樹上の生物のような樹護士
「以前は自然が好きといっても、木に登ることはありませんでした」と言うが、木に登らなければ樹木への認識には限りがある。木を理解する樹木医といえども、登らなければ直接目にする機会がない。
「木登りを始めた時は、本の知識が本当だったと知り、驚くばかりでした」と語る。
一年中同じ場所に立ち続ける大樹は、何も語らないが大きく枝を広げ生物を迎える。一本の木は一つの生態系と、翁恒斌はかつて大樹の上から見た絶景を思い起す。生き物の中には何世代も地に下りず、一生を樹上に過ごすものもある。
樹木は人の訪問を歓迎する。ISAの規定では幹の直径が3インチ以上の健康な木であれば、木登りできる。時には、樹上にツリーボートを吊るして、樹上の生物のようにここで夜を過ごす。
落ちはしないかとしり込みしたくなるが、「まずは自分のオーラを信じることです」と、翁恒斌は思わせぶりである。
多くの樹護士の心中には、一度は登ってみたい樹木のリストがあるが、翁恒斌はきっぱりと、台湾の木が一番と言う。
台湾は本当に宝の島だと、熱く語る。「台湾は面積こそ小さいのですが、世界にあるヒノキ6種のうち、台湾には2種あります。棲蘭神木パークの神木群など、3000年以上の神木も数多く、台湾の神木10位までを日本にもっていけば、すべて3位以内に入ります」と語り続ける。
彼ら樹護士たちは、大樹の肩に登ってより高く遠くまで見渡しながら、足元の土地を大切にする。これも大樹がもたらしてくれるもう一つの無形の恵みなのかもしれない。
樹冠層の研究に協力し、樹齢千年の神木に登るアーボリスト。(クライミングツリー提供)
スポーツとして木登りに励む学生。あきらめなければ自分の力で上へ上へと登っていける。
生徒たちに木登りを指導する許荏涵。台湾初の女性アーボリストだ。
学校内のごく普通の樹木が、木登りをする生徒たちの笑い声に包まれる。