旅やグルメのつながり
国交樹立20周年の2018年には両国間でビザ免除協定が結ばれ、互いの国民はビザなしで90日間滞在できるようになり、台湾の呉釗燮外交部長(外交相)はビザなしでマーシャルを訪れた初の台湾人となった。
今や台湾人はビザなしで気軽にマーシャルの各島の文化や風景を探索したり、各地のグルメや工芸を楽しむことができる。
カッティル大使のお薦めはダイビングだ。マーシャルには世界トップクラスのダイビングスポットがあるほか、海釣りやスピアフィッシングも可能だ。マーシャル人は生まれながらの船乗りであり、みな凄腕の漁師だと大使は言う。毎年7月第1金曜日はマーシャルの「漁師の日」で祝日だ。当日は釣り大会が催され、各種の釣りがマーシャルの重要なレジャーであることがわかる。。
忘れてならないのはマーシャル版「臭豆腐」だ。これは熟したパンノキの実を発酵させた食べ物で、台湾の臭豆腐のようなにおいを放つ。
ココナッツはマーシャルにとって重要な経済資源だ。果肉やオイルは重要な輸出品で、現地の人は「生命の樹」と呼ぶ。またパンノキとパンダナス(タコノキ)は、果実が主食となり、ほかの部位もさまざまな用途に利用される。木の幹からはカヌー、パンダナスの葉からは船の帆や巻きスカートが作られるし、葉でパンダナスの実を包めば50年間保存できるという。ある日、大使は台湾中部の山地で小型のパンダナスを見かけた。それは同じタコノキ属のアダンで、台湾のアミ族はその葉でアワを包み、チマキ状にして食べると知り、やはり共通点があると感じた。
「50年間も」と驚くと大使は頷いた。「これはマーシャル人の保存食なのです。長い航海への携帯も便利で、数時間は腹持ちします」。
首都訪問のほかにも、そこから船で小1時間ほどのアルノ環礁を大使は薦める。金曜日に出発して3泊し、月曜に首都に戻ればいい。アルノ環礁には宿はあるが電気やネット環境はない。青い海と白い砂浜が広がる中、日が出ると起きて日が落ちると休み、戸外で火を起こして調理するという、現地の人の暮らしにふれることができる。そこから近くのミリ環礁にも足を延ばせる。第二次世界大戦では戦場となった所で、海に潜れば戦闘機や軍艦の残骸が見られる。
ユネスコの文化遺産に登録されたビキニ環礁も重要だ。1950~60年代、アメリカはビキニ環礁を含む4つの環礁で幾度も核実験を行い、67発の原水爆を爆発させた。米国防総省はエニウェトク環礁に、爆発でできたクレーターを利用して核廃棄物を埋め立て、それを分厚いコンクリートで覆って幅115メートルのドームを作ったが、島々には取り返しのつかない被害がもたらされた。気候変動による海面上昇でもしドームが浸水すると、ドームが損傷して放射能漏れを起こす可能性があると、大使は指摘する。
政府や姉妹都市、学校などの間で交流活動を続けること、つまり「海洋を挟んだ2つの島国が互いをよく理解することは、固い絆を結ぶ礎となります」とカッティル大使は信じている。
パンダナスの葉でその実を包むと長く保存でき、遠くに航海する際の携帯に便利だ。
双和医院は不定期に医師をマーシャルに派遣している。1人の医師の派遣期間は1カ月だ。写真はマーシャルの患者を治療する泌尿器科の董劭偉医師。(双和医院提供)
原住民文化や民宿を紹介する書籍『原芸百工』が花蓮県の徐榛蔚県長から大使に贈られた。花蓮の台湾原住民族文化館の前で記念撮影する二人。(花蓮県政府提供)
タロコ族の伝統家屋を参観するカッティル大使。屋根の構造や台所を指し、「マーシャルの伝統家屋と似ている。ただマーシャルでは、屋根はたいていヤシの木で作ることが多い」と指摘した。
家族とともに太魯閣国家公園を旅行したカッティル大使。