最も高い木を探して
一本の木の高さはどうやって測るのだろう。例えばタイワンスギは東アジアで最も高い樹種で、ルカイ族はこれを「月にぶつかる木」と呼ぶ。行政院農業委員会林業試験所の研究助手である徐嘉君は木の高さを「木登り」して測量する。
徐嘉君は樹冠層の着生植物から森林生態学を研究しており、木登りはそのために必須の技能である。最初は先輩たちと同様に木登り器を幹に打ち込んで登っていたが、その後はロッククライミングの方法に変えた。
着生植物を研究するほか、徐嘉君は台湾の巨木も探している。いつも木に登っているため、木はどこまで伸びるのか、環境がどのように影響するのか知りたかったからである。
以前は高い木を探すには林業者に訊ねるか、樹高測定器や三角関数を用いていたが、最近はレーザー・リモート・センシング技術(LiDAR)で精密なデータが得られるようになった。上空からレーザーを照射し、帰ってきた信号で地表との距離が分かるのである。徐嘉君は成功大学測量・空間情報学科の王驥魁教授のチームと協力し、2009年の台風8号の被害を調査するために内政部が始めたLiDARのデータを研究に活かし始めた。これを用いて樹冠の高さと地表の地形を描き出し、巨木のあるエリアを選んでから実地調査に出かけるのである。こうして2019年、今まで記録された中で最も高い72.9メートルというタイワンスギを大雪山の南坑渓上流に発見した。
また、徐嘉君は与我樹チームとともに、南投県信義郷の神木村のクスノキの巨木「樟樹公」に登り、測量の結果、高さが46.4メートルあることがわかった。世界で知られているクスノキの中で最も高いものである。
最も高い木を発見してどうするのだろう。「実は科学研究の多くは、最初は研究者の好奇心から始まったのです」と徐嘉君は言う。その好奇心が大きな反響を得ている。彼女は2017年に「タイワンスギ等身大写真撮影計画」を行ない、オーストラリアからThe Tree Projectの撮影隊を招き、棲蘭山のタイワンスギ三姉妹の等身大写真を撮影した。林道170号線沿いに立つタイワンスギ三姉妹は少なく見積もっても樹齢800年で、そのうち一本の高さは23階建てに匹敵する69.5メートルだ。撮影隊はカメラの軌道を垂直に立てて下から上へと撮っていき、それらをつなぎ合わせると三姉妹の全貌が明らかになった。「台湾にこんなに美しい木があったのかと多くの人が知り、人々は誇りに思い、アイデンティティも高まりました」こうして多くの人が台湾の山林の美に触れ、森林保全の意識が高まってきたのである。
デンドロビウム Dendrobium sanseiense.(徐嘉君提供)