文化遺産保存の現場――史雲湖
長年にわたって文化遺産を守る活動をしてきた林正芳さんによると、頭城老街は「文化資産保存法」改正の各段階に関わってきた。
盧宅の前にある、頭城の象徴とも言える「史雲湖」は幸運にも現在も保存されている。池の傍らには日陰を作る巨大なガジュマルの木があり、そこで釣りをしたり、腸詰を焼いている人がいる。岩の上では4羽のガチョウが日向ぼっこをしていて、平和な風景が広がる。
だが、実はこの池の保存にあたっては、紆余曲折があった。
宜蘭県の初代県長(知事)であった盧纘祥が「史雲湖」と名付けたこの池は、盧家の所有地だったが、塀で囲むのではなく、「公園」として住民に開放していた。
ここは清代の頭囲港の跡地とされていただけでなく、多くの頭城人は風水的に非常に良い土地と考え、「風水池」と呼んでいた。
ところが、盧家の子孫は株で失敗して夜逃げしてしまった。盧宅と池は借金のために合作金庫(金融機関)の抵当に入っており、長年利息も支払っていなかったため、合作金庫は競売の準備をし、それを政府の文化部門に知らせた。そこで県は急いで「盧宅」を「古跡」に指定したのだが、「池」はそこに含まれていなかった。
その後、歴代の県長は池の再開発を認めず、頭城出身の呂国華・県長の最初の任期が終わる直前、建設会社はもう待てないとして2009年に池を埋める準備を始めた。これに対して地域住民が反対の声を上げて大きな騒動になり、県は「池」も文化財に指定したのである。その後、宜蘭県と建設会社の訴訟は続いたが、最終的には「容積移転」の方法で解決し、池は残されることとなった。

長年にわたって頭城の「搶孤」や民俗・風習を研究してきた林正芳さんは、老街の歴史保存運動にも深く関わってきた。