自分で一から学んだ技
休みの日、一人で新竹南寮の海辺に膝を抱えて座り、風に吹かれるまま海を見つめ、海の向こうにいる家族を思って泣いていた。父と母の顔が目に浮かび、知らず知らずのうちに砂の上を指でなぞっていた。
「ある日、サンド・アートのパフォーマンスを見て、すごいなと思いました」ボード上の砂がアーティストの手で魔法のように変化する。そんな感動がマリオの人生を動かすこととなる。「私はYouTubeの動画を見て学びました」砂絵に接したことも、お金を払って習いに行く余裕もなく、独学するしかなかった。
最もよく描いたのは家族の顔で、夜中に練習し、気がつくと夜が明けていることもあった。砂で手が荒れてひび割れ、ボードの下から照らす蛍光灯で目も痛んだ。だが絵への情熱と闘志がマリオを支えた。だんだん人の顔も巧みに描けるようになり、最初は1日かけてやっと完成していたのが、8〜10分で出来上がるようになった。
「宿舎で何かのコンテストがあって、皆に薦められて出たのです」そこで賞をもらったことで自信を取り戻し、マリオは以前のような快活さを取り戻した。そして、サンド・アートの様子をより多くの人に見てほしいと、ストリート・アーティスト資格試験を受け、2015年に台湾で外国人労働者として初めて台北および新竹のストリート・アーティストの免許を取得した。
初めてテレビに出た時は、マリオは興奮を抑えられず家に電話した。「脳卒中で話のできない父も興奮して、わあわあ叫んでいました」ライトに照らされ、サンド・アートが繰り広げられる様子は人々を驚かせた。やがて招待が相次ぎ、メディアでもたびたび取り上げられるようになった。
マリオの最も得意とするのは、実物そのものに似せることで、人物、建築物、文字、ロゴなど何でも本物のように再現し、観客を感心させる。台北のマニラ経済文化弁事処の催す公式パーティでパフォーマンスを行ったこともある。
マリオは外国から来て働く友人たちをファッションショー出演に誘い、ステージで夢をかなえる懸け橋の役割も務めている。(マリオ・サベルディア提供)