歴史を記録する写真

『光華』は写真を通して歴史を記録してきた。台北科技大学の楊重光‧副学長と外交部（外務省）国際伝播司の陳銘政‧司長は祝辞において、紅楼で写真展が開催されることの意義と、『光華』と台湾の外交との深いつながりを語った。会場には外交部の馬鍾麟‧総領事、台北科技大学の張仁家‧学務長と呉建文‧図書資料長も列席し、写真展は円満に開幕した。

続いて『光華』編集長の陳亮君の案内で、45年にわたる写真を振り返った。1977年8月号の表紙は、当時の厳家淦‧総統がサウジアラビアのハーリド国王に招かれてジッダに到着した時の貴重な写真だ。紅楼の2階に向う階段には、金馬賞50周年、戒厳令解除、台湾がリトルリーグ、シニアリーグ、ビッグリーグで三冠王に輝いた時の記事、それに日本、シンガポール、カンボジア、ベトナムなどで取材した記事が並ぶ。『光華』の視野の広さが際立つ展示である。

続く海外取材講座の前に、馬鍾麟‧総領事から、『光華』が台湾のソフトパワーを対外的に宣伝する重要な媒介の一つであり、視野を広げ、外国語を学ぶにも良い教材になるとお話があった。講座では、『光華』編集長の陳亮君が「取材の視点を変える」というテーマで、李宗儒‧元大使と『看見印尼』の作者である李東明氏、写真家の沈昭良氏に、海外での実務経験や異なる文化環境における取材の体験を語っていただき、客席を埋めた1500人の学生たちは、国際社会における台湾の多様な役割や成果に触れることができた。以下に、その内容をまとめる。

沈昭良：内在化と爆発力

まず沈昭良のシリーズ作品『STAGE』の鮮やかな色彩が人々の視線を集めた。沈昭良はレンズを通してさまざまなテーマを的確に表現する。これと対照的なモノクロの作品『台湾総芸圏』は、時代の変化をそのままとらえていて、田舎の廟の祭りの混然とした雰囲気と民間の生命力が伝わってくる。『STAGE』は、神々にダンスや音楽を奉納するために作られた、機械仕掛けの舞台を載せた車で、田んぼの中で煌びやかに光を放つ。

『築地魚市場』と対比を成すのは台湾の『南方澳』だ。場所は違うが、同じように巨大な魚が次々と水揚げされる雰囲気が伝わってくる。早朝、一列に並んだマグロの間を長い包丁を持った人が行き交う。競りの声が響く中、仲買人が眼光も鋭く品定めする迫力が感じられ、魚のにおいが漂ってくるかのようである。

もう一つのシリーズ作品『玉蘭花』は、台湾特有の細分化された産業を写し出す。深夜に、多くの人が頭にライトをつけて忙しく玉蘭花（オガタマノキの仲間、強い香りを楽しむ）を摘んでいく。続いてその花を売る人は、車の行き交う道路や廟の門前、地下鉄の入り口などに立ち、通行人に販売する。日々屋外で風や日にさらされたトレイにハスの葉を敷き、濡れタオルで花を覆う。台湾の田舎の空気を感じさせる光景だ。

李東明：異郷で故郷に出会う

「ステレオタイプのイメージを持ってはいけません」と話す李東明氏は、公務員としての最後の赴任先だったインドネシアにすべてを捧げた。原住民族の血を4分の1引く氏は、インドネシアでの休暇を利用して計画的に先住民族の暮らす島を巡り歩いた。「この写真は、台湾の原住民族にそっくりでしょう」と示す写真からは、双方の関連性が見て取れる。駐インドネシア台北経済貿易代表処新聞組の組長として、ジャーナリズムの眼と、他者を尊重する心をもって友好の扉を開いていった。「コミュニケーションがなければ、信頼関係は築けません」と言う。正式な国交のない国との間では、誤った情報による誤解が生じてはならないのである。

『看見印尼』は李東明氏が退職後に著した回顧録だ。現地の文化を尊重し、訪れたスラバヤやバンドン、メダンなどの都市や、パダン、ジョグジャカルタ、バンテンなどの小さな町、また華人や華人文化が中心のシンカワン、ジャワ島最高峰のスメル山などについて書き記した。またインドネシア伝統の帆船に乗って島々をめぐり、オーストロネシア系諸族が暮らす様子も記録した。先住民族の伝統衣装や、インドネシア伝統のバティック染め複雑な工程なども記されている。初めて訪れた国の文化を広い心で受け入れ、台湾との違いを見出しつつ、異国の素晴らしさを台湾人に紹介してくれる。

李宗儒：誠意をもって友好関係を築く

「誠実さこそ、友好関係構築への最良の道です」と語るのは、かつて外交官として世界各地に滞在した経験のある李宗儒氏だ。その間には政治的な変化や国際環境の変化もあり、肌でそれを感じてきた。「1971年は中華民国外交の分水嶺でした。この年、我々は国連を脱退し、外交関係は一瞬で大きく変わりました。1971年までは、韓国の大統領や日本の首相、フィリピンの大統領が来訪していました」と李宗儒は、貴重な歴史的写真を示し、その時々の経験を語った。

「外交関係がない中で、いかにして友好関係を築くかが外交官としての最大の課題です」と言う。ギリシアで開かれた見本市で、期せずして同国の大統領と出会った時に撮った写真がある。「こうした機会を実現するは、大きな信頼関係と協力が必要です」と言う。1991年、氏が初めて代表としてオーストラリアに駐在していた時には、幾度も閣僚レベルの相互訪問を実現し、両国の経済‧貿易関係は大きく進展した。

「オーストラリア国会の、台湾-オーストラリア友好議員団の人数は、私の在任中に90名まで増えました」と言う。当時、同国の対米友好議員団は102名、対英友好議員団は84人だった。そうした中で、対台湾友好議員団はわずか2年の間にゼロから90名まで増えたのだから、その間の努力がうかがえる。「困難があっても、あきらめないことです」と語る李宗儒氏は、台湾が全国民の力で世界からの尊重を勝ち取ってほしいと語った。

越し方を振り返り、未来を展望する

『光華』45周年記念写真展と海外取材講座は、会場に集まった学生たちの視野を広げ、これまでの多くの人の努力に思いを馳せることとなった。台湾の美は、その純粋さや東西の融合、古今の継承にある。『光華』は今後も台湾に根を張って世界に目を向け、台湾を知る人々には台湾をより好きになってもらい、台湾を知らない人には『光華』を通して台湾に触れてもらえるよう努力していきたいと考えている。