市街地で生命の平等を訴える
市街地にある「パズルキャット」は現在60匹余りの猫を収容しており、内部は隔離室、成猫室、猫エイズ室に分けられている。陳人祥は猫エイズ室に入ると「パズルキャット」の由来について話してくれた。
「猫エイズ」というのは、猫免疫不全ウイルス(Feline Immunodeficiency virus:FIV)の感染症のことだ。HIVとは異なり人に感染することはなく、長期にわたる服薬の必要もなく、一般の猫と同じようにケアすればよい。しかし、多くの人はこの病名だけで拒絶反応を起こしてしまうため、陳人祥は正しい病名を普及させたいと考えている。「私たちの日常の中に、不完全でもネガティブに受け取らず正常だと思うものはないだろうか」と彼は問いかけた。そうして思いついたのは、常に1ピース足りない「パズル」だ。これこそがパズルキャットが行なっている事業で、人と猫がパズルのようにぴったり合うように保護猫のために新しい家を探すのである。
実は陳人祥は最初はペットホテルを経営していたのだが、利用者が毎日いるわけではないので、保護猫施設の機能を加えることにした。最初は保護猫に里親を探せばいいだけだと考えていたが、その後、根本の課題を考えるべきだと思い、生命の平等という観念の普及に力を注ぎ始めた。そこで動物にも人にもフレンドリーで、足を運びやすい場所をと考え、反対を押し切って人口密度の高い新北市永和区に保護施設を設けた。そこで9年間経営を続けてきたが、抗議の電話を受けたのは1回だけだと言う。道路沿いの窓際に置いていたキャットタワーの位置を変えたところ、「猫が見えなくなった」という不満の電話がかかってきたと言って笑いを誘う。
パズルキャットという名称には、猫エイズの病名を正し、すべての生命が大切に扱われてほしいという願いが込められている。