便利さは変わらない
成功大学に近い台南の正興エリアには、ドリンクスタンドが並んでいる。それらの店の前にあるカップの形の看板のQRコードを読み取り、LINEで「好盒器」の友だちになると、容器を借りることができる。ドリンクを注文する時に、その画面を提示すれば、店は好盒器のカップにドリンクを入れてくれる。飲み終わったら、消費者はカップを好盒器と契約している店に返却するだけだ。好盒器は店から使用済みカップを回収し、洗浄消毒の工場に送る。
これまでゴミ箱を探して捨てていたのを、契約店を探して返却するだけなので、消費者はマイボトルを持参したり、洗ったりする必要はなく、暮らしを大きく変えることなくゴミを減らすことができる。シンプルなサービスだが、好盒器は2年余りをかけてテストを繰り返してきた。
創設者の宋宜臻と李翊禾は成功大学工業デザイン学科の同級生で、二人は2015年に「人嶼物股份有限公司」を創設した。「まだ使える資源には次の生命を与えるべきで、生産してすぐに捨てることはやめなければなりません」と宋宜臻は会社設立の理念を力強く語る。李翊禾は工業デザイナーとして、製品はきちんと製造して長く使ってもらう使命があると考える。だが使い捨ての容器は、もともと捨てることを目的に作られている。このように、自分たちの理念と相対する製品を二人はチャレンジの対象に選んだのである。
二人は2017年から正興エリアの3店舗と協力して実験的に「正興カッププロジェクト」をスタートさせ、消費者の信頼を得るために、最初は透明なカップを採用した。「最初は単純に、透明で清潔なカップであれば、消費者は使ってくれるだろうと思っていました」と宋宜臻は言う。だが実際に話を聞いてみると、店内の空間や店員の訓練にも課題があることがわかった。マイカップ、マイボトルの使用が奨励されて十年になるが、あまり効果は上がっていない。「それは何か人間性に反するところがあるからで、それを排除していく必要があると思います」と言う。店側からすると、マイカップやマイボトルは規格がばらばらで開閉方式や容量も異なるので扱いにくい。消費者側からすれば、マイカップを忘れたり、洗うのが面倒といった問題がある。
そこで好盒器はさまざまな調査を行なって、サービスのプロセスを改善していった。デポジット制やアプリメンバー制なども試みたが、最終的にLINEを使ったレンタル方式に決め、一年をかけて専用のカップをデザインした。熱や運搬、洗浄、破損品のリサイクルに強い素材ということで、最終的にポリプロピレンを使用し、重ねられるデザインにした。好盒器では、洗浄消毒から戻ってきた一つひとつカップの品質を確認し、バーコードを読み取った後、10個1組にして独自に設計した防水袋に入れる。店舗はその袋を使ってカップの底を上にして取り出す。好盒器のカップは市販のドリンクホルダーも使えるし、マイストローもぴったりくる。さらに利用者は返却のたびにポイントが得られ、ポイントがたまればドリンクが割引になる。
「電電租」プラットホームに自宅の家電をアップすれば、資源の循環利用が可能になり、臨時収入も得られる。