台湾での経験は捨て去る
EZTABLEは、東南アジア市場の可能性を確信し、今年初めに本部をジャカルタに移した。
「台湾を離れたのは、当初からの計画です」とEZTABLEのCEO陳翰林は言う。陳翰林は2008年に帰国してレストラン予約アプリEZTABLEを設立した。この事業は位置情報システムのおかげですぐに軌道に乗った。業績が上がるにつれて、日本や香港からも出資が得られ、陳翰林は創業者からプロフェッショナルマネージャーに立場を変えた。台湾での業績は今年50%の成長率を維持したが、それでも海外に市場を求めるのは、より高い利益を得るためだ。
東南アジアに進出する前、陳翰林は中国大陸も視察してきた。そして長年の観察の末、中国大陸と日韓、東南アジアの3地域での競争はまったく異なると感じたと言う。
彼は次のように分析する。中国大陸市場は魏の国に似ていて、国土が広く資源は豊富で兵馬も強い。日韓は呉の国に似ていて国土は狭く、内部で独特のやり方が成立している。魏や呉の国に比べると、東南アジア市場は蜀の国に似ていて、開発が始まったのは遅いが、守りやすく攻めにくく、全域を制覇するのは非常に難しい。10カ国以上あり、それぞれ言語も宗教文化も異なるが、非常に重要な市場なのである。
2年前、EZTABLEは東南アジア市場進出に着手したが、まるでベールを隔てているかのように掌握できなかった。そして今年から数カ月の観察を経て、ようやくインドネシア市場を理解できるようになったと言う。
陳翰林によると、インドネシアでは中間層が台東し始めており、その購買行動は、需要を満たすものからブランド追求へと変わりつつある。1970年代の台湾や、2000年前後の中国大陸のような急成長の時期にあり、社会的にも大変革が起きている。台湾や日本、韓国のような成熟した分衆市場とは異なり、国際的な有名ブランドが好まれているという。
このほかに東南アジア市場の一般的な傾向として言えるのは、享楽的な消費習慣という一面である。毎月の給料日には、ショッピングモールは人でごった返すが、その数日後に財布が空になると、人出は退いていくのである。「インドネシアでは多くの人が衝動的に買い物をするのです」と陳翰林は言う。
だが、EZTABLEはレストラン予約システムである。レストランを予約する習慣のないインドネシアでの展開は思ったほどうまくいかなかった。まだ予約という習慣がなく、店が満席でも他の選択肢があるため、店側にも予約を受け付ける習慣が広まっていない。
一般に、多くの企業は自国で成功した経営モデルを海外へ持っていこうとする。しかし、陳翰林はそれをせず、台湾での経験を切り捨てた。そして、インドネシア市場に特化した「aFamily」というまったく新しいブランドを打ち出したのである。飲食店に会員管理のプラットフォームを提供し、会員の資料を収集統合してオンライン・オフラインのキャンペーンを行ない、消費者のブランド忠誠度を高めるというものだ。
台湾でのレストラン予約システムも、インドネシアで提供する会員管理サービスも、飲食店と消費者をつなぐものである。このような顧客経営はネットの発達した今日であっても必要なものである。アリババの馬雲が「新小売時代」を宣言したように、オンラインかオフラインかの区別は重要ではなく、顧客にソリューションを提供することが大切なのである。
EZTABLEは実際に台湾からインドネシアに進出した数少ない企業である。インドネシアは成長が大いに期待される市場だが、実際に進出した企業はまだ少ない。「言語や文化、法規や制度など、いずれも課題になります」と話すのは、台湾企業のインドネシア進出をサポートしているRocketindo創設者の劉士豪だ。
多くの人出でにぎわうジャカルタのショッピングモール。