枝豆産業を支える「三本の矢」
「ミスター枝豆」と呼ばれる高雄農業改良場の研究員‧周国隆さんによると、台湾の枝豆輸出は1971年に始まり、今年(2025年)で55年目を迎えるという。輸出先の割合は、日本が約72%、アメリカが約19%、その他24カ国が約1割を占めている。
枝豆は早くから国際市場に登場していたが、輸出量がピーク時には年間4万トンを超えたものの、1994年に中国の低価格攻勢を受け、年間輸出量は一時2万トンを切るまでに落ち込んだ。
そこで政府は、農家と加工工場を結び付け、台湾糖業公司の農地を統合し、「復讐の矢」と称した反撃に出た。枝豆専用地区を設置し、大規模な機械化生産、収穫から冷凍まで4時間の鮮度保持工程、品種改良、これらの「三本の矢」を打ち出し、2008年には日本市場での首位を奪還した。
この三本の矢は、今ではさらに磨きをかけられ、今や「三矢の力は金属をも断つ」勢いだ。
高雄‧屏東に広がる輸出用の枝豆畑では、種まきから収穫まで機械化が可能だ。人手では1時間に収穫できるのは25キロだが、機械を使えば1時間に8トンを収穫できる。周さんによれば、機械化の効率は年々向上しており、10年前は15ヘクタールあたり1人必要だった作業員も、今では1人で20ヘクタールを担当できるという。
「今では産地から冷凍まで最速3時間でいける」と語るのは、百賢農産の代表‧侯兆百さんだ。最新の加工工場は処理能力が大幅に向上しており、以前は1時間に3トンしか冷凍できなかったのが、新型機械では8~10トンの処理が可能で、それにより全体の時間を短縮している。
高雄農業改良場では、日本市場向けに特化した品種も開発してきた。莢が大きく甘みが強い「高雄9号‧緑晶」に続き、2024年には莢がより濃い緑色で甘みも保持、収量が多く、病気にも強い「高雄13号‧緑水晶」を発表。すでに台湾全土の枝豆畑の2割で栽培されており、台湾枝豆の競争力をさらに強化している。