「3つの給与」マネジメント
ベジタリアンになって20年になる尤淳永は「仏教の思想、理性的なスタイル」という経営を目指している。彼は若くして総経理に就任したため、ベテラン営業マンが壁になったことがある。「優秀な営業マンは、それぞれに自分のやり方があり、しかも私より経験が豊富なので、私の命令に従おうとしないことが多いのです。そこで私は強硬な姿勢には出ず、相手が私に従わない原因はどこにあるのか考えるようにしました」と言う。温和な彼は、常に社員が話す任務執行上の困難に耳を傾ける。こうした理性的なスタイルで、急いで決定を下したり、社員の価値を断定したりすることはない。
「作家‧劉墉の本の中に、こんなエピソードが出てきます。彼は冬に友人から新築の家を借りたのですが、裏庭が雑草だらけなのを見て、すべて掘り返してきれいに整理しました。ところが夏になって帰ってきた友人に『私の貴重な牡丹はどこにいったんだ?』と言われてしまうのです」尤淳永はこの物語に感じるところがあった。何事も、気に入らなくてもすぐに手を下してはならない。自分の見方がすべて正しいとは限らないのである。「私は社員に、『良いか悪いか』ではなく『真実』を言うように伝えています。真実に基づいて判断することです。私は部門間のコミュニケーションの懸け橋となり、ものごとが進んで機が熟した時に一度に処理します。こうすることで全体にとって有利になり、皆も互いに仲良くなれます。あわてて食べると茶碗を割ってしまいます。これが仏の言うところの機縁です」
頭ごなしに強制するのではなく、社員の問題解決に協力する尤淳永は「3つの給与」というマネジメント哲学を持つ。「一つは本来の給与、二つ目は私からの信頼、三つ目は職務上の自主権です」と言う。社員を信頼して自主権を授けることのリスクは尤淳永も良く知っているが、こうすることで、会社に本物の人材が集まってくると考える。「最初は少なからぬ損失を負うでしょうが、損失も裏切りもプロセスにすぎません。こうすることで、本当に信頼に値するのは誰か、重責を担えるのは誰かが分かり、それから時間をかけて調整していけば、社内の良好な循環ができあがります」この方法で全社は心を一つにでき、環境保全を推進する大きな力が生まれる。
「人として生まれてきたからには、何らかの責任を果たさなければなりません。人生が終わる時、金銭などは持っていけないのですから、それを使って世の中のために何かをするべきで、環境破壊はこの世代で終わりにするべきです」という尤利春‧尤淳永親子の理念により、泉碩科技は世界の環境を救う台湾の「隠れたチャンピオン」となったのである。
発泡プラスチックの原料となるペレット。従来の発泡プラスチックはリサイクルできず、燃やせば有毒物質が出るが、泉碩科技の製品は回収後に最初のペレットの状態に戻して再利用することができる。
泉碩科技が開発したエコ発泡プラスチックは気孔が緊密で隙間がなく、毒性や臭気もなく、顧客のニーズに合わせてさまざまな機能を持つ発泡材を作ることができる。
常に研究に力を注ぐ泉碩科技は、世界中の顧客にとって重要なサプライヤーである。中でも数年をかけて開発された防音用グリーン建材は、「家は一生住むもの」という考えから低コスト生産をしていない。
eFoamの多機能サステナブル防音マットは密閉式気孔構造で、特許を取得した工法によってコンクリートに密着するため、しばしば音の媒介となる「水」を隔絶する。建材見本市では多くの問い合わせがある。
エコガーデンにある白骨化した日本のビャクシンの巨木。その芸術とも言える姿は強い生命力を感じさせる。