現代の私たちは、コンクリートやブロック、鉄筋などで構築された都会に暮らし、土との直接のつながりはほとんど持たない。しかし、陽光と空気と水は生物が生きていくための三大基本要素であり、数十億年にわたって大地を覆ってきた土壌は動植物が生存するための基礎である。
第68国連総会は、2015年を「国際土壌年」と定めた。人類の暮らしにおける土壌の重要性を広く知らしめ、土地資源の保全を通して、将来の食糧安全保障と温暖化に備えるためだ。
ユーラシアプレートと太平洋プレートの境目に位置する台湾は、面積は狭いものの、世界の12種の土壌のうち11種がある。火山活動が残したアンディソル(黒ボク土)、針葉樹林の下に発達するスポドソル、草原の植物が生み出すモリソル(草原黒色土壌)、そして河川の沖積が形成するアルフィソルなど、台湾はそのまま「世界土壌博物館」と呼ぶにふさわしい。
若い土壌が成熟土壌、老年土壌へと育っていくのも容易なことではない。一方の海に目を向けると、台湾の海岸線の長さは約1600キロメートルに過ぎないが、海流や水温、地形が変化に富み、サンゴ礁河口、マングローブ林、潟湖など豊富な生態系があることから、世界の魚類の10%が台湾海域に生息している。まさに生物多様性の王国と言えるだろう。これほど豊かな地形や気候条件、生物多様性から、生態学者は台湾を生物種のノアの方舟と呼んでいる。
21世紀は地球全体で生物多様性——遺伝子の多様性と種の多様性の保全に取り組むべき時代であり、台湾にはこの両者がそろっている。今月の『光華』カバーストーリーでは、総論、土壌、チョウ、ラン、海洋生物という五つの側面から、台湾のバイオダイバーシティを考えてみたい。
今月号ではこのほかに、台湾のサウンドスケープ、藺草工芸の復興、蘭嶼文化の継承と発展、台湾のNFT市場の現況、AR(拡張現実)とVR(仮想現実)の技術開発などをご紹介する。『光華』を通して台湾の最新の豊富な情報をご覧いただきたい。また、読者からの応募写真の特集は「海洋の文化と暮らし」をテーマとし、読者からお寄せいただいた写真の内容とカバーストーリーの内容が呼応する形となっている。台湾の豊かな土壌と生物種のエネルギーとともに、台湾の自身と誇りを世界に伝えていきたい。