閩南芸術の活きた化石
しかし別の面から見ると、発展が停滞したことによって、鹿港では思いがけず文化遺産が保存されることとなった。
その昔、移住者たちの暮らしが豊かになると、彼らは故郷の生活様式を再現したいと考え、福建省泉州から優れた腕を持つ職人を何人も招いた。そして少なからぬ職人がこの地に根を下ろし、弟子をとって百年以上にわたって技能を伝承し、弟子たちも独立して技を広めていった。
「それに鹿港の人々は保守的で、昔からの家業や伝統を守りたいと考えてきました」と林明徳さんは言う。彼は彰化県と協力して鹿港の工芸の種類を調査したことがある。すると、木工、仏像制作、竹・籐、金属、紙細工、刺繍などの伝統工芸の数や種類において、いずれも鹿港が彰化県で最も多いことがわかった。しかも代表性と特殊性があるため、これらは「鹿港工芸」と呼ばれるに値するのである。
そしてこれらの工芸の多くは祭祀や風習、信仰などと関わっており、現在でも廟や民家、集落などで目にすることができる。
鹿港老街(古い町並み)と呼ばれる埔頭街、瑶林街、大有街の一帯を歩くと、かつて「前は通り、後ろは河」と言われ、船が行き交い、船着き場が並んでいた風景が目に浮かんでくる。曲がりくねった赤レンガ敷きの道を行けば、当時から残る半辺井(塀際の半円形の井戸)や甕牆(甕を並べた塀)、石敢当(魔除けの石。道の突き当りなどにある)、九曲巷(曲がりくねった路地)、隘門(路地にある小さな門)など、ユニークな景観が連なる。当時、厦郊(福建省泉州同安県からの移住者による商業組合)傘下にあった企業が建てた十宜楼や意楼などの船頭行(現在で言う海運会社や代理商)が今も残っている。そのうちの意楼は、彰化県福興郷(鹿港の隣町)出身で台中で俊美食品を興した李俊徳が20年前に買い取り、自ら資金を出して傷んだ建物を美しく修復したという話も伝わっている。
古い町並みから少し外れた中山路は、清の嘉慶年間(1796-1820年)に町が飽和状態に達したために新たに整備された道路で、当時は「鹿港大街」と呼ばれた。この道の長さは1キロほどで、雨や日差しを避けるために当時は木造で長い屋根が設けられており、「不見天街(空の見えない通り)」とも呼ばれた。日本統治時代に入ると、都市計画のためにこの屋根は取り壊されたが、これによって建物の美しい外観が見えるようになった。丁家の邸宅や老舗菓子店の「玉珍齋」などは、この通りにある。
鹿港の町の範囲は決して広いとは言えない。代表的なエリアで言うと、龍山寺から天后宮までは1キロほど、さらに最も早くから開発された北頭漁村まででも3キロほどに過ぎない。東西の幅は500メートルほどである。面積は台南ほど広くはないが、さまざまな観光スポットや商店は、この徒歩圏内に集中している。
この歴史ある小さな町を、林明徳さんは貴重な「閩南芸術の活きた化石」と呼び、台湾が世界に誇る文化エリアなのだと言う。天の時、地の利、人の和が相まって昔ながらの華やいだ景観を今日まで残している。そこを歩けば百年の時空が一瞬で見渡せるのである。
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今も祖先を祀る丁家の邸宅。祖先を敬い、家族の繁栄を大切にしていることがうかがえる。
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丁家大宅では、階段の段数や床のレンガの貼り方、窓の造形などからも、文化へのこだわりが見て取れる。
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丁家大宅では、階段の段数や床のレンガの貼り方、窓の造形などからも、文化へのこだわりが見て取れる。
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鹿港の工芸の多くは祭祀や信仰と関わっており、今も人々の暮らしに根付いているため「閩南芸術の活きた化石」とも呼ばれる。(写真は鹿港龍山寺の八卦藻井)
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広いとは言えない鹿港の町を歩くと、廟の反り返った棟や、曲がりくねった九曲巷、通り沿いの隘門(路地にある小さな門)、甕牆(甕を並べた塀)、半辺井(半円形の井戸)など、伝統的な閩南集落の特色が次々と目に入る。
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広いとは言えない鹿港の町を歩くと、廟の反り返った棟や、曲がりくねった九曲巷、通り沿いの隘門(路地にある小さな門)、甕牆(甕を並べた塀)、半辺井(半円形の井戸)など、伝統的な閩南集落の特色が次々と目に入る。
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広いとは言えない鹿港の町を歩くと、廟の反り返った棟や、曲がりくねった九曲巷、通り沿いの隘門(路地にある小さな門)、甕牆(甕を並べた塀)、半辺井(半円形の井戸)など、伝統的な閩南集落の特色が次々と目に入る。
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広いとは言えない鹿港の町を歩くと、廟の反り返った棟や、曲がりくねった九曲巷、通り沿いの隘門(路地にある小さな門)、甕牆(甕を並べた塀)、半辺井(半円形の井戸)など、伝統的な閩南集落の特色が次々と目に入る。
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広いとは言えない鹿港の町を歩くと、廟の反り返った棟や、曲がりくねった九曲巷、通り沿いの隘門(路地にある小さな門)、甕牆(甕を並べた塀)、半辺井(半円形の井戸)など、伝統的な閩南集落の特色が次々と目に入る。