すべては飛ばす一瞬に
紙飛行機も、飛行の原理は本物の飛行機とあまり違わず、重力と揚力の二つの力が影響し合って飛ぶ。紙飛行機自体の重さは機体を下へ向わせるが、翼が空気をとらえて機体を浮かせる。この二つの力に、紙飛行機を投げる時の動力が加わり、美しい姿で飛行するのである。
小中学校で講演する時にも、卓先生は原理を説明するが、実際に体験してこそ理解できると考えている。いつも紙飛行機を飛ばしていれば、どう落下したかで問題の所在がわかるのだと言う。
昨年、卓さんは紙飛行機に関する知識を『紙飛機工廠』という本にまとめた。書中の飛行機の外観や折り方などのイラストもすべて自分で描いたものだ。
5000種類もの紙飛行機を折ってきた卓志賢さんの名は欧州にも伝わり、この夏休みにはミュンヘンで開かれる紙飛行機国際展に参加する。だが卓さんの最大の目標は、紙飛行機博物館を建てることだ。
16年間、何が彼を支えてきたのだろう。「スランプを抜け出すと、創意が泉のように湧いてきます。そして、今日のアイディアが明日のアイディアを呼び、毎日新しい発見があるのです。この楽しさは言葉では説明できません」と言う。
再び飛んだピーター・パン
卓蘭小学校では国語の先生だ。山間の学校でも勉強のプレッシャーは大きく、卓先生は学級会やクラブ活動の時間に紙飛行機を折らせて生徒のストレス解消に役立てている。
「真ん中からきっちり半分に折って、向きを変えて両側を折り曲げ、糊で張り合わせます。最後に昇降板を切り、尾翼は1センチずつ切って前方45度に折ります。飛ばす時には主翼を平らにしてください」教室の中に卓先生の声が響き、生徒たちが手を動かす。そして飛行機を飛ばす時、多くの生徒は日頃は見せない笑顔をこぼす。
映画「フック」の中でピーター・パンはワーカホリックの大人になり、空の飛び方も忘れてしまう。しかしフック船長に誘拐された子供を助けるためにネバーランドに戻り、再び空を飛ぶ力を取り戻す。卓志賢さんも、永遠に童心を失わないピーター・パンであり続けたいと言う。飛ぶことが彼の喜びであり、その喜びを広めていきたいからだ。