6月下旬、台北がすでに真夏の暑さを迎える中、アメリカとカナダの著名大学に在籍する青年リーダーたちが、外交部に案内されて、陽明山国立公園と陽明書屋を訪れ、1.6キロにわたる小油坑ハイキングコースを歩いて七星山に登った。沿線には硫黄結晶岩や蒸気を上げる噴火口があり、学生たちは目を見張った。
ハイキングコースの石段を登りながら、20代の学生たちはますます元気になり、走るようにして七星山に主峰に達すると、眼下に広がる台北盆地を見渡した。午前中だけで、これほど変化に富んだ景観に触れられ、誰もが感動を口にした。
3日後、今度は飛行機に乗って金門へ渡る。長い歴史を持つ金門造酒所では台湾特有のコーリャン酒をテイスティングし、その深い香りを堪能した。また、古い砲弾の弾殻で包丁を作る金門菜刀廠を訪れ、最後は金門島最北端の馬山観測所から対岸の中国大陸を眺めた。学生たちは、出発前に両岸関係の歴史と変化を学んでいた。
外交部が計画した、3週間にわたる研修の内容は多岐にわたる。まずテーマ別の講座では、国情紹介、政治経済、台米関係、文化革新、さらに医療外交、東シナ海の安全保障などを扱った。また、政府部門やNGO、学術機関なども訪問し、台湾各地を見学する前に、あらかじめ中華民国に関する知識を学んでもらった。
メンバーの多くが大学や大学院でアジアの政治経済を専攻しているため、これらの講座に彼らは興味を抱いて積極的に発言や質問をし、講師との間にインタラクティブな関係が生まれ、非常に充実した講座となった。
友好への道
「2015国際青年エリートリーダー研修(Mosaic Taiwan)」には、外交部の厳正な審査を経て30人のメンバーが選ばれ参加した。彼らは皆、北米の著名大学に在学しており、多くは法律、政治、財政経済、コミュニケーションなどを専攻している。
参加メンバーの中には、25歳で起業に成功した若者、21歳の時にアリゾナ州の民主党副主席に選ばれた優秀な大学生、オバマ大統領の選挙運動に参加した経験のある学生や、米国平和部隊(国際ボランティア派遣機関)のメンバーで、ハーバード大学への進学が決まっている人などもいる。彼らは皆、アジアと台湾の事情に一定以上の知識を持っている。
「この研修を通して、海外の若いエリートたちに中華民国を知ってもらい、支持してもらうことは、国際友好の種まきと言える行動です。将来、彼らがさまざまな領域で台湾に関する認識を発揮してくれれば、それは友好の重要な力になります」と外交部の史亜平・次官は説明する。
史亜平次官は、厳正な審査を経て選ばれたメンバーたちが、今回の研修を通して我が国への理解を深め、今後も台湾に興味を持ち、我が国に関心を持ち続けてくれることを願っている。そして、このプロジェクトを今後10年、20年と続けていくことで、国際社会に台湾を良く知る友人が増えていくのである。
台湾の民主主義を体験
昨年のリーダー研修に参加したメンバーの中には、これをきっかけに台湾が大好きになり、研修の3週間だけでは足りないと考え、今年台湾へ語学留学に来た人もいる。今年の参加者の多くは、昨年素晴らしい経験をしたという先輩たちに勧められて参加を申し込んだという。今年のメンバーの中にはすでに米国国務院の系統に加わって将来は外交部門へ進もうという人もいる。彼は今回の研修の機会に、我が国の史亜平次官と外交実務の経験を分かち合った。
カナダのオタワ大学に通うフィリップ・マーティンさんは、「台湾は民主国家だということは知っていましたが、講座を通して台湾の健全な民主主義を知り、実際に人々と接してみて、台湾は他の国とは大きく異なると感じました」と言う。初めて台湾を訪れたフィリップさんは、自由時間にあちこちを歩きまわり、台湾では公共建設が非常に重視されていること、そして親子や一家全員で行動する人が多いことが非常に印象に残ったという。また、レジャーや娯楽の場が非常に豊富だと感じたという。
参加者にさらに台湾を体験してもらうために、外交部は各地を案内した。鶯歌の陶磁器博物館で瀬戸物作りを体験し、坪林では茶摘みに参加し、台北市立動物園を訪れて猫空ゴンドラにも乗った。最後の一週間は台湾東部を訪ね、宜蘭の伝統芸術センターや金車酒廠(ウイスキー醸造所)、花蓮の太魯閣峡谷などを訪れ、台湾の豊富な景観と人情に触れてもらった。
フロリダ大学の学生会会長を務めるホセ・TJ・ヴィラミルさんは、金車酒廠のウイスキーが気に入り、ワールド・ウイスキー・アワードでベスト・シングルモルト賞(Gold-Best in Class)に輝いたKAVALANシングルモルトウイスキーを父親への土産として購入した。「台湾は広くはないのに優れた造酒技術があります。このウイスキーの風味は独特です」と言う。
台湾の多様な文化を体験
研修期間中には端午の節句があり、参加者は台湾の一般家庭にホームステイして伝統の祝日を一緒に過ごし、一般市民の生活と伝統文化に触れた。研修期間中、彼らはホテルにも民宿にも、一般家庭にも泊まることができ、台湾人の友好的なもてなしと伝統の祝日の言い伝えなどに触れられ、貴重な体験となった。
ニューメキシコ大学に在籍するキャロリン・ムライダさんは、台湾人の友好的な態度が印象に残り、それは空港の入国審査の時から感じたという。高校時代から中国語を学び始めた彼女は、交換留学で四川省の成都に3ヶ月滞在したことがあり、2010年に台湾に短期旅行に来て、台湾の屋台料理が気に入った。そこで今回の研修でも自由時間を利用して士林のナイトマーケットに行ったという。「他の多くのメンバーは臭豆腐に手を出そうとしませんが、私は一度で大好きになりました。みんなでKTVに歌を歌いに行き、こんなにいろいろな食べ物があることに驚きました」キャロリンさんは、今回の研修は素晴らしい文化外交の旅だったと語る。
ジョージワシントン大学の大学院に学ぶデビッド・ギッターさんはアジアの安全保障を専攻しており、アジアの歴史にも詳しい。今回は初めての台湾訪問で、故宮博物院のコレクションの素晴らしさが印象に残ったという。「清代の絵画や宋代の文物など、どれも興味があり、何日もかけてじっくり見学したいと思いました。国立台湾博物館や二二八記念公園にも行き、台湾人が過去の歴史を広い心と態度で受け入れていることは素晴らしいと思いました」
デビッドさんは、鼎泰豊の小龍包も気に入り、「小龍包」の中国語の正確な発音を教えてもらったそうだ。
ジャスティン・クワンさんは、カナダのブリティッシュコロンビア大学の修士課程でアジア太平洋政策と東アジア関係を研究している。彼は台湾の若者の文化に興味があり、24時間営業の誠品書店も見学しに行った。
ジャスティンさんは、今回の研修への参加を学校から推薦された時、たくさんの資料を読んで全力で準備したと言う。幾度もの審査を経て参加が決まった時は、両親も大変喜んでくれたそうだ。「この研修で最も光栄に感じたのは、馬英九総統にお会いできたことです。会見前は皆、緊張しましたが、お会いすると非常に親しみやすく、台湾の政治の現況などを語ってくださり、非常に有益でした」
またジャスティンさんは、台湾の若者の人間関係を羨ましく感じ、修了式でその観察を報告した。アジアの他の地域の夜市文化と比較しても、台湾はビジネスよりも人間関係を重視する社会だと感じたと言う。いつか再び台湾を訪れた時には南台湾に行き、もっと台湾の人情に触れてみたいと語った。
馬英九総統との会見
馬英九総統は「2015国際青年エリートリーダー研修」のメンバーと会見した際、自らも大学時代に救国団が主催する「中米青年サマー学術研修会」に参加し、またアメリカの国務省に招かれてInternational Visitor Leadership Program(IVLP)に参加したこともあり、こうした国際交流の経験は非常に有益だったと語った。そこで、総統就任後、中華民国政府は「万馬奔騰」「学海飛颺」などのプランを推進し、台湾の青年が海外留学・遊学できる機会を提供し、2009年から2014年までの間に台湾の若者6万人が海外で交流してきたと述べた。
今回の研修プログラムの最終日には、外交部外交・国際事務学院で修了式が行われた。参加者からは台湾での見聞をもとに、国際経済における我が国の地位、民主主義の成果、食文化と環境保全、女性の権利といった多様なテーマでの報告がなされた。
台湾での研修期間中に風邪をひいて病院で診てもらったメンバーは、我が国では健康保険制度が整っており、受診が非常に便利で医療費も安いことなどは非常に羨ましく、アメリカとカナダも台湾の政策を参考にしてほしいと述べた。もう一人のメンバーは、我が国が男女平等を推進し、「女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約(CEDAW)」の実施に努力していることは高く評価できると述べた。
参加者の一人一人が今回の研修の成果を語った。そして彼らがその成果をシェアしてくれることは、我が国の外交推進において貴重な力となるのである。
外交部が主催する「2015国際青年エリートリーダー研修」にはアメリカとカナダから著名大学や大学院に在籍する優秀な学生30人が参加した。彼らは将来、国際社会において台湾を支持する重要な力になることだろう。
陽明山の小油坑を訪れたメンバーは、台湾の多様な地質や地形に興味を持った。
7月3日には台湾訪問の成果発表会と歓送会が開かれ、参加者は台湾での見聞を語った。
3週間にわたる研修の間、外交部はさまざまな活動を企画した。坪林では茶摘みに参加し、文山包種茶を味わった。
システマティックなカリキュラムと訪問活動を通して、研修参加者は我が国の文化を体験した。(故宮博物院での研修参加者)