シダのすごさ
大学でシダ類の講義をしたことがある。最初は「つまらない」という反応でも、話を聞くうちにシダのすごさに気づいてくれると郭は言う。
シダを語る際、郭は決まって太古の話から始める。地球の誕生は45億年前、そして4億年前にやっと森林が出現する。最古の維管束植物であるシダ類は当時は最も「すごい」植物だった。4億年前の森林はシダの森で、シダは20~30メートルの高さがあった。やがて2億年ほど前に種子植物が現れる。最初はスギやヒノキが優勢を占めていたが、1億年前からは開花植物が主流となり、今日まで森林は広葉植物の天下である。
だがシダ類をあなどってはいけない。岸壁や崩れた斜面など、わずかでも土壌があれば、何とかして水分を蓄え、必要ならば自身の一部を切り離してでも生き延びてきた。
台湾大学標本館の回廊に立ち、郭城孟は木の上に生えたカザリシダを指して言った。「これは『寄生』ではなく『着生』です。必要な水分や養分を木から得るのではなく、自分で何とかしています。だからまるで通せんぼするように幹をぐるりと取り巻き、上から下りてくるものがあれば少しでも『財』を巻き上げようとするのです。まるで山賊です」と笑いながら説明した。台湾ではよく食されるシマオオタニワタリも木の幹に着生する。まるで鳥の巣のように重なり合った葉で、上から落ちてきた葉や雨水を集めて養分とする。
別の方向には、膝ほどの高さのヘツカシダが生えていた。郭城孟は、葉を持ち上げて、葉先の小さな無性芽を見せてくれた。葉先が伸びて地面にふれると、その芽が落ちて、そこから新たにシダが生えてくるのだと言う。
ほかにもイワヒバは、乾燥に耐えるために驚くほど姿を変える。乾燥すると葉が内側に丸まって枯れたように見えるが、雨が降るとまた新たな葉を伸ばすのだ。そのため「九死還魂草(九回生き返る草)」の異名を持つ。またヒトツバは、葉の裏が銀褐色をしており、水分が不足すると葉が上側に丸まって、銀色が陽光を反射し、水分の蒸発を防ぐ。乾燥期には葉は完全に丸まってしまい、関節から葉を落としてしまう場合もある。
シダを育ててみるなら、木や岩壁に生えるシダが入門に適していると郭城孟は言う。これらは遅れて進化したシダ類で、地面から離れているため過酷な環境でも強い生命力を示すからだ。
全世界のシダは次のように分類される。4億~2億年前から残る古生代のシダ、2億~1億年前から残る中生代のシダ、そして1億年前以後に進化した新生代のシダだ。古生代のシダには五つの科 (マツバラン科、トクサ科、ミズニラ科、イワヒバ科、ヒカゲノカズラ科)があり、すべて台湾にある。16科ある中生代のシダのうち台湾には11科があり、新世代の18科もすべて台湾にそろっている。したがって世界中のシダ類の進化を台湾で見ることができるのである。
台湾には、ヒカゲヘゴやリュウビンタイなど、ジュラ紀からのシダがいたるところで自生している。