台北のスローライフ
春節の頃、私たちは台北の河岸の魅力に触れようと、文化大学景観学科の郭瓊瑩教授とともに大稲埕を訪れた。「台北は三方を山に囲まれ、一方は川に面しているので、山にも水にも親しめます。堤防をくぐれば、私たちの暮らしが河川と非常に近しいことがわかります」と郭瓊瑩さんは言う。大稲埕埠頭に出れば、広大な河川が一望でき、無意識のうちに歩調も緩やかになる。
堤防の向こうの車の流れと隔絶され、ここではゆったりと散歩ができ、自転車に乗ったり、日向ぼっこをすることもできる。ここにある大稲埕コンテナマーケットは、かつての貿易拠点の歴史と呼応し、コンテナをコンセプトに小さなレストランが並んでいる。1階で注文して2階のテラスで席につき、美しい景色を眺めながら食事ができる。晴れていれば、前方に広大な淡水河の水面が広がり、横には観音山や大屯山、七星山、小観音山の稜線がきれいに見える。
夕暮れ時になれば夕日が美しく、夜になれば埠頭広場にライトが灯り、別の味わいがある。
郭瓊瑩さんは、都市部の開放的な空間が広いほど、生活にも息苦しさを感じることは少なくなると言う。そうした中で河川の水面は開放的な空間なのである。香港でもヴィクトリア港があることで、人混みのストレスが緩和されている。「河川は貴重な公共資産なのですから、もっと親しむべきです」と語る。
「藍色公路」ブルーラインの遊覧船に乗ると、また一味違う台北に触れられると郭瓊瑩さんは言う。例えば、大稲埕埠頭から船に乗って山や水鳥や魚を見ながら進み、水面から都市を振り返ると、台北の摩天楼が見える。さらに深い旅を味わいたいなら、特別なツアーに参加することもできる。例えば、まず大稲埕の史跡を巡る散策をしてから船に乗り、淡水埠頭で下船して淡水の古い町並みを歩くというコースもある。
郭瓊瑩さんは、水辺のレジャーと言っても、必ずしも水遊びをするとは限らず、視覚的に水に近づくだけでも良いと言う。台北には、泳げないがボートを漕いだり、サーフィンをしたりできる場所もある。例えば社子島の嘻嘻哈哈国際滑水学校では、ウェイクサーフィンなどのサービスを提供している。水に親しみつつ台北のスローライフを体験するというのも、もう一つの台北の楽しみ方と言えるだろう。

「藍色公路」の遊覧船に乗れば、山や水鳥、魚などを眺めながら、ひとあじ違う台北の美に触れることができる。