木材に劣らない竹の積層材
何とかして食べて行かなければならず、創業時は崇高な理念などなく、手近にある材料で何かを作るだけだった。しかし、竹材は市場の主流である木材ほど万能ではなかった。そこで彼は「竹で木材と同じ等級の工芸品や家具を作ろう」と思うようになった。
そこで大禾竹芸工坊は、従来の少量生産の手工芸とは違う道を歩み始めた。竹に木材と同様の強度や厚みを持たせるため、積層材の開発に取り組んだのである。だが、当初は設備も不十分で接着剤の質も悪く、順調にはいかなかった。「接着して3日もすると反り返ってしまうのです」と言う。だが現在では、切り出してきた竹を積層材にするまで安定した工程を確立している。
竹の繊維はもともと強く、これを縦横に貼り合わせて作った板は「ビャクダンより軽く、ヒノキよりしっかりしていて、強度は木材より高いのです」と劉文煌さんは語る。
工場にはCNC加工機があり、積層材を工業品レベルに精密に作り上げることができる。これによって大禾竹芸工坊はデパートやホテルなどに進出する数少ない竹芸ブランドとなった。
2000年、台湾大学社会科学部図書館を建築家の伊東豊雄氏が設計することになり、内部の書架のデザインを家具デザイナーの藤江和子氏が担った。その書架はカーブを描いており、1.8センチの厚みが求められたが、この困難な製作は、実績のある大禾竹芸工坊に任された。
そこで大禾竹芸工坊は、122万本の原竹を922万枚の竹片にし、3688枚の板に加工した。カーブする書架はほぞとほぞ穴でつないであり、曲線を精確に計算し校正しなければならなかった。「1万もの方程式を書きましたよ」と劉文煌さんは言う。完成した書架は美しく、台湾の竹工芸のレベルの一段高めるものとなった。