だけではなく、その自律と忍耐力、そしてパワーリフティングに対する熱い想いなのである。

2024年のIPFパワーリフティング世界エクイップオープン選手権で、楊森はスクワットで453キロを挙げ、世界記録を樹立した。(楊森提供)

許小莉さんは女子72キロ級で経験を積んできたベテランのパワーリフティング選手である。