シイラを食べよう
「シイラには捕り過ぎという問題はありません」と話すのは長年にわたってシイラの資源調査を行なってきた王勝平だ。むしろ最大の問題は、台湾ではシイラの知名度が低いことだと言う。
その話によると、シイラの魚群は回復力が強いが、これはその生物特性と関わるという。シイラは繁殖力が強く、成長も速い。クロマグロなどは7~8年をかけて成魚になるが、シイラは1年で成魚となり、4歳で死んでしまうのである。
時には時速60~70キロで回遊するシイラは、常に「運動」しているためカロリーが低く、栄養価が高く、歯ごたえがある。だが、マグロのような回遊魚と比べると、シイラは市中の市場で手に入りにくく、また8割はアメリカに輸出されているため、台湾では知名度が低いのである。
冷凍‧冷蔵物流技術が発達し、またペルーやエクアドルの漁場が台頭したことで、輸出先がアメリカだけという状態のリスクを回避しようと、漁業署は積極的にシイラの「国内消費」を推進している。例えば、台東県新港区漁協に水産品加工場の建設を指導し、ISO22000やHACCPの認証を取得できた。国際標準にかなった加工プロセスで鮮度を保ちつつシイラを切り身にしている。今は花蓮駅の鉄路餐庁と協力し、限定版のシイラ駅弁を販売している。
総幹事の陳俊銘によると、新港区漁協は「黒潮旗跡」というブランドで、オンラインと三仙台の店舗でシイラ料理を打ち出している。シイラの砂鍋魚頭(挙げた魚頭を入れた鍋)、鬼頭刀干貝醤(シイラと貝柱の醤)、魚丸(つみれ)などの料理や、おぼろなどの土産物があり、多くの人にシイラを食べてもらいたいと考えている。成功漁港や基隆の廟口などでも、シイラ入りの汁ビーフンやとろみスープが食べられる。
レストラン旗遇海味を経営する林昱濱は、シイラは全身を食べることができると言う。頭は味噌汁に、かまは焼き物に、切り身は蒸し物や焼き物、揚げ物などに出来る。秋に捕れたシイラは脂がのっており、多くの日本人が産地を訪れてシイラの刺身を注文するという。日本で食べるよりずっと安いそうだ。
廖鴻基の〈鬼頭刀(シイラ)〉には「海中で忽然と姿を消し、また忽然と表れる。誇り高く鋭利でもある」とあり、「鬼」頭刀に敬意を表して遠ざけているが、それよりも、この誇らしく美しい魚を食べてみようではないか。

水揚げされたばかりのシイラは、すぐに新港区魚市場で競りにかけられ、冷凍ではない「鮮魚」として扱われる。

台東県新港魚市場の競り人は他の魚市場と異なり、最初にはっきりと底値を示すため、見学する観光客も競りのプロセスがよくわかる。

シイラは台湾の重要な海洋資源の一つで、主に台東県の新港で水揚げされる。

シイラはオスとメスの違いがはっきりしている。メスの頭は流線形で、オスは頭が四角く、「鬼頭」のように見える。