夏のワークショップ
強い日差しが照り付ける夏の日は、バナナシルクの処理にふさわしい。
早朝、二人はバナナシルク‧ワークショップの生徒たちを率いて山に入ると、まだ実をつけていないバナナの株を選ぶ。そしてカバラン族に伝わる簡単な儀式を行ない、大地の恵みに感謝してからバナナを株ごと持ち返る。
バナナシルクの織物は花蓮新社のカバラン族に特有の伝統工芸だ。バナナの葉鞘を取り、不純物を削ぎ落して日に干し、長い糸状にして布や衣類を織る。陳淑燕が、葉鞘の膜を取って長い筋状にする手本を示してくれる。ナイフを器用に使って葉鞘の澱粉質を削ぎ落していくと、半透明になり、繊維が見えてくる。こうして薄くなった繊維を強い日差しにさらして乾燥させ、細い糸へとほぐしていく。最後に一本一本結び合わせて糸玉状に巻いてから織りに取り掛かる。
授業の中で、杜瓦克は集落のおばあさんが所有する、百年物の織機を見せてくれ、人間国宝級のおばあさんたちを招いてバナナシルクの織り方を披露してもらう。100歳になる朱阿菊さんは、視力は衰えているが、道具を手に持つと、ごく自然に優雅に作業を始める。80代の潘天利さんは、参加者の手をとって糸のかけ方を教え、間違えていれば的確に指摘する。
バナナシルクの織物は沖縄やフィリピンにもあるが、陳淑燕はそれらとの違いをこう話す。「カバラン族は食用バナナの繊維を生のまま削いで取るのですが、他の国では多くの場合、鞘を煮て繊維を取っています。新社のバナナシルクは独特なのです」と。
光織屋ではバナナシルク教室のほかに、竹‧籐編みや月桃編み、草木染め、樹皮布などのワークショップも開いている。陳淑燕が参加者を率いて原料を採集するところから始め、一緒に汗をかきながら人と環境との関係を考えさせる。
バナナ園でバナナの葉鞘をとってきて皮を剥ぎ、不純物を削ぎ落して天日に干す。それから繊維を糸に分けて継ぎ合わせ、糸玉にまとめる。実際に参加してみてはじめて人と環境との共存の道理がわかる。