ここにあり、彼方の故郷を思う
台湾とタイの交流が進むにつれ、新北市の水かけ祭りは重要なイベントの一つとなり、陶雲昇も高く評価する。「台湾でこのようなイベントを目にできるのは意義深いことです」と言う通り、多くのタイ人は仕事の関係で故郷で新年を迎えることはできない。そこで台湾政府が手を差し伸べ、このようなイベントを実施してくれることに、陶雲昇は心から感謝しているという。
友好的で誠実な天性を有する台湾人が行なう水かけ祭りは、少し異なっている。タイ北部から台湾に嫁いできた李さんは、友人や親戚を水かけ祭りに招いた。「今日はタイのお正月の気分を味わいに来ました」と、イベントが始まる前に、李さんは友人とグルメ引換券を受け取りに行った。広場に並ぶ屋台には、各種のタイの軽食やスイーツが甘い香りを漂わせ、引換券で味見できる。
台湾に嫁いできた当時、台湾の味に慣れず故郷が恋しかった。だからこそ、水かけ祭りでは、故郷の美食を味わえることが最大の楽しみである。友人と共に、ここが一番おいしいなどと話しながら、「どの屋台も美味しくて」と話す。同じ思いを抱くタイ人は数多く、お昼近くなるとタイ料理の屋台は売り切れとなるが、ピザの屋台は無料なのにピザが高く積まれたままとなっている。タイ人にとっては、遠く離れたこの地でも、故郷の味が一番なのである。
タイから働きに来ている人々に楽しんでもらおうと、主催機関はタイの人気ロックバンドPee Saderdを招いた。