ワイヤーの先――佳承精工(Chia Cherne)
彰化市にある佳承精工はシフトワイヤーとブレーキワイヤーの生産から始まった会社だ。シングルスピードから3段変速、そして最新の13段変速まで、油圧式ディスクブレーキの油圧ホースまで、さまざまなカスタマイズしたワイヤーを提供しており、そのシェアは世界一を誇る。
台湾のレンタサイクルYouBikeを例に取ると、駐輪場が屋外にあるため日光に晒されることとなる。そこで佳承はケーブルのプラスチック原料の配合を調整し、従来は100時間だった紫外線耐性を400時間まで伸ばした。こうして企業に求められるESG(環境・社会・ガバナンス)にも対応し、ワイヤー類も従来の材料から、回収再生が可能な材料へと開発が進んでいる。
「ブレーキワイヤーの品質の良しあしは、ブレーキをかけた時の手の感覚で分かります。軽く穏やかな感触でありながら安定した制動力があるのです」と、制御システム事業部で開発技術を担当する陳祈岐は説明する。このような品質は、製造工程の安定と構造設計から来るものだ。ワイヤー内の金属線の編み方や配列によって圧縮された応力を消去する。特に、中高年女性がブレーキをかける時に手に疲れを感じるようなことは避けなければならない。
「私たちは国際標準の倍の品質を追求しています」と陳祈岐は言う。ブレーキワイヤーの場合、標準は完全に停止するまで7メートルだが、佳承の製品なら3~4メートルで停止する。
3輪のe-cargoのために設計した油圧式ディスクブレーキの場合、佳承の製品の強みはオイルホースの設計にある。ホースの膨張係数を掌握し、ホースを薄くすることでブレーキの反応を速くし、良好な制動力を発揮する。
佳承はその高品質のワイヤーやケーブルを、他の分野にも提供している。スポーツ器具やクルーザーのモーターケーブル、農機具のスロットルワイヤー、エアバッグのリップコードなどだ。一本のワイヤーからブレーキシステム全体へ、さらには放熱器の分野にまで事業は広がっていく。専門分野の力を存分に発揮することで、台湾の先端部品メーカーは、そのラインを無限に伸ばしていけるのである。
久裕興業の台湾工場ではハイエンドのパーツを生産している。
A-Teamの設立によって、自転車産業の研究開発分野が台湾に残されることとなり、それによって台湾は現在の地位を築くことができた。