台湾初のマスクマップアプリ登場
1月末から2月初旬にかけて、台湾では多くの人がマスクを求めて薬局を巡っていた。
米国留学から帰国し、故郷の台南に「好想工作室」を設立した呉展瑋は、コワーキングスペースを設けるだけでなく、台湾南部の情報プラットフォームを確立したいと考えていた。また、プログラミングを通して、台南で問題を解決できるエンジニアを育成したいと思っていた。
彼は一晩徹夜して台湾初のマスクマップアプリを完成させた。するとすぐに大勢のユーザーがアクセスし、家族や友人のためにと作ったものが多くの人に活用されることとなった。しかし、このアプリは2日しか使われなかった。2月3日、行政院がマスク購入の実名制(国民1人当たり、一定期間に一定枚数を保険証を提示して購入する制度)にすると発表したのである。だが、彼のマスクマップはすでに広く知られていた。
すると、オードリー‧タン(唐鳳)デジタル担当政務委員(大臣に相当)のがg0vプラットフォームを通して呉展瑋と接触し、オープンデータを使って政府と民間が一緒にマスクマップアプリを制作することとなったのである。
すると台湾中のプログラマーが次々と参加した。これは一つの奇跡だった。2月5日にフォーマットが公表され、2月6日にアップされると、民間で130ものアプリが開発されたのである。「これは単一テーマに関する台湾最大のハッカソンで、まさに百花斉放という感じでした」と呉展瑋は振り返り、「官民協力の重要なマイルストーンとなりました」と言う。政府がデータをオープンにし、そこへ民間の多様なリソースと創意が加わってソリューションが生まれたのである。
短時間で、これだけのツールが生み出されたということは、大量の関連情報が流通したことを意味し、人々の間にコロナ対策の正しい観念が蓄積していった。「多くの国では、ロックダウンというトップダウンの管理方式を採りましたが、台湾はボトムアップで、一人ひとりが自発的、意識的に行動するようになりました。これこそ、漏れのない感染症対策と言えるでしょう」